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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
第二章〈トラウマ克服に向けて〉
38/43

家族会議

side.ぐすくはる

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私は家に帰り、真っすぐリビングまで歩いて行った。

 案の定、リビングにはソファーでだらけている妹がいる。


「……あ!お姉ちゃん!おかえり~」

にへらっ、と笑いこちらに手を振る妹。


 今はこいつの能天気さが……憎い……!


「そこに――」


 リビングの床を指さし、妹を睨みつける。


「座って」


 妹は顔をキョトンとさせて、すぐに破顔した。


「何~?今日の朝可愛かった反動?……怒ってても可愛いよ!

お姉ちゃん!」


 こいつ…私が冗談でこんな般若も裸足で逃げ出す顔をしているとでも…?


 今日の昼休み、不木崎のもとへ届いた妹のラインの件。

 私はふっきーに聞けなかった…!怖い!もし、『あ、椿ちゃんの方がエッチで可愛いからライン交換したんだよね』とか言われたら……私、ふっきーにマウントポジションとってわからせてやってしまいそう……!


 妹はモテる。


 日本の女子のモテる基準を完璧に網羅したのが、この妹、城椿なのである。

容姿端麗は言わずもがな、文武両道、小柄、誰にでも明るい性格、小さいお尻、そして……小さい……胸……!!

 そう、胸が小さいのである。少し、ぷっくりとなだらかな丘がある程度で、スラっとしたスレンダーボディは世の男を虜にする。


 こいつがバレンタインを何個か貰ったのを私は知っている……!

 しかも、『お姉ちゃん、チョコ好きだよね!一緒に食べよ!』と、モテるマウントを取った事実も私の心に深いダメージを与えている…!


 ただ……ただ、何かの間違いとも思える。

 不木崎は確かに私の体が好きだと言ってくれた。エッチだと言ってくれた。

 それは私の生足やおっぱいに直撃する視線でも裏付けが取れている。

 そう、何かの間違いなのだ……!そうであってくれ……!

 私は妹を失いたくない……!


「椿、座って。正座」


 もう一度、床を指さす。

 私が本気だと理解したのか、何かしたっけな…、という表情で正座をしていた。

 短いホットパンツから、私より少し細いすべすべの足を露出させている。

 ふっきー…これか…?これがいいのか…?


「私、言ったよね?ふっきーと会っちゃダメって」

「……え?会ってないよ?」


 ……え?なら何でライン知ってるの…?

 何で、私もしたことない日常の画像を送りあう友達みたいな感じでやり取りしてるの…?


「あ、もしかしてライン?」

思案顔の私に、妹は思いついたようにポン、と手を打つ。


「ラインは、お姉ちゃんがいじけて泣いて、玄関にスマホ忘れたことあったでしょ?そん時に連絡先もらった」

「……だからラインが開かれていたのかっ…!何でそんなことするの!……私、椿がそんなことする人なんて――――」


「春って、名前で呼ばれ始めたんじゃない?」


「――え?」


 何故……それを……?

 私はまだ妹に先日の件は話していない。不木崎の特級デリケートな話もあったことから、その話題は避けていた。もちろん、名前呼びの下りなど言った記憶もない……。


 驚く私をよそに、妹はピンと人差し指を立てる。


「昨日、私たちが入れてるGPSアプリ見てたら、お姉ちゃんがすっごい勢いで走ってるのがわかったの。……でも、確か職場体験だったでしょ?喫茶店って聞いてたからおかしいなって思って。あと、めちゃくちゃ土砂降りだったし」


 ごくり、と唾を飲み込む。

 どこまで……知ってるの…。


「お姉ちゃんその前の日に泣いてたから、ふっきーのライン一応もらってたの。案の定だったよね……いじけて、どっか逃げたんでしょ?」

「ヒュ」

喉が鳴る。


 昔から妹は妙に勘が鋭いところがある。

 み、見透かされてた…?


「だから、私がふっきーに電話して、お姉ちゃんの居場所を伝えたの。……確か公園だったっけ?ふっきーも何か焦ってたから、やっぱりなーって思ったな~」


 妹が形勢逆転したのを確信したのか、表情をどんどんニヤつかせていく…。

 正座してるくせに、態度は指数関数的にデカくなっていく。


「その時、『私が』言ったの。お姉ちゃんのこと春って名前で呼んで…って。……ちょっと待ってちょっと待って?……あれれぇ?これ、お礼を言われてもおかしくないくらいなのに――」


 妹は止めと言わんばかりに、口角を吊り上げた。


「――私、何で正座させられてるんだろうね…?」


 私はすぐに妹を抱っこして、ソファーに座らせた。私は床に正座する。

 どうやらこの子のおかげで不木崎は無事、私のところまでたどり着いたらしい。

 ……泥棒猫と思ったら救世主だったって噓でしょ…!


「……そ、その……ご、ごめ……」

「え~?聞こえなーい」

「ごめっ、ごめん……なさい……!」

「あ、やっべ、鼻血出るってこれ。まじふっきー感謝だわ」


 スンスンと鼻をすする妹に私は何も言えない……!悔しい……!

 ただ、ふっきーとのやり取りはどうやら知らないようだ。そこは良かった…本当に。


「てかさ、やっぱお姉ちゃんふっきーと結婚したいの?」


 話が飛ぶ。結婚したいかって?したいに決まってんだろ!

 もうどれくらいしたいか表現できないくらいしたいよ!


「したい!……です」


 ただ、まだ下手にしか出れない。

 明確な上下関係が生まれてしまっている。


「確か、男の子って法律で二人以上と婚姻結ばないといけないよね?…お姉ちゃん、それ耐えられる?」

「え、無理」


 ふっきーの隣に、知らない女……?

 え、どうしよう。科学の力とお風呂場を借りて、完全犯罪しなくちゃいけない…!


「だ・か・ら!私でしょ!」


 そう言って、薄い胸板を誇らしげに張る椿。

 何を言ってるんだ……この子は。


「どこぞの変な女に捕まるよりは、私が二人目になった方がお姉ちゃんも安心でしょ?……いないよ~むっつりスケベのお姉ちゃんの意図をくみ取って、ふっきーに的確なアプローチをかけてくれる助っ人」

「………確かに」


 一理ある。実際、私は不木崎との関係性の中で、この妹に何度も助けられた。

 不木崎が公園に現れた時、もしも私のことを『春』って呼んでくれなかったら、私は止まらず、そのまま大雨の中へ走り去っていっただろう。

 この妹、本当に救世主である。


「……でも、椿モテるから、他の男の子も選べるのに……いいの?」

「いいに決まってるじゃん!ふっきーとちょっとラインで通話したくらいだけど、あ、この人の子ども生みたいな、って思うくらいには好きになったし!」


 妹の返答に、私は頭を抱える。

 ……流石私の妹。思考回路が私と変わらな過ぎて泣けてくる。


「てかさ!写真見せてよ!写真!私まだ生ふっきー見てない~!なんかラインのアイコンちっちゃくて、ちゃんと見れてないし~」

「……まだ、ダメ!」

「独占欲強いなー……まぁ、別にいいけど」


 ふんふん、と嬉しそうにソファーで足をパタパタさせている妹。ご機嫌だ。

にしても、重婚か…、盲点だった。

 だが、椿の言ったプランであれば何も問題ない。


 私は思考の途中で胸がキュッと苦しくなり、唇を尖らせてしまう。


 ……ふっきーが他の女の子と結婚したいって、思わなければ…だけど。


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