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第8話 きっかけ

〜前回のあらすじ〜

やっと町へ!幻想的な光景に驚く。魔物の解体をする技術の必要性を感じた。


<???視点>


「テメェ、何様のつもりだ!他人の金をパクりやがって!」


「ご…ごめんなさい…。もう、許し」


 ボコォッ!


「謝って済むなら裁判は要らねぇだろ!」


 本日何度目になるかも分からない殴りを幼い子供に入れた。


 既に目の周りは青紫色に腫れ上がり、鼻や口からは止めどなく血が流れている。


 だがそんな事は関係ねぇ。こいつが俺の金を奪った以上、2度と盗みができない体にしてやるだけだ。


 執拗になぐり続けていると、生き絶えたのか言葉を発しなくなり、手足から力も抜け、だらりとしている。


 知り合いだったのか、物陰から見つめる孤児が居たものの、ジロリと睨みつけると慌てて逃げていく。


 自分の財布は取り戻したが、クソガキは他の人間にもちょっかいを出していたらしく、衣服の中からは他に3つほどの財布が入っていた。


 だがどれもせいぜい銀貨数枚しか入っていない。


「ったくよぉ。しけてんじゃねぇか!」


 死体をゴミの山に放り捨て、懐から最後の向心薬に火をつけ、吸い出す。


「全く、何で俺がこんな生活しなきゃならないんだ」


 思えば酷い人生だな。俺は騎士家の長男として生まれ、幼少期より武術や馬術、それに魔法の鍛錬をして育ってきた。


 騎士学校の同期の中でも比較的優秀な成績を治め、両親からは騎士の花形である竜騎士になれるのではと持て囃されるほどだった。


 まさにこの世は俺の為に用意されてるのでは無いかと思うも束の間、人生は暗転していく。


 俺が12歳となり、これから騎士見習いとして働き出そうという時、事件は起きた。


 騎士団の幹部であった親父が処刑されたのだ。


 理由は国家反逆罪だが、騎士道精神溢れる親父がそんな事をするはずがねぇ。


 真実を知る為、情報屋に調査させた所、やはり冤罪だった。


 丁度その頃、領主が不治の病によって死亡、代替わりしたわけだが、いくら元々戦争で負傷して弱っていたとはいえ、余りに突然の出来事に一部では暗殺説が囁かれていた。


 実際、領主の地位を継承したのは前領主の弟だったんだが、2人には領地の経営の方向性に違いがあったらしく、他にも複数の確執を抱えていたようだ。


 そんな中、現領主は前領主に煙たがられた連中と結託、前領主と親しい人間の粛清を開始した。


 俺の親父もそれに巻き込まれただけで、無実な事には変わりない。


 夫の処刑にショックを受けた母は病に倒れ伏し、すぐにあの世へ旅立ってしまった。


 他の兄弟達は幼いのを理由に孤児院へ引き取られてしまい、独り身となった俺は持ち前の身体能力の高さや、使用できる魔術の多さを活かして、冒険者として働くことを決意する。


 俺は当初、家族を失った悲しみに打ちひしがれながらも、これからの人生を楽観視していた。


 何しろ俺は元竜騎士候補なのだ。騎士になれずとも必ず高名な冒険者として成り上がってやる!


 だが結局は何年経っても、名を馳せるどころか碌にパーティを組む事すらできなかった。


 考えれば当然だ。ただでさえ冒険者ギルドは排他的な組織だというのに、力はあるといっても言葉の節々に傲慢さの見られる、所詮は10代前半の青臭いガキでしか無い俺はすぐに嫌われてしまう。


 追い討ちをかけるように、俺が粛清された貴族の子だから関わると衛兵に突き出されるといった噂が拡散、最終的には空気のように居ない人物として扱われた。


 次第に冒険者として活動する意欲を失っていき、生活の殆どをゴブリン狩りと副業をして過ごす日々を送り始める。


 ゴブリン狩りは気楽で良い。ただでさえ雑魚なのに繁殖力の高さや、夜行性で眠っている人間を拐う習性の為か、一部の無知な市民の間で拐った人間の女を孕ませるなんていう迷信がまことしやかに囁かれているからだ。


 最初に聞いたときはあまりに荒唐無稽過ぎて、腹を抱えて笑っちまったが、底辺冒険者としては討伐依頼が増えるので有り難い。


 副業に関しては、人間や魔物の死体処理に娼館のスタッフ、更に町の清掃なんかをやっていた。


 どれも冒険者や傭兵以上に市民からは嫌われ、差別されている仕事ばかりだ。


 しかし、なり手が少ない事が原因で報酬は悪くなく、同様に軽蔑されている同業者達も仲間意識が強いので、次第に友人も増え冒険者をやっている時よりも居心地は遥かに良い。


 長い間そんな日常を過ごしていたある日、仕事を終え、いつも通りに賎民用の居酒屋でエールを飲んでいると、


「これはこれは、リーシュの旦那じゃ無いですか。景気はどうですかい?」


 ナーバフと呼ばれている男に声を掛けられた。


 中央人らしく少し褐色気味の肌に薄汚いチュニックやズボンを着ている。


 ストレスと運動不足、安い穀物ばかりに偏った食生活の為かでっぷりと肥え太り、額から脂汗を垂らした醜い男だ。


 だがこいつは1人でいると酒に付き合ってくれたり、依頼に失敗して金に困った時助けてくれたりと意外と気の利く良い奴でもある。


「最近はまあまあだな。おかげさまで無難に生活できてるよ」


「それは良い事ですわぁ。それでも何か悩みでもあればあっしはいつでも乗りますぜ」


「悩みねぇ。強いて言うなら昔オークキングに遭遇してな、怪我を負いつつも何とか町に逃げ込めたんだが、治癒術師に見せる金がなくてよ、傷が癒えても骨が変な方向に曲がったせいで左腕が偶に痛む位だ。利き手じゃ無いからあんま関係ないが」


「ほう。それならこんなのがあるんですが、一つどうですかい?」


 ナーバフはズボンのポケットから小袋を取り出すと、中を見せてきた。


 内部には小麦粉のような白い粉末が入っている。


「何だこれは」


「兵士なんかが使用する精神安定剤何ですが、鎮痛剤の効果もある薬ですぜぃ」


「幾らだ?」


「へへへっ。旦那とはいつも懇意にさせていただいてるんでね、今回はお試しとして無料で差し上げますぜ」



 ◇



 数日後、娼館で金を使ってしまい、速攻で金を稼ぐ必要のあった俺は白い粉を水に溶かして飲んでみた。


 少しやばいかも知れないとも思ったが、ナーバフが精神安定剤と言っていたのと、副作用が強いようならば直ぐに止めれば良いと思ったからだ。


「ア、ア、ウワアァァァッッーーー!!!」


 薬の効果は絶大だった!薬が胃液に流れ込んだ瞬間、今まで感じたことのない爽快感が全身を駆け巡り、ブロードソードを抜刀すると、そのままゴブリンの集落へ駆け込む。


 通常、集落にはゴブリンロードの他、数体のホブゴブリンやゴブリンメイジなんかがいるが、今の俺の敵じゃねぇ。


 入り口にいた粗末な槍を持ったゴブリンをぶっ殺すと、そのまま近くにいたホブゴブリンの首を跳ね飛ばす。


 ファイヤーボールと数本の矢が飛んでくるも、跳躍して躱すとそのままゴブリンメイジとアーチャーの前に躍り出た。


 護衛していたゴブリンウォリアーが駆けつける間もなく、俺は彼らの前を通り過ぎざま、首に斬撃を与えていく。


 ゴブリンウォリアーが追いつき、錆び付いた小刀で襲いかかってくる。


 ブロードソードで横にいなした後、反動で身動きのできないウォリアーの頭をかち割った。


 先程傷つけたゴブリンメイジ達にとどめを刺しつつ、周囲の雑魚ゴブリンを斬殺していると、集落の奥からゴブリンロードが2体のゴブリンメイジ及びホブゴブリン、更には無数の雑魚ゴブリンを従えて襲いかかってきた。


 ゴブリン共に包囲され、逃げられなくなるも俺は構わずゴブリンメイジへ突撃する。


 初めに厄介な後衛を始末してやろうと思ったからだ。


 ゴブリンメイジの土魔法による石礫とアーチャーの矢の雨が降り注ぐが、防御術式を発動、全て弾く。


 ゴブリン側は突然の魔法の使用に対応が遅れ、慌ててホブゴブリンが石斧を振りかぶってくるも、首を狙った水平な一撃であるのでスライディングをして避ける。


 そのままゴブリンロードの股の間を通り抜け、2体のゴブリンメイジに氷魔法アイスジャベリンを突き刺していく。


 激怒したゴブリンロードが巨大な大剣で俺を真っ二つにしようと切りかかってくるが、ブロードソードで受け止め、弾かれるようにして回避する。


 続いて氷魔法アイスニードルを連発、ゴブリン共は生き絶えて行った。


 しかし、ロードに関しては右目が潰れただけで大した効果が無い。


 風魔法で加速、ロードの死角に回り込んで斬りかかる。


 だが魔物の勘なのか、素早く大剣を振り下ろされて撤退を余儀なくされた。


 ロードが再び大剣を振り上げるのを見て、小手へ打ちつけるも深くは切り込めず、脇腹へ蹴りを入れられてしまう。


 俺が(うずくま)った所でゴブリンロードは醜悪な笑みを浮かべるが、逆に俺はにやりと笑い返してやる。


 その瞬間、ゴブリンロードの足元から大きな火柱が溢れ出し、ゴブリンロードを焦がしていく。


 俺の隠し球、火魔法ピラー・オブ・ファイヤーマインが炸裂したのだ。


 戦いながら魔法を発動し、対象を魔法の効果範囲内に誘き寄せる必要のある、難易度の高い術だが多くの魔力を込めれば威力は絶大だ。


 肉の焦げた匂いが立ち込めるも、ゴブリンロードは死ななかったらしく、皮膚が爛れながらももがき苦しんでいた。


 そんなゴブリンロードに対し馬乗りになって顔面を殴り付けていく。


(勝った!遂に1人でゴブリンの王を倒したぞ!これが元竜騎士候補の実力だ!)


「ゲヘヘヘ!アハハハハハァァァ!!!」



 生き残ったゴブリン共は恐れをなした様子で集落から逃げていった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 破天荒な粗筋に惹かれて読みに来ました。 ストーリーはかなり丁寧な作りをされていますね。事情/背景説明から入り、視点変更も読者を置いてけぼりしないように気をつけているようです。 情景や風…
2020/03/21 08:25 退会済み
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