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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
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放課後でぇと


side.ぐすくはる


―――――――――――――――――――――――――――――



 やった!やった!やった!


 午後の授業は全く頭に入らなかった。それはおそらく他の女子もだろう。先生が板書をした瞬間私を、親の仇のような目つきで睨んでくる女子は誰一人としてノートをとっていなかった。勉強しろ。


 さて、ここからだ。引き締めていけ、春。


 二桁を超すであろう告白を受けている不木崎だ。こちらから告白したのでは旗色が悪い。

 ……どうにかして向こうから告白させるしかないのだ。

 そして、疑念を……エッチで……じゃなくて、検証しなくてはならない。


 名付けて!惚れさせろ作戦!

 (意訳:心と体を雁字搦めにして私なしでは生きらない体にしてしまえ)


 幸い武器はこの無駄にでかい胸がある……武器になるの?まぁ、距離感は気を付けないといけないが使えるものは使わせてもらおう。おっぱい多めで行かせてもらう…!


 そして先ほどが初めての会話だったが、話した感じ好きだった。この人の子ども産みたいな、と思うくらいには好きになった。あまり女を出すと引かれるので自重するが……。


 放課後になり、マックへ向かって歩き出す。


 周りから刺すような視線を受けるが優越感が勝りすぎてノーダメージだ。……それはいいのだが、正直何を話せばいいかわからない……!

うっかりエッチしてください、と言いそうになるから下手に喋れない。


 うんうん唸っていると、


「それ、重くない?」

急に頭上から声がする。不木崎だ。


 視線の先は私のトートバックに注がれていた。今日は図書室で大量に本を借りたせいか、トートバックの底はスライムみたいにへこんでいる。


「明日からゴールデンウィークだし。たくさん借りちゃったの、結構重い」

笑いながらそう言ってから、外に遊びにも行かない根暗女だと思われただろうかと焦る。


 しかし当の本人はそんな雰囲気はみせず、ふーんと言いながら、流れるような動作で私からトートバックを取り上げる。


 ……え、何?その本よこせ的な…?


「持つよ」

「は?」

一瞬何を言われたか、何をされたかわからなかった。


「うわー、本当に重いなこれ」

そう言いながらはにかむ不木崎を見て私は一気に体が熱くなる。


 好き、という言葉が頭の中でいっぱいにひしめき合い、耳まで真っ赤になってしまう。これは私が読んでるファンタジー小説の一場面よりファンタジーである。


 男が女に優しくするなんておとぎ話じゃないの……!え、私のこと好きなの?私も好きから大好きになりました!


「どんな本読むの?」

「えっと、池田華とか来住すずめとかかなー」


 平静を装って、手を顎に当てて思案顔を作る。緩むな……口……!

おいおい、春。惚れさせるんだろ。完敗じゃないか。こちとらびしょびしょだよ。


 にしてもなんだこの男……!ふざけるなよ!!ベロチューしてやろうか……!急にそんな剛速球を投げ込まれた私の身にもなって欲しい。むしろ今の流れで押し倒さなかっただけ褒めてもらいたいくらいだ。……まぁ、そんな度胸ないんですけね。


 私の回答に不木崎は頬を緩ませる。めちゃくちゃ可愛い。


「へぇ、女子は漫画しか読まないかと思ったよ。水国千冬って知ってる?」

「知らない……小説家だよね?」


 うんうん、結構マイナーだからなー、と不木崎は器用に自分のバックを漁り始める。取り出したのは一冊の小説だった。


「これも一緒に入れておこう」

そう言いながら、私のトートバックにその本を入れる。


 なぜかすごく嬉しそうだ。


「そこらへんの小説家好きなら、絶対この人も好きだから。暇なとき読んでよ」

「……うん、ありがとう」


 お前が好きだよッッ!!!このドスケベハニカミ王子がッッ!!!と思いながらお礼を述べる。反則級の笑顔をこちらに向けてくる。私の徳は今日一日でどれほど消費されているのだろうか……。


 あわよくばエッチなことしたいなーから、絶対赤ちゃんこさえて結婚しなければならない、に目標が変更された瞬間だった。

理想的な、なんて言葉では表現できない。予想を超えて私の心を転がしてくる天性の人たらし。


 これ、ふっきーにみんな話しかけられないから知らないだけで、こんな一面をもしクラスの女子が知ったら…と思うと私はすぐに我に返り、意識を集中させる。


「ふっきーも本読むんだ。珍しいね」


 休み時間に教室で読んでいるのを何度も見ていたから知っていた。

本に集中してるから思う存分観察できるので助かってます…!


「ふっきーやめい。そうだな、俺も色んなジャンル読むぞ。学校の図書館かなり広いのに読書家の人口少ないもんな」

「そだねー。私も知ってる女の子で本読む人いないね。昼休みはみんなサッカーしに校庭出るし」


「確かに。泥んこまみれだもんなうちの女子」

そう言いながら笑う不木崎。


 良かったな泥んこまみれの女子!笑われてるぞ。


「そういえば城は昼休み何してるんだ?」

「え?私はふっきーを――」

――観察してる。


 と言いそうになるのを寸でで止める。あっぶねー!こいつ人をリラックスさせる天才かよ。

 普通に言いそうだった。


「俺?」

「――えっと、ふっきーみたいに本読んでる。図書室人いなくて静かだし」

「あぁ、なるほど。俺は教室で読んじゃうけどな」


知ってます。私はふっきーの胸とかたまに開く股とかを見てます。


 と言うよりこの無警戒な大型犬は何なのだろうか。私が本を読むと知った途端、柔らかい雰囲気になった。お金は払うからお腹なでさせてほしい。

 読書友達が見つかって嬉しいのだろうか。純粋無垢な貴方を目の前の女はむちゃくちゃにしたいと思ってますよ。

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