エロは愛を救う②
俺は位置情報を頼りに走り出す。どうやら現在は一か所に留まっているらしい。
もう、覚悟は決まった。城の妹と話してやはり確信した。俺はどうやら城成分を補給しないとダメな体らしい。もう骨の髄まで毒されてしまっている。
俺が滅茶苦茶にされた時はそれまでだ。一応、一応、乱暴にしないでね…?と懇願はしてみるが…。あれ?これ逆効果になるかな…?
体を張って城を取り戻す。
俺の下半身にはこの世の常識を破壊するような事実が詰まっている。おそらくあまりの衝撃に、ちょっと拒絶されたことなど吹き飛ぶだろう。
代償として、俺の意識も吹き飛ぶのだが…。
多分、多分なんだけど気絶で済むと思う。済んで欲しい…。
こっちも色々耐性をつけているのだ。そう易々とトラウマになってたまるか…!
問題は、気絶までのリミットがどれくらい持つか、ということ。
5分…いや3分でいい。俺の意識が持てば、城に色々説明できるし、思い出作りは止めようね!と言える…。
それに、城の妹から魔法の言葉とやらも聞いた。
……でもこれって魔法の言葉というよりは、ただの名前呼びだよね?
『それは――春、だよ』
季節のことじゃないだろうから、多分名前で呼んであげてってことだろう。
全く、魔法の言葉なんて言うから期待したのに、そんなこととは……。
――ああ、母さん。もしも俺が屍になったら骨は拾ってくれ。
GPSの終着点である、公園につく。
三角屋根の下にあるベンチに城は俯いて座っていた。ぽたぽた水滴が滴っていて、こんな状況にも拘わらず、綺麗だと思ってしまう。
さて、準備はいいか。
ここから煩悩を引き出せ…たぎらせろ!この雨でクソ肌寒い、しかも屋外で、俺は息子を奮い立たせなければならない。
前世でやれば、公然わいせつ罪とかで連行されるようなことをしなければならないのだ。
失敗は許されない。台詞の途中で倒れたりしたら、終わりだ。
城の目の前まで歩いていく。こちらに気づく様子はない。酷く落ち込んでいて、電池の切れた人形のようだ。
「おい!こっち見ろ!」
大声を出して気合を入れる。雨音にも負けないくらいの大声。
城はゆっくり顔を上げる。瞳は暗く、快活な様子は一切ない。
俺を認識した城はすぐに立ち上がろうと、腰に力を入れた。
「ダメだ!逃げんな!春!」
もう一度叫ぶと、城は雷に打たれたように硬直する。
さて、やりますか。
悪いが、お前には俺のオカズになってもらう。
……後でちゃんと叱られるんで、ホント許して欲しいです。
右手で城のおっぱいを全力で鷲掴む。指一本一本がおっぱいに沈んで見えなくなるほどの柔らかさ。
これほどとは…!
さらに、手に伝わる体温は、雨に濡れているというのに想像以上に暖かい。心臓が大きく脈打ち、興奮で一気に脳に集まった血液が、勢いよく下半身へ流れていく。
目視だけでもこいつの乳はやばかったが、手に取るとその破壊力をわからせられてしまう。
やはり、俺はド変態らしい。こんな状況だというのに、今までにない以上に体が興奮してしまっている。一瞬で、下半身はかつてないほどそびえたつ。勃つかどうかの心配など杞憂に終わった。俺の体ドスケベ過ぎない?
城が驚いた顔をしている。悪いな、今はその顔もスパイスになってるんだよ…顔面凶器め!
次の瞬間、心臓が飛び出そうなほどの鼓動が襲ってくる。
胃の内容物が全て逆流するかのような吐き気も一緒にきて、脳が沸騰し、今すぐにでも気絶しそうだ。
だが、まだ駄目だ。まだ、城に何も言えていない。
俺は空いている左手で城の手を取り、その手を絶賛テント設営中のズボンに持っていき、握らせた。
一度割れ物に触るかのように優しく包み込まれ、次の瞬間、結構強めにグッと握られる。ちょっと待って?お願いだから強く握るのはやめて?
禁欲生活を強いられているせいか、この程度の刺激がヤバい。
「いいか、春。よく聞け!今お前が握ってるものが何かわかるか?わかるよな?それが何でこんなになってるか教えてやる!」
股間から俺の顔に視線を向けた城の瞳は驚愕の色に染まり、目を大きく見開き、丸くさせていた。
脂汗が噴き出る。高熱が出たように朦朧として、息をするのもキツい。
だが、言わなくてはならない。調子に乗るから絶対に言いたくはない、本音を。
「それは――――お前が可愛くて!」
城の握っている力が少し強まる。
「エッチだから!」
更に力を強められ、
血の気のない頬に色が戻っていく。
「こうなっちゃてるんだよ!」
瞳に光が戻り、エメラルドグリーンの瞳が揺れる。
「これが!お前のせいで勃った、薬剤ナシのフル勃起なんだよ馬鹿野郎!」
表情が歪んでいき、くしゃくしゃの顔で声を上げずに泣き出した。
「さっきコンビニで言ったことは本当だ!心のトラウマでどうしても拒絶しちまうんだ!てか、お前のこと気持ち悪いと思ってるわけねえだろ!そうだったら、こちとらこんなビンビンになってねえんだわ!」
まだ、いける。まだ、倒れることはできない。
「あ、あとな…お前にビビってる!正直滅茶苦茶ビビってる!今、俺の体こんな状態だから、付き合う(合体)とか無理だ!そんな中、お前から告白されて俺が振っちまったら、お前が絶望して死んじゃうんじゃないかって!池田華みたいな結末になるんじゃないかって、ビビってんだよ!本当は俺も一緒にいたいのに、遠くに行っちゃうんじゃないかって!このアホ!」
…カッコ悪いやら、意識飛びそうだわで狂いそうだ。
城が大口を開けて泣きながら、俺の服の裾を掴む。まるで逃がさないように、離れたくないと言ってるようだった。
そんなに離れたくないないなら、最初から逃げるんじゃない全く。
「クソが……勝手に近づいてきて、勝手にどっかいくんじゃねえよ…!」
あ、ヤバい。そろそろ気絶しそう。
城がものすごい力で俺の服を引っ張る。あ、やっぱりこの子すっごい力強い…。
これ、気絶したら俺やっぱりヤバいよね……?
ここからはクソ雑魚ムーブをして、今までの暴言を帳消しにしなければならない。
下手に出て、何としてでも思い出作りを回避せねばならない…!
今、興奮状態だろうから、優しく、言い聞かせるように……!
「あ、あの、最後に、一つ…いい…ですか?…い、今から僕、多分気絶するんだけど、あの、本当に、本当に、レイプとか……止めてね?…いや、冗談じゃないよ?マジでトラウマになっちゃうから…俺、起きたら心が死んじゃうから…!」
そのまま意識がブラックアウトしていく。
意外とこの意識が飛ぶ感じは快感に近い感覚だなと、アホみたいな感想が頭をよぎる。
最後に振り絞れ…!俺の貞操と命がかかってんだ……!
呂律が回っていない口で、懇願する。
「だから、エッ…チ……なこと……は…止め…てね?あと、おっぱい、触って、ごめん…すごい…柔らか…かっ……た」
最後に見た光景は、視界を覆うほどのおっぱいであった。




