第4話 遭遇
生きるのを諦め、目を瞑っていると
「ヴガァァァァァァァ!!!」
洞窟中に喧騒が鳴り渡り、ニーナは剣を振り下げるのを中断する。
「総員、警戒なさい」
私も思わず目を見開くと
「ヴヴヴアァ…ヴヴァァッ!!」
そこには黒髪に赤黒い目をした、只人で言う所の東方人といった容姿で、蝙蝠の様な翼をはやし、更には犬歯と舌を長く伸ばした男が明らかに正気を失った状態で佇んでいた。
「狂人化した吸血鬼だ!早く仕留めろ!」
「ヴアガア!ヴヴゥゥゥゥッ!」
1人の兵士がそう叫ぶも、それより早く男は別の兵士に飛びかかる。
襲われた兵士は咄嗟に槍を突き出し、肩に突き刺すも男は構わず兵士の首に噛みつき血を啜りだす。
「貴様、イワノフから離れろ!」
先程叫んだ兵士が魔法で火の矢を生成し、動きの止まった吸血鬼に対して投擲する。
それを合図にして他の兵士も吸血を止めさせる為に槍を突き刺していく。
「ヴガァァァァァァァ!!!!」
男は再び叫びだすと、力づくで身体中に刺さった槍を引き抜き、その一本を手で掴み跳躍し、ニーナに飛び掛かる。
しかし防護術式を展開され槍は弾かれてしまい、
「これでも喰らいなさい」
ニーナの飛ばしたファイアーボールが頭に炸裂、私の近くに倒れ込み、そのまま崖下に落下してしまう。
「ヴヴァァァッッ!!!」
「え?」
その時必死に落ちまいとしたのか男は私のドレスの端を掴んだ為に
「キャアアアアアーーー!!!」
私まで転落する事になったのだった。
◇
<???視点>
「@vngmtesdvdusergntm!!!」
やけに騒がしいな。俺はもっと眠っていたいというのに。
「jnjnvesetxjhsktdvmnvmvmvo!!!」
というか何で俺は眠っていたんだ?確かゾンビと戦っていた時に飢えに苦しみ、頭を殴られた衝撃で正気を失い、その後は血を求めて洞窟内で暴れ回ったはず。
ガスッガスッ
「痛い」
頭を蹴られ、うつらうつらとしながらも目を開けると
「ldvmvpmwvdvdmijcadoeg!!!」
そこには周囲に光の球を侍らせつつ、俺の頭を踏みつけながら理解不能な言語を発する、薄紫色のドレスを纏った少女がいた。
空色の瞳に薄紫色の髪をサイドテールにしたアーリア系の顔つきだが彫りが深い訳ではなく、どこかあどけなさが残っている。どちらかといえば可愛い系だろう。キメの細かな白い肌につり目で胸も出ている為、下からのアングルだと目のやり場に非常に困る。
『おい、聞いてんのか蝙蝠野郎!』
突然脳に直接語りかけられる様に脳内に声が響き渡り驚く。
『おい、聞こえてんのか!』
『ああ、大丈夫だ。聞こえてる。それよりここは何処で君は誰なんだ?』
『ここはアルバン王国とマリューシャン王国の間にある海峡下のトンネルよ。私はメア。追手に殺されかけてる所を貴方にそこの川に突き落とされたの。あと少し魔力が足りなければ溺死する所だったわ!』
メアと名乗る少女の指差した方向に目を向けると、確かに流れの速い川が流れていて、更には俺とメアの全身がずぶ濡れなことに気づく。
(もしかして川から引き揚げてくれたのか?)
もしそうなら礼を言うべきだろう。
『そんな事より貴方も早く名乗りなさい!それと暫くは私の下僕になって貰うわ』
『俺の名前は秀貴だ。秀貴・杉原。それと下僕と言ったけれどどういう事だ?』
『脇腹』
『え?』
『脇腹よ。良いから見てみなさい』
そう言いつつ、メアが踏みつけていた頭を解放したので着ていた服をめくる。
すると右の脇腹に魔法陣が刻まれ、薄赤く発光していた。
『立ち上がれ』
何だ⁉︎身体が言うことを聞かず勝手に立ち上がった⁉︎
『本職では無いから折角刻んだ奴隷紋もその内消えてしまうでしょうけど初めてにしては良くできてるわよね?』
『ああ、確かに凄いな』
そう言いつつ身体の主導権を奪われている事実に内心焦りを感じながらも、少しでも多くの情報を得る為、脳をフル回転させる。
『3つほど聞きたい事があるんだがいいか?』
『何を聞きたいのかしら?』
『まず最初に俺の事を蝙蝠野郎と言っていたけれど俺と同じ姿をした人と会った事があるのか?』
『魔族と吸血鬼の領土はかなり離れているから会ったことは無いわ。でも特徴位なら知識として知ってる。王都には亡命した一族が暮らしてると聞いた事があるけれど生憎私は生まれてから領都を出た事は無いわ』
『次に俺はアーモンド王国とアリューシャン列島王国だっけ?東欧に王国があるなんて聞いたことも無いし、ベーリング海に至っては行ったことも無いんだが、取り敢えず日本て国を知ってるか?』
『アルバン王国とマリューシャン王国ね。日本?全く聞いた事がないわ』
『ならアメリカ、ロシア、中国は?』
『何処よそれ。大国の名前や有力貴族の名前は知っているけれど、蛮族が勝手に名乗ってる小国の知識なんて無いわよ』
う〜ん。国際的に影響力の高い国の名前が伝わらないか。というか俺って吸血鬼ってやつだったのか。
まあ特徴を当てはめればまんまだしな。
これはあれだな、所謂異世界転移ってやつかな。トラックに何年も前に轢かれてから転移する奴なんざ俺くらいだろうけど。
『最後に追ってに追われてるという事は君と一緒に居ると命を狙われる可能性が高いのか?』
『それに関しては心配しなくて良いわ。これから只人の国に向かうんですもの。流石に只人の領土に侵入してまで追ってくる事はかなり厳しいはずよ。ただ余所者である私達の正体がバレると少し面倒な事になるかもしれないわ』
『大丈夫なんだろうな?』
『少なくとも貴方を簡単に肉壁として使い潰す様な事はしないわ。我が神に誓って』




