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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
第二章〈トラウマ克服に向けて〉
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精役講習は金髪のお姉さんと

 先輩に再度お礼を言って、俺は受付へ向かう。


 受付嬢のお姉さんは、俺が受付へ向かうところをガン見していたくせに、直前で机にある書類に目線を下げ、俺が目の前に来ると、あ、今気づきましたよ?という雰囲気を出しながらこちらを向いた。


「あ、あ、えっと…本日はどのようなご用件でしょうか?」


 真っ赤な顔で俺の胸を見ながら笑顔で対応する。もう慣れた。


「精役の講習を受けに来ました。一応、書類にいつでもいいと書かれてたんで、予約はしてな―――」

「当病院を選んで頂き、誠にありがとうございます!」


 遮られ、全力で頭を下げられた。


「あの、予約は――」

「全く必要ありません!いつでもお越しいただいて問題ございません!ちなみに、こちらは私の家の住所ですが、こちらもいつでもお越しいただいて問題ございません!《《家の鍵》》は玄関前の植木鉢の下にあります!」


 そう言いながら、可愛らしいメモ用紙を渡される。

 名前、住所、電話番号、スリーサイズ、家族構成、年収、得意料理…等々、大抵の個人情報が凝縮されたメモ用紙だった。バストサイズは……ほほう。

 この人、だからさっき一瞬下を向いたのか。


「私が!この池田が!担当させて頂きます!それでは、……ハァハァ……保険証と精役に関する書類を……ハァハァ……いただけますでしょうか…?」

「は、はあ」


 鼻息の荒い興奮状態の女性に住所が載ってる書類渡したくないんだが…?

 ただ、一応大きい病院だし…と思いながら、渋々渡そうとすると、


「池田さん?貴女は受付係であって、精役の講習をできる資格もないし、そもそも職務範囲外でしょう…?」


 白い手がにゅっと伸びてきて、横から書類もろともかっさわられる。


「い、院長!?」


 そう呼ばれた人物は、白衣姿の女性だった。

 腰まであるブロンドヘアに、タイトな黒のスカートを着こなし、理知的な印象を与える赤い眼鏡に涙袋、と、ハリウッド女優の役作りとしか思えない美人だ。ちなみに城よりデカい。グローバルみを感じる。

 ……にしても、この若さで院長ってすげーな。


「ごめんなさいね……あんまり精役の講習受けにここに来る人あまりいないから、彼女興奮しちゃって」


 申し訳なさそうに目じりを下げて謝るパツキンお姉さま(院長)。


「私が変わって貴方の担当をするわ。私は院長の高島たかしまよ。……えっと、貴方の名前は――え?」


 院長先生は書類と俺の顔を何度も見比べる。まるで幽霊にでも会ったような表情だ。


「不木崎……拓斗……くん?」


 不味い。おそらく、転生前の不木崎くんの知り合い関係か……。

 ごまかしてもあまりいい結果にならないのはわかっているので、いつも通りの言い訳を使うことにしよう。


「えっと……もしかして、知り合いでしたか…?俺2か月くらい前に記憶喪失になっちゃったみたいで……その、以前のこと覚えてないんですよ」

「き、記憶喪失…?ちゃんと病院で診てもらったの!?」

「い、いやー、まだ……あははは」


 頭を手でかいてヘラヘラする。こういった時はヘラヘラすれば大抵のことは乗り越えられるのが、このイケメン不木崎くんが成せる業なのだ…!


「何考えているのッ!?今すぐ診察するから来なさいッ!」


 通用しませんでした。めっちゃ怒ってる。

 美人が怒ると怖い…。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 触診は極力控えてもらい、いくつもの質問と診察をすると、院長先生は眼鏡を取り、頭を手で押さえた。


「……おそらく、解離性健忘かいりせいけんぼう……しかも、全般性健忘ぜんぱんせいけんぼう。ほとんど全ての人生史の記憶がない……」


 かいり…え?ぜんぱ……え??あまり難しいことを言うなよ…?

 こちとら学はそんなにないんだぞ…?


「……きっかけはきっと……あれしかないわね」


 拷問でも受けているような表情で、指を顔に滑らせていく。

 ……あれ、この人俺のトラウマの記憶知ってる…?


「俺がこうなった理由を知ってるんですか?」


 俺の質問に、院長先生はこちらに向き直る。

 眼鏡をかけなおしこちらを向く表情は、苦渋の表情だった。


「ええ……。知ってるわ。……貴方は理由を知りたいの?」

「はい、知りたいです」


 俺の女性を拒絶するトラウマの原因がわかれば、解消の手助けにもなる。

 この間なんか、城の攻撃力の高さに驚いた。あの調子じゃ、いつ我慢の限界が来るかわからない。できるなら、早めに治しておきたい。


「解離性健忘は言わば体の防衛反応。貴方が覚えておきなくなかった極度のトラウマを体が消去したの。……記憶を戻したい、っていう気持ちはわかるけど、こういった病例はあまり急いでもいい結果にはならないの。記憶が戻った反動で、下手したら記憶を失う前以上のことになってしまうのよ?」


 ……え、この体時限爆弾なの?

 わーい、イケメンに転生したー!やったー!と思ってたら、いつ廃人になってもおかしくない器だったって、足に爆弾どころの話ではない。


「それに、私が言っていいことじゃない。私はあの子の……」


 そう言って、院長先生は悲しそうに俯く。

 すごく気になるそぶりしないでもらえません?どうせそれ聞いても反動で廃人になるがよろしいか?って答えるんでしょ?


「そ、それより拓斗くん、見違えたわ!最初顔を見てもわからなかったもの」

「まぁ、引きこもってたみたいですし、2か月前はめっちゃ痩せてましたね…。母さんにもすごく迷惑かけましたし…」

「食事もきちんととれて、こうして精役の講習もしにきて……本当に偉いわ」


 今度は泣きそうな顔になる。

 以前の俺、そんな酷かったの…?生きてるだけで偉いとか言われ始めたぞ…?


「今はどうしてるの?お母さんと家で過ごしてる感じ?」

「まぁ、そうですね。後は学校行ったり、本読んだりしてますかね」

「が、学校!?」


 またもオーバーリアクションである。コロコロ表情が変わる人だ…。見た目欧米のハリウッド女優なので、映画でも見せられている気分だ。


「す、すごいわね!やっぱり、今記憶を掘り起こすのはやめておいたほうがいいわ。……あと、お母さんに今日私と会ったこと、黙っててほしいの」

「理由は……ああ、記憶に関することなんですね」

「察しが良くて助かるわ。それだけではなくて、お母さんも精神的に不安定になってしまう可能性があるの」


 確かに、この病院へ行くとわかったときの母さんは変だった。

 一人で行かせまい、と必死になっていたのは、この人も関係してるのだろうか…?

 ただ、母さんが不安定になるのはこちらとしても嫌だ。

 あの様子から見ても、いい結果にはならないだろう。


 うむ……母さんにする予定の精役のエッチな話……どうしようかな………。

 やめとこ……。


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