何者かでありたいと願った何者にもなれなかった男
感想ぜひ待っています。
私はとても奇妙なものを見た。
男の人が私を助けてくれたこと。男の人が魔力を使って戦っていること。魔人の中でも上位に位置する、「万手殺のバルカン」と戦えていること。
子供の頃に読んだ古い小説の内容をふと思い出す。
ピンチのヒロインのもとに駆けつけて、助けてくれるヒーローのような。
不遇な環境で育った質素な少女のもとに現れる白馬の王子様のような。
遠い昔、まだ魔法少女も魔物も空想だった頃の世界のおとぎ話だったらしい。今となっては、女性が男性を守るのが常識で、男性が女性を守るということが空想のもの。
私は魔法少女として、守るばかりで、守られたことは1度もなかった。男の人に。
だからかな。あの人がとても眩しくて、戦っている背中が大きく、頼もしく見えた。
私にとっての、ヒーローだ。
今は回復に専念して、あの人のところに行って私も戦わなきゃいけないのに。何故だろう。なんだろう。
ドキドキする。動悸が早い。私のために戦ってくれているあの人から目が離せない。
不思議な感覚だ。
あの人が公園の方向へ投げ飛ばされた。助けに行かなきゃ。私を助けてくれたヒーローを。
痛みで鈍くなった足を引きずりながら、あの人のもとへ向かった。
―――――――――――――――――――――――――
俯いていた頭を上げると、助けた魔法少女が魔力壁を展開して俺を守っていた。
「ッ.........。くっ。」
彼女は、全身傷だらけで、脚は重症を負っており、戦えないはずだ。
それなのに、立って、戦い続けている。
畜生.........。彼女の方が、ずっと物語の主人公だ。
どうしてそんなに戦う勇気があるんだ?
どうしてそんなに覚悟を決めることができる?
益々自分の情けなさを感じて嫌になる。
「貴様、まだ動けたのか。こやつを置いて逃げれば生き残れたというのに。こやつは、もう、ただの置物でしかないぞ?」
魔人の言うことは正論だ。俺はもう、怖くて戦えない。共闘はできない。俺のことはいいから、早く逃げてくれ。もう、死んだ方がマシだ。
「絶ッ対に逃げない!
だって、この人は、私の命を救ってくれた!」
魔人の魔砲は尽きることなく、彼女の魔力壁を穿ち続けてる。魔力壁には、ヒビが入り始め、限界が近いことを知らせる。
「ウム。それがどうしたというのだ。
結局、そこの男は、我を殺せず、貴様の命もここで絶える。意味が無いではないか。」
「貴方には、わからないでしょうね。
人間の世界には、強い者が弱いものを守らなければならないという暗黙の了解があるの。
魔法少女がどれだけ死に物狂いで戦って、助けても、ほとんど感謝する人々はいないの。弱者にとって、守られることは当たり前だから。逆に、私たちが守れなかったとき、とっっても批判されるの。税金泥棒だとか、無能ってね。
欲しくもない異能を持って生まれて、国からは異能を持っているんだから、魔法少女として戦ってくださいっておかしいでしょ。
感謝もされず、失敗したら罵倒され、それでも魔法少女だからって我慢して仕方が無く戦わなきゃならない。」
魔人は彼女の独白に対して無表情だった。おそらく、何故弱者を守る必要があるか疑問に思っているのだろう。
そして、俺は、魔法少女の辛さを初めて知った。今まで魔法少女の能力を羨ましかったが、その能力が彼女たちを苦しめていることを知った。
「だから、助けてくれたことがとっっっっっても嬉しかった。
彼は、私の英雄だよ。 」
気付けば、涙が出ていた。
「英雄?そこの震えている男がか?」
「そうよ。まず、私を助けに来てくれたこと自体、相当勇気が必要よ。他の人にはできないことだわ。それに、私も初陣は、何もできなかった。」
彼女の魔力壁にさらに亀裂が入る。魔人の魔砲の出力は落ちない。
「ふむ。だが、英雄というには、相応しくない強さだ。」
「貴方たち魔人は、生まれながらの強者。人間は、何度も傷ついて、失敗して、たくさん経験を経て強くなるの。」
俺は、思い出した。俺の高校生のときの失敗体験。結局、可愛いクラスメートをビビって助けられず、見下してた男子が助けた。
その当日、通っていた魔纏式護身術の師範にそのことを打ち明けていた。
そのときの師範の言葉が彼女の言葉で想起された。
「お前は、失敗を恐れ過ぎている。
失敗は、悪いことじゃない。人は何度も失敗して強くなっていくんだ。逆に、失敗をそのままにすることが悪いことだ。
何度も挑戦し、何度も失敗し、その失敗を次に活かせ。」
そうだ。大事なことを忘れていた。
俺が最も恐れているのは、魔人でも、死ぬことでもない。失敗をすることだったんだ。
俺は今まで、失敗すること、つまり、挑戦することから逃げてきた。恥をかくのが怖かった。
さも当然かのような理屈を並べて自分を合理化したり、挑戦の機会があるにも関わらず見て見ぬふりをしたり。
俺は国のトップや魔法少女といった高尚で責任のある立場ではない。彼らより失敗が許されている立場だ。
だって、俺は何者でもないから。
「ン、ク、 .........もう限、界」
魔法少女の魔力壁が崩れかける。彼女は、せめて俺だけでも助けようと俺の目の前に立って肉壁となろうとした。
「魔纏式護身術 奥義 羅漢衝蹄」
魔力壁が崩れる瞬間、彼女の目の前に立ち、構えを取る。
両手を魔砲の前に構え、魔力を集中させた両手をそれぞれ反対方向に捻る。すると、両手から、魔力の渦の衝撃波が出る。とどのつまり、両手から、台風のようなものが出ているのである。魔人の全身全霊は、両手から出る2つの渦に掻き消され、さらに、渦は魔人を喰らおうとする。魔人は後退し避けるが、両脇の肉が抉られていた。
「凄まじい魔力量……。そして、体内の魔力を切り離して飛ばす技術……。魔法少女でも難しいと言われている技術だ。先程から疑問には思っていた!!何故、人間の男であるお前が魔力を扱える!?お前、何者だ?」
「俺か……?
俺は、何者かでありたいと願った、何者にもなれなかった男だ。」
俺は何者でもない。これから、成るのだ、何者かに。
「フン、教える気は無いようだな。まあいい。
貴様は、我が名を知る権利を得た。
我が名は、バルカン。人間からは、この無数の触手で何人もの魔法少女を屠ってきたことから、万手殺と恐れられている。」
「存分に死合おうぞ。」
そうして、俺と魔人による最終死合が始まった。
戦闘描写って難しいですね。
主人公の技、羅漢衝蹄は、ジョジョ2部のワムウの技、神砂嵐を想像してみてください。。。




