迷惑な神様のせいで、心が読めるようになってしまった。
人生初BL(と言えるかもわからないピュア路線)です。
陰キャ故にうまくいかないこともあったけれど、30歳くらいまで特別不幸もなく、平凡な人生を送っていた。
家は裕福ではないが貧乏でもなく、普通に高校を卒業して、少し奨学金を借りながら大学生になって卒業して、サークルで知り合った縁でベンチャー企業に就職した。容量は良くない自覚はあるが、人並み以上の努力をしてきたつもりだ。
ただ一つ心残りがあるとすれば、親兄弟に最後の別れ言えなかったことと、恋愛とか青春とか、そういう煌びやかしい経験ができなかったことだ。
その日も、特になんでもない日だった。師走の忙しい時期で少し残業をする羽目になったが、電車は余裕で残っているし、同僚とはいつも通り「お疲れ様、また明日な」と言って別れた。
神様もいたずらが過ぎる。迷惑極まりない。
都会の星空が薄い空に人柱の強い柱が立ち、世界が一瞬明るくなった。そして俺は、痛みを感じる間もなく、絶命したらしい。
晴れている夜空から雷が落ち、不運にもそばにいた、そういうわけで俺の死因は感電死ということになったらしい。
次に目が覚めたときは、なぜか椅子に座っていた。正面の少し離れた場所には豪勢な椅子に座った少年顔の神様がいて、その斜め後ろには頭を抱えた若い男が立っていた。
そして神様は言ったのだ。
「不愉快な天官につい苛立ってしまったせいで霊力が暴発してな。すまなかった。まぁ無駄にプライドの高い奴らばかりでうんざりしていたし、お前を天昇させるのはちょうどよかった」
天官?霊力?天昇?現実とは思えない単語が次々と耳に入り、頭が混乱していた。その時だった。
『本当に全くこの神は、下界をぞんざいに扱いすぎだ。人にはそれぞれ人生があるのに、可哀想なことをしたとなぜわからない』
呆れたような、労うような、そして静かで気着心地の良い声音。しかし口元を見ても、神様の後ろの青年は何も話していないように見えた。
この日俺は、他人の心の声が聞こえるようになってしまった。
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