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第12話 装備

 謁見後の翌朝、宛てがわれた部屋で朝食を取っている最中に1人の天使が入って来た。


 黒髪ロングで碧眼の、白いローブを羽織った女性だ。


 中性的な顔立ちなのはミラルに似ているが、やや鋭い目つきな為生真面目そうな印象を受ける。


『ミラル様よりお届けに参りました。こちら貴族街への通行許可証となります』


 手渡されたのは金色の硬貨だ。500円玉サイズで表に文字、裏に足の長い鳥の絵が刻まれている。


 俺とメアに1枚ずつ渡されたものの、小さいから直ぐに無くしてしまいそうだ。


『外出する際は常に持ち歩いて下さい。紛失された場合、再発行に大銀貨3枚掛かるので気をつけて下さいね。また、サラゴサを離れる時は返却をお願いします』


 結構金取られるんだな。まあ、ぱっと見かなり精巧な作りだから許可証の製作にも金がかかるに違いない。


『確かジェリーさんと言ったかしら?』


『はい。申し遅れましたが、私はジェリー・ランバルドと申します。階級は一介天使です。この屋敷の管理人ですので、何かあればお申し付けください』


 それだけ言うと部屋を出ていった。




 ◇


 朝食を終え早速マジックバックに入った宝石類や武器を売る事にした。


 向心薬は教会側から仕入れるので、ナーバフとの約束はすっぽかしてしまう。


 悪いとは思うがわざわざスラムで危険を犯す必要性は低い筈だ。


 一般的な人間より力があると言っても、リスクある行動は油断せずに知識を仕入れてから行うべきだと思う。


 向心薬だって俺が吸血鬼じゃ無ければ、例の殺した男みたいになっていたからな。


 安く買い叩かれないよう、宝石店や武器屋に入る前に冒険者ギルドへ行く。


 遺跡や廃墟、沈没船などから稀に引き揚げられるお宝を査定する鑑定士がいるからだ。


 受付のテンガロンハットを被ったおっさんに宝石の鑑定を頼みたいと伝える。


 高価な品だからか別室に案内され、数分待つとふくよかな男性が入って来た。


 赤毛を短く刈り上げたおっさんで愛想が悪い。


 大銀貨1枚を払い鑑定作業に入って貰う。マジックバックから大きな武器類を取り出した時、驚いた様子だったが追加で大銀貨を握らせると大人しくなった。


 どこまで秘密を守ってくれるか分からないが、無闇に言いふらさない事を祈る他ない。


 ルーペや書物を駆使して鑑定して貰う事約2時間、漸く査定額がでた。


 内訳は


 宝石10個 大金貨7枚

 クロスボウ 大銀貨5枚

 大剣グレートソード(オリハルコン) 白金貨1枚

 大鎌デスサイズ(オリハルコン) 大金貨9枚に金貨5枚

 3~4メートルある騎兵槍(オリハルコン) 白金貨1枚に大金貨2枚


 となった。


 宝石は兎も角、クロスボウは凡庸品の改造品だからかそこまで価値は高く無いみたいだ。


 クロスボウは一発撃つのに、弦を目一杯引いてロック→矢を台座に乗せる→構える→引き金を引く

 といった手順を踏まねばならない。


 ロングボウなんかより扱い易く、城塞で隠れて撃つならいいかも知れない。


 だが野戦中にそんな呑気な作業はしてられない。なのでクロスボウも売却する事に決めた。


 貴重なオリハルコン製の武器は自分達が装備しようと思うも、グレートソードやデスサイズは素人には使いこなせない。


 腕力のある俺なら振り回す事はできたとしても、武術の素養が無いので、棍棒のようなシンプルな打撃武器の方が使い易い筈だ。


 騎兵槍に至っては完全に馬上戦闘を意識した構造となっている。


 一般的に歩兵が長い槍を振るう場合、槍で突くのでは無く叩いて用いる。


 突き殺そうにも柄が折れないようしなやかな素材で作られている事が多く、目標に当てにくいからだ。


 全身オリハルコン等の魔法金属製でも柄の部分は特殊な加工でしなやかになっている。


 幾ら鎧で守られているとはいえ、遠心力の乗った長槍の打撃を受ければ骨は粉々だ。


 しかし騎兵用の槍は手元に重心が偏っている為叩いても大した威力が出ないのだ。


 他に集団戦闘では密集して騎兵を牽制したりするが、2人旅をする中で都合良く槍を持った味方が登場する訳が無い。


 という理由から全て売却し、新しく装備を整える事に決めた。


 これだけの値段が付けば十分上等な装備が手に入るだろう。


 冒険者ギルドを出て、宝石店で売却する。


 売却額は大金貨7枚に金貨2枚となった。冒険者ギルドでの査定額より金貨2枚も多い。嬉しい誤算だ。


 いきなり大金が手に入って上機嫌のメアと一緒に武器屋に行く。


 鍛冶場が隣接されているのか、金属を叩く音が響き渡っていた。


「いらっしゃいませ」


 青髪をツインテールにした、背の低い女性に出迎えられる。


 恐らくドワーフだ。


『武器の売却と購入をしたいのだけど』


『了解しました』


 おお、流石貴族街の商店なだけはある。従業員も念話が使えるとは。


 武器の査定額は冒険者ギルドと全く同じだった。


 冒険者ギルドの鑑定人は武器や魔物の素材専門で、宝石類には疎かったのかも知れない。


 納得のいく金額なので売却を終え、次に新たな装備の購入を行う。


『やっぱりオリハルコンの武器が一番強いよな』


『そうですね。ミスリル以上に魔力を通し、アダマンタイト並みに硬い金属ですから』


『ん?オリハルコンとアダマンタイトの強度は変わらないのか?ならアダマンタイト製の武器で良いな。俺は魔法を殆ど使えないし』


『だとしても資金に余裕があればオリハルコン製の方がいいと思いますよ?ゴースト系統の魔物と遭遇しても、オリハルコンなら少ない魔力で敵を倒せますから』


『そうよ。武器に魔力を通すだけなら簡単だから、オリハルコンにしときなさい。遠慮しなくて良いわ』


(メアの財産で装備を購入するのに罪悪感はあるけれど、本人が良いと言ってるなら良いか)


『分かった。オリハルコンの装備を見せてくれ』


 様々な種類の剣や斧、槍を見ていく。だがどれもしっくりこない。


 どれを買おうか悩み、ふと視線を横にずらす。部屋の隅にさりげなく飾られた、風変わりな武器に目が止まった。


 鉄の棒に玉葱状の塊をくっつけたような、オリハルコン製の打撃武器だ。


 長さは1メートルちょっとだろう。


『これは?』


『ああ、それはメイスですよ。使い勝手は良いのですが、上流階級が購入する武器では無いので売れ残ってるんです。買って頂けるなら大金貨7枚で良いですよ』


 まじかよ。基本オリハルコン製ならどれも白金貨が必要な値段なのに。


 試しに振り回してみる。うむ。先端に重量があるだけあって使い易い。


 メイスって先端がブレード型なイメージがあったけど、色々種類があるんだな。


 正直、あまりカッコよくは無い。寧ろダサいくらいだ。


 それでも実用性は高いと判断して、メインウェポンにする事を決めた。


 他にもサブウェポンとして20本程のナイフに、革製のレザーアーマーを購入した。


 ナイフは投擲用のスロウイングナイフと呼ばれるタイプで、投げた時に切っ先が前を向くよう調節されている。


 ダガー型のハンティングナイフは刃が駄目になっているし、カービングナイフと折りたたみ式ナイフでは魔物に対して有効とは言い難い。


 レザーアーマーは耐火性に優れた、火鼠という魔物の皮でできているらしい。


 耐久性は大した事無いが、動きやすい上に破れたら買い換える予定だ。


 メアは同じく火鼠のレザーアーマーにオリハルコンの短刀を購入した。


 魔法が主体なだけに俺より安い買い物だな。


 しかし合計白金貨3枚半以上あった資金が一気に白金貨1枚半程度に減ってしまった。


 当分は金を使わないと思うが、これだけ高い買い物をしたんだ。しっかり仕事はこなすべきだろう。

天使分類


天使は5つの階級に別れている。


上から熾天使、智天使、座天使、権天使、一介天使


上級三体と呼ばれる熾天使〜座天使はほぼ神々と同じ権能を有する為、魔素の減少した現在の環境下では現界できず休眠状態にある。


休眠状態 : 魔素が無くなると神々は隠し世と呼ばれる空間で休眠状態に陥り、隠し世に移る直前の地が再び魔素で満ちるまで現界出来なくなる。


隠し世 : 詳細不明


権天使 : 殆どの宗教にて教会の上層部をほぼ独占。


一介天使 : 権天使の補佐、護衛等を行う。人数が多く、特権は所持していない。権天使の配下として戦争に参加する事も多々ある。

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