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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
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救われた愛、歪んだ世界①

side.ぐすくはる

――――――――――――――――――――――――――――――――


 倒れこむ不木崎を、私は胸で抱きとめた。

 どうやら、完全に気絶しているようだ。若干泡を吹いている。


 今もまだ興奮が消えない。

 驚きなんて言葉では表現できない、とんでもない事実だった。そもそも男性のモノなんて触ったことがなかったから最初は何かわからなかったけど、まさかあんなに大きくなるなんて思わなかった。

 というか、これって不木崎が言うには薬なしってことだよね…?……本当なの?


「……」


 ギュッと頭を抱きしめる。確かめるように。私の心臓の音を聞かせるように。

 私が本気で好きになった男の子は、やっぱり普通の男の子じゃなかった。私が、最初に見立てた推測はその通りだった。

 優しくて、意地悪で、そしてすごくエッチな男の子。


 彼は私に可愛いって言ってくれた。すごくエッチだって言ってくれた。

 私のことを汚いなんて、気持ち悪いだなんて全然思っていなかった。全部、私が勝手に勘違いしていた。


 きっと、不木崎は相当な覚悟を持って告白してくれたのだと思う。


 だって、女の子で勃起する男の子なんて、聞いたことも見たこともない。

 バレたら大変なことになるんだろうな…ニュースとかにも出ると思うし、研究施設行きとかもあり得る。それほどのことを、子供みたいにいじけて泣いていた私なんかに伝えてくれたのだ。嬉しくないわけ、ない。


 あれは本当に硬く、大きく、熱かった。まだ手に熱が残っている。触っただけなのに、触れられてただけなのに、すごく興奮してしまって頭がピリピリする。小説やエッチな本で読むより、何倍も大きく、逞しい。

 あんなの現実世界に存在していいものなのか…。


「大丈夫だよ、ふっきー。私こう見えて節操はあるタイプなんだ」


 おっぱいの上にある頭を撫でながら、安心してもらえるように言い聞かせる。

 気絶して聞こえないんだろうけど。


 性欲は人並みにあると思うけど、それよりも不木崎に好かれたい、愛されたいという想いの方が何倍も強い。どうやら私も普通の女子じゃないみたいだ。

 やっぱり相性いいよね、私たち。


 私は不木崎とそのままベンチに倒れこむ。私がちょうど不木崎に覆いかぶされているような体制。そのまま頭を固定しながら、不木崎の額に自分の額を当てる。鼻もぴったりくっついたが、唇は触れるか触れないかのところで止めた。


 寒さで冷えた唇に、お互いの熱い吐息が触れる。

 自然と頭を押さえている手の力が少し強くなる。

 私はギュッと目を詰むって衝動を堪えた。


 ああ、やっぱり好きだ。好きでたまらない。

 このまま体が溶け合ってひとつになってしまいたい。


 彼が怯えていた理由もわかった。

 私の恋の深さが怖かったのだ。不木崎に振られた私が何をしでかすかわからないから、怖かった。

 それ当たってるよふっきー。私も自分が何するかわからなくて怖かったんだから。


 でも、もう大丈夫。これからは絶対に死ぬなんて思わないし、遠くへ行ったり、学校を辞めたりしないから。絶対にふっきーの側を離れたりしないから。もう、全力で好きになり続けるって決めたから。――もう、迷わない。


 ……だけど、ひとつだけ残念な事実が発覚した。不木崎はまだ、私に恋をしてくれていない。本音で話していたようだったが、一度も私を好きとは言ってくれなかった。


 まぁ、まだ会って1か月だし、きっと恋愛感情とかはないのだろう。

 私はとうの昔に限界値を超えているんだけど…でも、大丈夫。


 私、待つよ。ずっと待つ。ふっきーが女の子の体が怖くなくなるまで。私のことを好きになってくれるまで。

 私から襲ったりしない。ふっきーが私を襲いたくなるまで待つし、色仕掛けもいっぱいして、襲わせてやるから。そして、同時進行で私を好きになってもらおう。


 もう一度、不木崎を優しく抱きしめる。これ以上好きにしていると、彼が起きた後に響きそうだ。

 慎重にベンチへ寝かせ、頭を私の太ももに乗せる。

 寝心地が良いのか、気持ちよさそうに私の太もも撫でている。

 なぜ彼は私の興奮を逆撫でするようなことをするのか。彼が触ってくれるという事実だけで気持ちいいし、すごく興奮するに決まっている…今は我慢ができなくなるからやめて欲しい。

 でも、こんなに触ってくれるんだったら、タイツ脱いでから寝かせればよかった。


 しばらく見るだけに留めるが、やはり我慢ができない。

 あまりに愛おしくて、止めようと思っても何度も彼に触れてしまう。

 彼の濡れた髪、ときおりぴくぴく動く瞼、形のいい鼻――そして、淡い桜色の唇。


 親指を彼の唇にそっと当てて、ゆっくり表面をなぞる。

 滑らかな手触りで少し押して離すと、ぷるん、と震える。

 そのまま親指を自分の唇に当てて目を閉じた。


 きっと私は今、とんでもない表情をしているんだろうな。彼には見せられない、酷い顔。自分の濁った欲望が、腹の内から渦巻いてくる。考えてはいけない、甘い毒が唇から私の脳まで溶けこんでくる。


 ねぇ、ふっきー。


 私だけに心を許して、

 私だけにエッチな目を向けて、

 私だけに弱いところを見せて、

 そして、私を愛して欲しい


 誰にも譲りたくないの。


「大好きだよ、ふっきー」

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