プロローグ
目の前で、母だった女が動きを止めて絶命した。首が傾ぎ、長く赤い髪が自分の腕にかかる。
髪の色と相まって、その姿は『血に染まり手折られた華』のようにも見えた。豪奢な赤髪はこの女の自慢の一つであると同時に『無能を示す色』だったと思い出す。
「お母様っ!?」
姉だった人物の悲鳴が聞こえる。他にも、父だった男と兄だった男からも似た悲鳴が聞こえた。
己の手で首を絞め殺した女の顔を見る。絶望から何かを悟ったような顔をしている。
絶命の直前まで謝罪していたが、それが本心から来るものなのか、命乞いなのか分からない。
散々『何故産んでしまったのか』、『どうしてあの時の高熱で死ななかった?』と自分を蔑み罵って来た女の最期は、自分から見ると見っともなく、醜悪だった。
謝罪の意味は最後まで分からなかった。
でも、それ以上に『己の母親だった人物を殺して何も感じない』事に驚いた。過去一度も『己の親を手にかけた事はない』にも関わらずに。
骸となった女の体を正面に投げ捨てる。
正面から悲鳴が響く。視線を向ければ、姉だった女が泣いている。
その後ろに、七年振りに見る男の顔が有った。険しい表情をしている。何故ここにいるのだろうと思った。
この男との出会いが色んな意味で始まりだったのだろう。
短いですが、プロローグです。
今回は書いていて、いくつかに分けた方が良さそうと感じ、いつもと違った形での投稿になります。
のっけから『アレ』な展開ですが、最後まで読んで頂けるとありがたいです。