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あべこべ世界でも純愛したい  作者: ひらめき
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女の子のキモチ

side.ぐすくはる


―――――――――――――――――――――――――――――


 男子の数は圧倒的に少ない。

 700人を超える私の学校でも、クラスに一人から三人程度。競争率も高く、女子たちは獰猛な肉食獣顔負けの奪い合いを日夜繰り広げている。


 そんな中一人、全く女子から話しかけられない男子がいた。


 名前は不木崎ふきざき拓斗たくと


 あまりのイケメンっぷりに、もはや誰も近づけず、周りから高嶺の花として男子の頂点に君臨している。


 しかし、私はここ1か月、不木崎を観察してあることに気づいた。


 この男は何かが違う……。


 いや、確かに他の男子にはないくらいシュッとしていてイケメンだし、身長も高い。……違うのはそういうところじゃない。


 女子に対しての反応も普通の男子と同じだ。猥談は嫌がるし、近づかれるのを嫌う。当然の反応と言えよう。


 まぁ、血走った目で男の股間を凝視する女子など私から見ても怖いけど…。


 人生で一番緊張する。私こと、ぐすくはるは15年生きてきて、一世一代の覚悟を決める。死ねばもろとも…!

 私はその疑念を確かめるべく、その男―不木崎の席へ移動した。


 どうやら先ほどの授業のノートを整理しているらしい。字もすこぶる綺麗で何とも几帳面っぽいこいつらしい。

 触れるか触れないかの当たりで後ろから様子を伺っていると、不木崎が目線だけこちらへよこした。


 目には非難の色が映っている。


「なんの用だ」

「うーん、特に」

「勉強の邪魔なんだが」

「えー、別に私何もしてないじゃーん」


 私、すごく頑張っている。普段はこんなキャラではない。もっと物静かな文学美少女を掲げてやらせてもらっている。それでも、私はこの疑念を晴らさずにはいられない。


 正直この行動はリスクが高い。ただでさえ人気のある不木崎にちょっかいをかけるなど、後から女子どものやっかみが怖い。この高校に入学して友達もほとんどいないため、これでしくじれば、私は高校3年間をぼっちで生きていかなければならない。

さらに言うなら、普通に不木崎に嫌われる可能性がある。


 だが、不木崎の不機嫌そうな声色とは裏腹に、その視線は私の胸に注がれている。


 そう、疑念とはこれだ。


 正直意味がわからない。なぜ『こんなもの』を見ているのか。見るなら私の顔を見て欲しい。自信はある。


 最初は恥ずかしがって目を合わせられないのかと思ったが、不木崎の視線は女子の距離関係無しに、高確率で胸へと向けられている。普段から不木崎を見てる私が言うのだ。間違いない。


 試しに膝に手を当てて、両腕で胸をこう…圧迫すると――ほら目線を外した。


 こういう躍動感ある胸の動きに対しては目線を外すというの事実は既にわかっていることだった。ようは私でも同じ結果になったということだ。にしても本当にガン見してたな…。


 ここで、とてもありえない仮説を立ててみる。


 不木崎は女性の胸に性的興奮を抱いているのではないか―というものだ。

 女子が聞けば誰しも鼻で笑うだろう。あり得ない、と。


 男性は原則性的興奮を覚えない、というのは小学校の保険体育の授業で習う初歩的な知識だ。


 それ故に行為に及ぶ場合は特殊な薬剤を処方してもらい、男性の月のものの周期に合わせて使用する。

 それでも勃起しない場合が多々あり、もし勃起した場合は速やかな行為が必要だ。


 もしかしたら、この男はそんな常識から外れた存在なのではないか…?

そんなあり得ない疑念。ただ、私の高校3年間をベッドしてでも知る価値のある疑念。


 不木崎は、そっぽを向きながら手をひらひらと振る。


「俺は人が近いのが苦手なんだ。男も女も関係なく」

「私は大好きだよ。私たち相性いいね」

「……どうかしてるんじゃないのか?」

まるで宇宙人を見るような目で私を見る不木崎。失礼なやつだが顔がいい。


 それに、もし……もしだ。私の立てた仮説が正しいとしたら、とんでもないことである。女の夢を具現化した男が目の前にいることになる。

ムラムラしてきたらヤル。そんなこと現実に起きていいの…?


 正直、今まで男にあまり興味がなかった。だって薬を飲んで、素早く行為ってすごく味気ない。そこまでしてやりたくない…求めたいし、求められたいのだ。さらに言うなら薬を使用した男はメンタル不調になりやすく、四六時中気を遣う生活なんて私にはおそらく耐えられない。


「なんで近いの苦手なの?」

「こういうデリケートな話普通聞くか?」

「なんで近いの苦手なの?」

「こわっ。話全然聞かないじゃん」


 慄いている不木崎はやはり私の胸を見ている。確かに大きいし目立つけども……。


 そろそろクラスメイトが気づき騒めき始め出した。まぁ、不木崎は高嶺の花すぎて誰も話しかけられないし、焦る気持ちもわかる。


 ただ、不木崎が言う通り、男だろうが女だろうが距離感が近い人が苦手な人は一定数いるし、女である私との会話も普段の男友達との感じと変わらない。いい意味で平等な人なのだろう。


 ただ、もしも仮説が正しいのなら。不木崎はひょっとしてくっつかれることを望んでいるのではないか。


 ずっと凝視してるこの胸を押し付けられることを望んでいるのではないか。

そう思うと私は引くに引けない。ここで畳みかける。


「てか放課後マックいかない?」

「展開についていけない…」

「いや、思ったんだけどデリケートな話だし人の目がある場で聞くのはちょっとなって思って」

「それわかるのに何で自分は聞けると思ってるの?」


 ちょっと断られそうな雰囲気。いかん、ここでダメだったら私もう不木崎にアタックできる気がしない。今でも極限まで勇気を振り絞っているのに。陰キャなめんなよ……!


「……ダメなの?」

想定以上に断れる未来が恐ろしく、女のくせにやけに情けない声がでた。恥ずかしいがなりふり構ってられない。


「…………気晴らしにいいか」


……え?……嘘?


「ちょっろ」


あ、本音出ちゃった。


「おい、聞こえてるぞ。行くの辞めるぞ」

「嘘やん!ふっきー」

「似非関西弁やめろふっきーやめろ」


 まさかのOKにクラスメイトがわめき立つ。正直私も頭が沸騰するほど熱くなっている。今は私の顔ではなく、胸を見ていて欲しい…!


 今まで数多の女子を振り続けてきた男とデートの約束をこぎつけたのだ。本人はそう思ってないかもだが。


 かくして、私こと城春は不木崎との放課後デートにこぎつけたのであった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



はじめまして。ひらめきと申します。

もし、気に入ってくれたら、レビューやいいね、小説のブックマークを頂けると大変モチベーションになりますのでよろしくお願いします…。なにとぞ…。

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