まずは1歩
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魔人の背中から生える無数の触手が魔法少女を襲う。その触手の先端は、鋭利な形状となっており、刺されたら命は確実に落としてしまうだろう。
魔法少女の右足は、既に触手によって裂傷していた。戦い続けるどころか、逃げることも避けることもできない状態である。魔法少女は、これから確実に来るであろう痛みに目を瞑ることしかできなかった。
私は死を覚悟していました。魔物が出たと通報があったため、現場に来てみると、魔物の上位互換生命体である魔人でした。この魔人は、強くて、頑丈で、怖かった。
でも、私は魔法少女として生まれてきたから、戦わなければいけない。ここで暮らす人たちを守らなければいけない。どれだけ痛くても、どれどけ怖くても、どれどけ泣いても.........。
ヒュオンッ
「グヌゥゥゥ!!!な、何が起こったぁ!!!」
突然、魔人が悲痛の叫びを挙げていた。訳が分からず、瞑っていた目を開けて確認すると、コンクリートの地面が私と魔人の間に境界線を作るような形でヒビが入っていた。そして、私に向けられた無数の触手の半分以上が切断されていた。他の魔法少女が助けに来たのかもしれないと周囲に魔力検知を行うが、反応があったのは、魔人だけ。
だが、魔人は、自身の触手を切断した者に気付いたらしい。
「我が触手を斬り裂いた主は、貴様だな。」
魔人は、私の方、いや、私の後ろに向けてそう語りかけていた。私も咄嗟に後ろを向く。
そこには、ひとりの男性が立っていた。
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これからどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする。
俺の頭の中は、それでいっぱいだった。魔法少女の絶命は回避できたものの、よく見れば魔法少女は重症を追っていて逃げることはできない。おぶって逃げれば魔人によって共倒れだ。
思考を巡らせている時間など無かった。魔人がこちらに向かってくる。
牽制と、魔人との距離の維持のため、先程触手を切り落とした魔力による斬撃を手刀で大振りすることで飛ばす。が、魔人は俺の攻撃態勢をよく観察していたらしく、攻撃範囲を予測されて避けられる。
魔人は、こちらに向かいながら、何本もの触手を束ねて変形し、1本の大槍のような触手を完成させる。その触手が俺の首を狙い、襲ってくる。自身の手の甲に濃密な程の魔力を込めて、防御する。衝撃は伝わるものの、怪我には至らない。
攻撃を凌ぎ、魔人に視線を戻すが、いない。「あ?」と声が漏れて、頭が真っ白になる。何処にいった?
「戦闘中に敵本体から視線を外すとは愚かな」
振り返った時には遅かった。魔人の右手は既に剣に変形しており、背中を斬られる。
血が出ている。本当に痛いときは声が出ないものなんだと理解する。幸い、身体全体に魔力を纏って最低限の防御はしていたため、重症につながることはなかった。
肉体は頑丈でも、精神は貧弱だと改めて自覚した。
先程触手を切り落とした際は、俺でも魔人と戦えるのだとタカをくくっていた。
魔人に食らった一撃、流れ出る血液、ジリジリと痛む傷跡。どれもが、俺を恐怖に陥れる。
魔法少女の方が今も痛いのは理解している。わかっていても、この場から逃げ出したい、逃げ出せと俺の肉体は叫んでいた。涙が出そうだ。足も手もビクビクとまた震え出す。怖い。
魔人は恐怖に駆られた俺に容赦なんてするわけがない。
先程とは比べ物にもならないほどのスピードでこちらに向かってくる。俺に思考する隙を与えないようにしているとしか思えない程に。
無数の触手で俺を突き刺そうとする。同じ手は喰らわない。俺は触手ではなく、魔人本体に魔力を込めた正拳突きをする。
これも魔人に読まれていた。俺が殴った魔人は何本か束ねられた触手へと変形し、俺を襲う無数の触手は魔人へと変わった。
「今度は視覚に頼りすぎだ。
魔力の操作精密性も武術も一流といえる、が。
戦場を経験したことがないのが目に見える。惜しいな。
総合力でいえば、三流以下だろう。」
魔人に腕を捕まれ、近くの公園まで投げ飛ばされる。遊具に後頭部と背中が勢い良くぶつかり、目眩と痛みが襲ってくる。
精神が限界だった。
全身が恐怖ですくんでいる。震えている。もう動けない。もう戦えない。魔法少女の救援が来るまで、全身に魔力を纏い続けて待つしかない。
「.........む。戦意喪失か。精神も三流以下だったようだな。
だが、サンドバッグには丁度良い。
我の全身全霊を受けてみるがいい。」
魔人は、右手の人差し指を俺に向ける。人差し指の先端に魔力が集まっていき、高密度になっていく。防御姿勢を取ろうにも、身体は恐怖で動かない。
本当に俺って情けないな。昔みたく後悔したくないからって助けたは良いものの、結局何もできなかった。いや、できないじゃないな、怖くて何もしなかったが合ってるな。ごめんな、魔法少女。期待させちまって。こんなことになるなら、見て見ぬフリをした方が良かったのかな.........。
魔人の指先の魔力は、今にも溢れ出んばかりの様子だ。そろそろ全身全霊が来る。
「魔砲」
魔人の人差し指から、超高密度の魔力のレーザーが発射される。
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攻撃が来ない。もしかして、俺はもう死んだのか?そう思い、ずっと俯き地面を眺めていた頭を上げると、助けた魔法少女が魔力による防御壁を展開していた。




