嫌な時代
土砂降りの雨が降る幹線道路を、帰り道を急ぐ女が傘もささずに1人歩いていた。
女は時たま後ろを向きタクシーの姿を認めると手を上げるが、何かに気がつくと手を下ろしタクシーを見送る。
それを数度繰り返した後、土砂降りの雨でずぶ濡れの……全く濡れてない女は独り言を呟いた。
「昔は良かった。
ちょっと霊気を強めてやれば、霊感のある運転手が乗るタクシーが私に気がついてくれたのに。
今のコンピューター制御の無人タクシーは、幽霊の私を認識することなんて無いからな…………。
嫌な時代になったもんだよ」
そう呟き女は住処である青○霊園の墓に向けて歩み続けるのだった。