第25話 嘘から出た真
最終回です
ぐちゃり。と人だったもの、命あったもの、を踏み潰す。
気分が良いなんて言葉で表せないほどの高揚感。体の全て、頭の先から足の爪先まで、全身にエネルギーが満ちるこの感覚。
「あー、生き返るー」
上等な温泉でもここまで体に熱は灯らないだろう。
あぁ、やっぱり俺は、人殺しのロクデナシだぁ。
ヴァンスは喜悦ともにその考えを受け入れる。
どうやら俺は、あの日を経てもあの思い出を持っても、変節することなく、今どうしようもなく生を実感してしまう。
だが、なにも変わらなかった訳ではない。
「あ、もしもし?バエルだ。仕事は終わった」
1年前とは広さが段違いの家に着く。
家の中から小さな怒鳴り声が聞こえる。
その音へ無遠慮に向かう。するとそこには、いつものようにパソコンの前でぶちギレている。
フェルンが居た。
どうしてコイツは俺の家にいるのか。それはどうやらあの元家出娘、ネル・フリードが関係しているようで、俺には拒否権がなかった。
…物理的に。
あの日の後、どうやらフェルンはネルと一緒に居たらしく。フェルンはそこでネルと、ある約束をしたらしい。
そして、俺の住む狭い家にやってきたかと思えば、とんでもないことを抜かしやがった。
「私、ソロモンに入ったから。それで条件を何個か提示して、全部受け入れられたから」
「え?はぁ…まぁお前と殺し会わなくて良いのは朗報だな」
なんで俺に?って思っていたら。
「条件の中に貴方と同じ家に住むことを要求したの」
「は???なんで???」
「了承して貰ったわ」
「は????」
「さすがに貴方も組織に逆らえないでしょ?」
「いや、別に?」
そう言うとニコニコした顔で、壁に持たれながら座っている俺の元まで歩いてきて、足で壁ドンされた。
「逆らえないでしょ?」
「ハ…ハイ」
「よろしい。ならば引っ越しましょ。手続きは全部終わっているわ。後は貴方が移動するだけ」
「オーマイガー。お前クレイジー過ぎるよ」
という話だ。拒否権なんて無かった。
「おい、帰ったぞ。それ終わったら、人集めとけ。俺は風呂に入る」
あの日から変わったことはまだある。
家に物が増えた。特にフィギュアの類いが多く目立つ。ケースまで買って並べる始末だ。
なんでこんなことになったかっては単純だ。組織が移動しなくなったから、荷物を増やしても問題ないってことと、単純にゲームにどっぷり浸かったフェルンが、フィギュアの収集に乗り出したからだ。
「あー、全く…防音室にぶちこんでも声が聞こえんのバグだろ」
風呂から上がった俺は、すこぶる嫌だが、推定地獄への扉を開く。
「おい、キレてるとこ悪いが、どんくらいで終わ」
画面が見える。敗北と書かれている可哀想な画面が。
「負けてやんの」
「あだ!」
その言葉を言った瞬間に持っていたマウスを俺に投げてくる。それが肩に当たって、後ろへ軽く押される。
「お前、これで何個犠牲にしたよ」
「しらないわよ!」
フェルンのパソコンデスクの下には今まで投げ捨てられてきた、哀れな残骸が詰まった墓、違った箱がある。
頭に来たら高い奴でも問答無用でぶん投げるのだから、困ったものだ。
「まぁ、落ち着け、カスタムするぞ」
「分かったわ。今デュオやってるから後8人集めてくれる?」
「おい、俺をハブろうとするな」
「煽りカスなんて死ねば良いのよ」
「とりま、7人な」
そう言ってぶちギレているフェルンを扉を閉めて隔離する。
そして自分のパソコンを起動し、SNSで知り合った友人達にメッセージを飛ばす。元々遊ぶ予定だったからすぐに人は集まった。
そう変わったこと。あの後から一番大きく変わったことだ。俺とフェルンには友達が増えた。インターネット上だが。
いやだからこそ友人を作れたんだろう。こっちのリアルを詮索されないし、仮に俺達が襲われたとしても、敵だってわざわざゲーム内のフレンドを探しだして襲うなんて無駄な事はしないだろう。
そう思いながら、フェルンともう一人が居るボイスチャットに入る。
「おい、集まったぞ。早く来い」
返事を聞かずにそのチャットから抜ける。そして7人集まっている、少し喧しいボイスチャットに入る。
「ばんわ~」
ゲーム友達って悪くないな~って思うのだった。
これもそれも全部あの日とあの思い出と、あの子のお陰だな。
そう感傷に浸っていると。チャット欄に二人が入ってきた。
「あ、皆さん聞いてくださいよ。さっきお姉さんとデュオランクをしていたんですけど……」
と、さっきの出来事を話す。フェルンと遊んでいた子の声を聞いて。
あぁ…悪くないな。
なんておもった。
「全くだ…。どれだけマウスを犠牲にすれば気が済むんだ?」
「煽りカスはマウスに当たって死ねば良いのよ」
その声を聞いた友人達は笑う。そしてこう言うのだ。
「相変わらず仲が良いですね」
…ソロモンに入った後、引っ越した後に、なんでそんなゴミみたいな条件を要求したんだ?と聞いたことがある。
「笑えねぇ冗談はやめてくれ」
終わりました。
誤字脱字があるかもしれませんが、どうか大目に見て許していただけたら幸いです。
さて、ここからは作品の話になりますが。
あの後、ネルとフェルンはどんな約束をしたのか。
それを考えてくれると嬉しいです。
後、ヴァンスの言動にはブーメランが多くて笑えますね。
自分の言葉や行動には気を付けたいものです。
では、ご愛読いただきありがとうございました。




