努力の他に、勇気も必要
北斗の拳リスペクトあります。
シンクには、洗われてない食器が積み重ねなれ、その横には飲み干された缶チューハイが何本も置かれていた。そこの部屋主は、テレビでニュースを見ながら、アルコール度数9%の缶チューハイを飲んでいた。
「また魔法少女が魔物の群れを倒したのか。しかも、今回の魔法少女は、俺の5つ歳下かよ。よくやるなぁ。」
俺の名前は、前田誠、24歳。福祉施設で働くただの社会人だ。
俺には、夢があった。それは、ヒーロー。子供の頃に、自分が生まれるずっと前の漫画、「南斗の剣」が影響している。南斗の剣の主人公で一子相伝の剣術の伝承者、ケンタロウが無秩序と化した世界で悪に鉄槌を下すというストーリー。俺はこの漫画の主人公、そしてその他のネームドキャラの生き様に惚れた。現代では、男は、微量の魔力しか持たず、女性から守られなれば生きていけないことは知っていた。だけど、俺もこの漫画のキャラのように、自分の意思で戦い、惚れた女性を守っていきたい。
だから、小学校中学年のとき、近所にあった魔纏式護身術というものを扱う道場に通った。修練の日々は、厳しいものであったが、細かった自身の肉体が太く、がっちりとしていき、努力の結果が目に見えて楽しかった。
しかし、高校生のとき、俺の心が折れた。魔物が俺の学校に侵入し、クラスのマドンナ的存在の美少女に今にも襲いかかろうとしていた。あのときの魔物の殺気と圧に俺は動けなかった。両足が生まれたての小鹿の如くビクビクと小刻みに震えていたのを今でも覚えている。結局、俺が内心見下していた男子クラスメートが少女を身を呈して庇い、その直後駆けつけた魔法少女により魔物は鎮圧されていた。
そう、俺には勇気が無かった。大きい夢や信条はあれど、それよりも死ぬのがとても怖かった。
悟ったのだ、俺は一般人だ。何者にもなれないと。
「おっと、明日のシフトは、早番か。早く寝ねぇと、仕事中に眠くなっちまうな。でも寝れねぇし、コンビニで追加で酒買って飲んで、無理くり寝ちまうか。」
外を出ると、工事の音が聞こえる。ふと、工事現場を見ると、女性たちが力仕事をしている。
魔物が初めて出現した後、それに対抗するかのように魔力や異能を扱う者が現れた。しかし、魔物に対抗できる程の魔力量を有し、異能を発現する可能性を持つ者は女性のみ。男性にも魔力は存在するが、極少量であり、魔力総量の伸び幅も女性と比較すれば、月とすっぽん。そのため、世間一般的に、男性には、魔力が無いと言われている。
充分な魔力があれば、肉体を大幅に強化することができる。そのため、力仕事は女性がするものという常識のようなものがあった。
「女性は、魔力総量、つまり最大MPの伸び幅が男性と比べ大きいと聞くが…。クッッッソ羨ましいなぁ。」
俺は、この世の不満を独白しながら、帰路に着いた。
いや、着けたらよかったんだがな。俺はこれでも、鍛えてる身だ。気配でわかる、魔物だ、それも強い。そしてももう1つの気配、魔法少女だ。おそらく戦闘が行われている。
怖いもの見たさというやつか、見に行ってしまった。
雪のように白い髪色で二つ結いの髪型の端正な顔立ちの魔法少女が、人型の魔物、魔人と死闘を繰り広げていた。
「白き魔法少女よ。ここまでよく我の猛攻に耐え凌ぐことができた。しかし、貴様は虫の息。トドメを刺すとしようか。」
魔人が敬意を持って魔法少女に語りかける。
「ぅぐぁ.........。まだ、いけ、る。」
魔法少女は、魔人の言う通り、身体中傷や痣だらけで素人から見てもわかるように肩で息をしている。魔法少女が劣勢であることは明らかであった。
おいおいおい、やべぇじゃねぇか。魔法少女が負けかけているんだが。相手は、魔物の中でも、強力な魔人。どうするよ、俺。
両脚が震えて動かねぇ。高校生の時を想起させる。俺には何もできねぇ、できるはずがねえ。助けを呼ぶか、いや、そしたら間に合わねぇ、魔法少女がくたばっちまう。どうする、どうする!?
「だ、れか、助け、て.........」
救いを求める 魔法少女の消え入るようなか細い声に、俺の体は自然と動き始めていた。
もう二度と、同じ結末は迎えたくはないと。
もう二度と、悔いは残したくないと。
俺自身が変われる機会は、きっと、ここしか無いんだと。




