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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
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女の子の気持ちがわからない

 不木崎は現代文の教科書と小テストを並べる。

 ふむ、どれどれ…え、52点。


 不木崎を見ると照れたように頭を書いていた。押し倒すぞ。


「えっと、ふっきーって本読むよね?」

「あー、そうなんだが、それとこれとはちょっと勝手が違うといいますか…」


 気まずそうだ。写真を撮りたい衝動を抑えつつ、不木崎の小テストを見る。

 間違えているのは問2の記述問題からだった。


「ふーむ、問2、主人公はなぜ健太郎に対して『これで好きなものを買ったらどうだ』とお金を渡したのでしょうか、ね」


 ふむ。比較的簡単な問題だ。前後の地の分を読めば答えは書いてある。


「で、ふっきーの答えは、『健太郎の経済状況が芳しくなく、少しでも足しにして彼の母親を楽にさせてあげたかったから』ってそんなわけあるかいっ!!」

私は小テストをバンっと机にたたきつける。


 意味が解らない。確かに健太郎の家は貧乏だって書いてあるけど、そんな理由でお金を渡すわけないだろう。聖人君主じゃあるまいし。


「び、びっくりした。……じゃ、じゃあ、答え何なんだよ」

「そんなの『猫耳のカチューシャ買わせてご主人様プレイしたかったから』に決まってるじゃん!」

「わかるかッ!そんなもんッ!」

今度は不木崎が小テストをたたきつける。


 ……なんで、わからないの?


「いやいや、ふっきー。地の分と台詞に答え書いてるじゃん。地の分では『健太郎の後ろを、1匹の白い猫が通りかかった』と、台詞では『自分の屋敷で今家政婦を募集してるんだ』ってホラ!」

「ホラ!じゃねえよ!猫が後ろ通りかかるだけでなんで猫耳のメタファーになるんだよ!怖えよ!あと、家政婦であって奴隷ではないだろ!」

「はぁ?なんでわかんないの?」


 ここまでふっきーが他人の気持ちを理解できないとは思わなかった。同じ読書家だというのに、読み手によってここまで差が出るのか…。

 もしかして、だから私のアピール気づかないんじゃないのかこいつ…。


 他の問題も解答を見てみたが…これは致命的だ。

 一から女の子の気持ちを理解してもらわないと、高得点何て夢のまた夢だ。


「ふっきー、これ初歩からだよ」

「……わかってるよ。女子が何考えてるか正直まだ底が全然見えないし」


 そう言いながら、額に少しかいた汗をぬぐい、ぱたぱたと学ランを仰いだ。さっき少し騒いでいたからか、暑そうだ。

 頼むから、どうか今の私の気持ちはわからないでくれ…ッ!


「まだクーラーついてないのか。あっつ」

そう言いながら不木崎は、学ランを脱ぐ。


 少しむわっと濃い不木崎の匂いが私の鼻孔をくすぐる。蕩けそうな匂い。

 さらに言えば、今まで黒に包まれていたから、急に白いカッターシャツが出てきて鼻血が出そうになる。

 この間はゆったりとしたTシャツだったからわからなかったが、細いけどしっかりとごつい男の体のラインが露わになる。

 そして、暑いといいながら、なぜか不木崎は学ランの上着を自分の膝の上にかけた。いや、暑いのか寒いのかどっちなんだよ。


 というか、


 あれ、


 あれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれあれ?

 ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って。


 白いカッターシャツが少し肌に張り付いていてエロいが、そんなことよりも―――。


 ふっきー下着つけてなくない?


 えっ?何?そのカッターシャツのボタンとボタンの間の隙間から見える肌色って地肌?え?うそでしょ?


 不木崎がぱたぱたと仰いでいるシャツの隙間は、まるでハイスピードカメラのようにスローモーションで中の様子がはっきり見える。


 え、今の先端がポチっとしてるピンク色のやつは―――。


 ガンッ、と私は自分の頭を机に叩きつける。


「え、何ごと」


 もう二、三度机にガンガン頭をぶつけて、私は不木崎を睨んだ。


「まだ、負けてねーからッ!」

「え、何どうしたの!?怖いんだが!」


 落ち着いた私は、改めてふっきーを見る。……だめだ、もう二つのぽっちが透けて見えてる。

 うーん、と背伸びをしているあの可愛いぽっちを上からよしよし、と撫でられたらどれだけ興奮するだろうか…。

 きっと右の方だけ撫でたら、左がいじけちゃうから両方撫でてあげなきゃいけないよね…!

 無音の図書室に乳首を透けさせている不木崎と、ブラを透けてさせている私。

 間違いを起こしてください、と神様が土出座で頼み込んでいるようなシチュエーション。


 だが、ここで吞まれてしまったら全て水の泡。

 エッチなことなんて、不木崎に愛してもらいながらの方が何倍も気持ち良いに決まっている。

 我慢、我慢だ春!


「つ、次は日本史の小テスト見せて。一通りふっきーの苦手なところ確認しておきたいから」

「ん、あ、ああ。わかった」


 慄きつつも、不木崎は鞄から日本史の小テストを取り出す。

 こちらは……64点。まぁ、現代文よりはいいか。

 こちらも問3の記述問題から間違えている。選択式は得意なようだ。


「えっと、『『魏志』倭人伝には、239年に邪馬台国の王【ア】が魏に朝貢した、という記述がある』」


 なるほど。これは有名な人だ。ていうか、比較的覚えやすいサービス問題では?


「で、答えが…卑弥呼って誰だこいつ!?途中まであってるのに何で最後違うの!?どう考えても卑弥夫でしょ!」

「俺が言いたいわ!何で一文字違うんだよ!全部!卑弥夫も徳川家子も織田信美も……一文字だけ変えてくるなよ!せめて変えるならもう…全部変えちまえよ!」

不木崎が頭を抱え咆哮する。


 何か世界に訴えかけているような雰囲気だ。

 ただ、日本史は暗記がほとんどだ。時代背景を理解しながら、流れで教えていくしかない。


「ま、まぁ、落ち着きなよふっきー。大丈夫。私が作ったこの暗記ノートがあれば、テストも怖くないよ!」

「ぐすくぅ……」

少し潤んだ瞳で私の前で祈る不木崎。


 やばい、変な性癖に目覚めてしまいそう。

 というか、こいつ自分ばかり私の視界やら嗅覚やらをジャックしておいて、私のおっぱいも匂いにも気づいていない…?


 ふ、ふざけんなよ!こっからだ!こっから!

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