黒羊
ごめんなさい、またまた遅れて投稿してしまいました。
夜に紛れるには最適な黒い戦闘服を着用した4人の少女が現在人魔共和国の領土、元ニボン 南第三地区の廃ビルに集まっていた。
彼女らは手練のBランク魔法少女。魔法少女ファンの間では彼女らは「黒羊」と呼ばれている。個々の力はBランクの平均的ではあるが、彼女らの連携があれば、Aランク魔法少女2~3人相当の力があると言われている。
「皆、集まったわね。」
赤髪ロング、切れ長の目が特徴的な女性が呆れたかのように溜息を吐きながら述べる。
彼女は空気 凝。Bランク3位の魔法少女であり、チーム黒羊のまとめ役でもある。
「おっっそーい!!ワタシはこんな危険な場所に30分も前から着てたのに!最初ワタシひとりで待ってて怖かったんだからね!!」
ワインレッドの髪色、ツインテールの女性が顔を真っ赤にして怒りながら遅刻した2名に反省を促す。
彼女は轟 烈火。Bランク13位である。黒羊の中で最も慎重であり、準備を欠かさない性格の持ち主である。
「あぁ?仕方ねぇだろ!行く途中で魔物が暴れてたんだよ!オレとニトリでその対応をしてたんだぞ!」
銀髪で地面に着くほどの長いポニーテールをした男勝りな口調の女性は轟 烈火に反論をする。
彼女は鋼身 伴。Bランク12位であり、大雑把な性格の持ち主。轟 烈火とはライバル関係にあり、順位を越したり越されたりしている。
「………すまない。」
黒髪で紫のインナーカラーのロングヘアで、両耳にトゲトゲしいピアスを計8個付けており、黒マスク、三白眼の女性が落ち込みながら謝罪している。
彼女は刀変 二利。Bランク首位である。寡黙だが、表情(目)で感情が読み取りやすい。
「まぁまぁ、無事敵地に皆無傷で潜入できたから良しとしようじゃないか。ここはボクに免じて二利たちを許して欲しい、烈火。」
「本題に移らせてもらうよ。本日14:00に先遣隊の魔法少女を倒した際の凱旋パレードがこの地区で行われるらしい。そこに、矛盾 騎堅が現れる。可能であれば暗殺、最悪のケースは電撃戦となる。」
黒羊が作戦を行う場は、人魔共和国首都。騒ぎを起こせば、増援が無尽蔵に押し寄せてくるのは必定。短時間での決着が求められている。
「…いや、違う。最悪のケースは、共和国の戦力を引き出して全員で帰還することだ。アタシたちは、無理に戦わなくていい。アタシたちの後ろには、Aランク魔法少女が控えているからな。」
刀変 二利が述べるように、今回の目的は、可能であれば騎堅の暗殺、できなければ情報収集であった。
「それにしても、戦争中に凱旋パレードって呑気なことをするのね。相手はバカなのかしら?」
「バカはお前だぜ、烈火。こーゆー時こそ、必要なんだよ。戦ではムードやら気持ちってのは戦場にいる者たちの戦意に大きく影響すんだよ!」
鋼身 伴の述べることは間違ってはいない。戦争において群衆の士気は勝敗に影響する。共和国側は、先遣隊の制圧の件で、ニボンから独立できる可能性を民草に魅せるキッカケを創ったのだった。
「は、は、はぁぁぁぁぁ!?ワタシをバカって言ったわね!?そんくらいのことはワタシにだってわ、分かってたわよ!トモのばーか!!!」
「どうどう。両者絡まない。遅刻もあって、時間が無い。襲撃時の具体的な案を練ろう。」
時刻は、14:00。人魔共和国の旗が等間隔で並行するように数万本も置かれていた。並行に置かれているため、道が形成されており、内側で凱旋パレードが行われていた。
その外側には、人間と魔人関係無く混じりあって歓声をあげている。
内側には、楽器を弾く演奏隊、共和国の軍服を着た人間と魔人の軍人、ニボンの先遣隊の魔法少女を倒し、胸にはよく目立つギラギラとした勲章を付けた魔人や魔法少女たちが行進していた。
そして、行進列の最後尾には、騎堅と彼を挟むような形でトライトン、真尾がいた。彼らは、それぞれ馬のような魔物に乗って移動していた。トライトンと真尾は、外側にいる共和国国民に手を振っている。騎堅は、右手で国旗を掴み掲げ、国民に共和国の威光を示している。
刹那であった。騎堅の周囲の空気が蜃気楼のように歪んだ。それに騎堅は気付いたが、遅かった。歪んだ空気が轟音とともに爆発し、炎が燃え広がった。
観衆からは悲鳴があがる。突然、騎堅という共和国の象徴が爆撃されたのだから当然である。炎は未だに燃え盛っており、観衆や行進していた者たちはバラバラに行動しだす。ある者は逃げ出し、ある者は騎堅の安否を確認しに、ある者は襲撃者を探しに。
トライトンと真尾は、この状況がまずいと理解していた。それは、騎堅の死ではない。この混乱に乗じて戦力と士気を削がれることに対して危機を感じていた。
「喚くな」
爆煙を飛ばすほどの気迫で騎堅は述べる。先程爆撃を受けたにも関わらず、傷ひとつない。鬼気迫る表情、青筋を立てて彼は続けて述べる。
「我はこの程度では死なぬ。
皆、安心せよ。我は此処に居る。
トライトンよ、軍を動かし、此処に居る国民を避難、守護せよ。
真尾よ、我と共に襲撃者を迎え撃つ。」
「騎堅様は生きておられたぞ!」「無傷だ!さすが我が国の王!」「襲撃者に正義の鉄槌を!!」騎堅の発言に観衆の熱量は先程とは比べものにならないほど上がっている。まるで、この襲撃もパフォーマンスのひとつのように。
トライトンはすぐさま軍を整備し、国民の避難と保護に取り掛かる。
真尾は騎堅と背中を合わせる形で臨戦態勢に入る。両手にはオレンジと黒の配色の拳銃が構えられている。
「本当に人間の男か疑うよ。魔力を全身に鎧のように纏わせて爆撃を防ぐなんて。下位の魔法少女だってそんな器用なことできないのに。」
爆撃した主犯である黒羊の3人が騎堅らの前に姿を現す。
「騎堅サマ!コイツら、黒羊っていうBランク上位の魔法少女で構成された有名な部隊デス!」
真尾は迷いなく黒羊に向けて発砲しようと両手の拳銃を構える。が、騎堅は片腕を拳銃の銃口に合わせて発砲を阻止する。
「待て、真尾。奴らも真尾と同様の立場かもしれぬ。一度話し合う。」
真尾はそんなことできないと反論しようと言葉が出かけるが、騎堅のどこか優しげな表情を見て諭されたのか構えていた銃を下ろし、騎堅の一歩後ろに下がる。
「黒羊とやら、話し合おう。
配信でも宣ったように、我は害意の無い魔人と人間が共存できる国を創り、守りたいだけだ。この戦争も、これから他国が我が国に侵略しないようにするための見せつけだ。証拠に我々はニボンの魔法少女を殺してはいない。去ね。今なら貴様らを見逃そう。」
「あぁ、分かっているとも。人間に害意の無い魔人がいることはキミの配信で初めて知ったよ。だけどね、やり方が悪かった。」
「そうよ!武力で解決なんて脳筋なのよ!奪ったり、傷つけるってことは、奪われ、傷つけられる覚悟を持ってからやりなさい!」
「オレは政治とかよくわかんねぇ。アンタの考えがいかに凄くて勇気が必要なのかはわかる。だけども、アンタが攻めてるニボンには、オレの友だちやかーちゃん、オヤジ、弟が居るんだ。だから、アンタとは戦わなきゃならねぇ。」
黒羊は、騎堅らの考え方は尊重するが、敵対の意思は変えない、そう述べた。
「……全ての物事が話し合いで解決するのならば、争いなんて概念すら生まれてなかろうが。だから、力で平穏を手に入れるしかない。貴様ら魔法少女も武力によって平穏をもたらしている存在ではないか。」
「そうデス!あなたタチはただのヒーロー気取りデス!」
話し合いは決裂。両陣営から重苦しい雰囲気が流れ、全員が臨戦態勢を構える。
「真尾、後ろのヤツの相手を頼む。我は正面の3人を相手する。」
真尾は「え?後ろデスカ?」と後ろを振り向くと、そこには居合を構える二利が居た。真尾が二利に拳銃を構える前に二利が鞘から刀を抜く。
真尾は焦った表情で標準が定まらないまま見当違いな方向に発砲する。二利の刃が真尾の首元まで迫る。
しかし、二利の刃は寸前で止まる。念の為に警戒していた弾道が明らかに曲がり、二利の左こめかみに向かう。二利は咄嗟に避けるも、右肩に掠め、血が流れる。二利は被弾後、後方に距離を取る。
「…弾道を操る異能か。」
二利は真尾の異能が弾道を意のままに操れるものだと断定する。迂闊にも、二利は真尾と距離を離してしまった。真尾の異能は遠距離戦向きである。二利は戦況を不利にしてしまった。そして、二利の目の前には両手の拳銃を既に構えて臨戦態勢に入っている真尾がいた。
騎堅も黒羊の3人の方向へノシノシと音を立てるように歩く。構えも取らずに。
黒羊と騎堅、真尾による戦いが始まった。




