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鳳凰って知ってる?  作者: 刹那 連鎖
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ミラの過去?

もう無理だと諦めかけていたなかで一筋の光が、いやもっと全てを照らす大きな光が差し込んだようだった。

とても綺麗な容姿の女性が現れ、あの化け物じみた力を持つ相手を倒してしまった。

 目にも留まらぬ速さで移動し、軽々と敵を吹き飛ばす。その姿はまさに最強の名に恥じぬ力だった。

容姿端麗な女性がかの有名なミラ レヴィンドだと気付いたのはかなり時間が経ってからだった。

表舞台からいなくなってもう数年以上。巨人の轍の前衛であるミラの消息は分からなかった。どこで何をしているのか、その噂さえ一度も耳にしなかった。


アリア達のような世代は巨人の轍のような冒険者パーティに憧れて冒険者になった者も多い。そのためかこんな状況でもミラの戦う姿を目にすることができて、牢屋に捕らえられたアリア派の一行は感動を隠せずにいた。

 言葉にも出せず、ただただ彼女が戦っている姿を見つめていた。

 どうしたらあんな動きが出来るのだろう。どのくらいの修行をすれば敵の攻撃を読み切ることができるのだろう。

 不安と興奮が同時に襲い掛かってくるのは自分の才能の限界を見せつけられているから?

 到底辿り着くことはできない領域を見せられているようで少し悲しくなる。

 

 影を操る敵を下したミラは腰を抜かした状態のミィちゃんのもとに近づいた。

 傍から見ていて二人の間に不思議な空気が流れている気がした。なんというか誰も近付けないような、結びつきの強い関係性がそこにはあるような気がした。あくまでアリアが抱いた印象だが……


 そんな中で牢屋の上からドォンという音が聞こえたと思いきや、いきなり男性の声が聞こえる始末。新手の敵!?と思ったけどミラさんと話をしているみたいだし、違うと考えていいようだ。

 

 何をしたのか分からないが男の人のおかげで牢屋から抜け出すことができた。

 ホッとしてミィちゃんに近づこうとしたが、ミラさんと一緒に何やら話しているみたいだった。その時のミィちゃんの表情はアリアにも見たことにないもので、彼女とミラさんが親愛で繋がる関係なんだと理解するのは難しいことではなかった。


 そして突如として起きた洞窟崩壊現象。大規模な地震によって全てが崩れ落ちてしまった。最初は自然現象なのかなと思ったけれど、他の場所は無害で洞窟だけが崩壊したのを知って誰かしらが故意に起こした現象なのだと確信した。それが誰なのかは定かではないが、たぶん洞窟で襲ってきた敵の仲間だろうとアリアは思った。これはたすけてくれた男の人、名前はレイトさん。レイトさんも同意見だと言ってくれたから間違いないと思う。


 その後真相を聞きたいと思い、モラリアの町長ヒックスの自宅へと赴いたが、無人だった。家の調査をすると地下から隠し部屋が発見されたのだが、そこには人体実験がなされた確実な証拠が存在していた。

 思わず吐き気を催してしまいそうになるほどの悲惨な状況だったが、なんとか己を保つことができた。

 人の腕が綺麗な断面で切り取られていたり、首から下の胴体が丸ごと保存液に漬けられた状態で見つかったのにはショックを隠せなかった。

 レイトさんが言うには人形ドール開発のためらしい。

 アリアは人形ドールというものを見たことがない。職業ジョブ傀儡術師が戦闘で用いる武具として一般的には認識されているらしいが、それは人間の身体のどこか一部を使うような代物では決してない。鉄材や木材などの材料で作られるのが一般的らしい。

 ということはこの研究室らしき場所で作られていた人形ドールはそれとは一線を画すものだということだ。やはり何か自分達が知らない巨大な組織が関わっているようでならない。こんなことを一人の人間が勝手に行っているとは考えにくい。

 どちらにせよ、アリア達の手には余る問題であるのは間違いないだろう。



 ヒックスの家を後にしたアリア達一行はミラとミッチェルの二人と合流して、事情を話した。 

 これはレイトさんの提案だった。ミラさんの知り合いにはなんとあの帝国唯一の神位剣士であるサファイア ブルーバードがいるらしい。彼女は地位としては南地区の騎士隊長であるが、それとは比較にならないくらいの発言力がある。それも実力があるからに他ならない。帝国騎士最強という冠を持ち、ミラにも負けないくらいの誰もが見惚れる美貌も持っている最強の女騎士だ。帝国騎士総隊長も頭が上がらない存在らしい。

 そんな人に話が繋がるならば話は早いだろうとレイトさんが言ったからこそこうしてミラさんを交えて事情を話しているのだった。


「それは……よろしくない話ね。緊急に伝えるべき事案よ」

 少し考えこんだミラだったが、一度頷きを見せた。

「ミラさんはサファイアさんとお知り合いなんですよね?ならこの話を持っていてもらえないでしょうか?」

 代表してアリアがミラと話している。普通に話せているように周囲からは見えるかもしれないが、内心はドキドキが止まらなかった。

 だってあのミラ レヴィンドだよ?巨人の轍の前衛の中心的存在だよ?私は一応魔導士だから憧れるなら後方に待機している魔導士だろうけど、それでも憧れてしまうほどのカリスマ性と強さを誇る、それがミラ レヴィンドだった。

 だから噛まずにスラスラとこうして話をできている自分を褒めてやりたかった。


「ええ、何も問題ないわ。私自身はただの宿屋の主人だから無力だけど、サファイアに伝えることくらいは出来るからね。それくらいはさせてもらうわ」

 初めて見た時、まあそれもついさっきのことだったけれど、その時よりも柔和な表情が見れたので少しアリアの気持ちが和らいだというのはある。先ほど纏っていた空気は尋常ではないくらい冷たくて鋭くて怖かった。今は安心していられる。

 アリアはミッチェルに一度視線を向けた。ミッチェルがそれに気付くことはなかった。


「ありがとうございます!」

 アリア達一行は頭を下げる。彼らにしてみればこうして話を聞いてもらえるだけでありがたかったのに、頼みも聞いてもらえるなんて思ってもみなかった。

 ミラさんはまだ巨人の轍の時のミラ レヴィンドのままでアリアはとても嬉しかった。

 それからミッチェルを含めたアリア達五人はモラリアを後にし、石門内部へと戻っていった。





―――――――――――――――――――――




「あんた……何の職業ジョブなの?」

 真剣な目つきでそう聞いてきたミラの言葉にレイトは首だけを後ろに向ける。

 

 ゆっくりと歩いて宿屋に戻ろうとするレイトを一緒にサファイアのもとへと向かおうと誘ったミラが聞きたかったのはこの内容だった。

 職業ジョブが何なのか……洞窟での一件で大きな謎が生まれた。

 正直宿屋で会った時は気付かないくらいの小さな違和感だった。ただ洞窟で二手に分かれてから感じ取った異質な魔力にミラは冷や汗が止まらなかった。影を操る名前も忘れた相手に少し苦戦したのもそのことが頭にあったからだ。

 洞窟の最深部で発揮されたあの魔力、そしてこちらに近づいてきた時にも感じた魔力の質と量。

 異次元という言葉では言い表せない、なんというか……違う種類の生き物のような気がしてならなかった。あんな魔力量を肌で感じたことは一切ない。巨人の轍という冒険者パーティで活動していた時も優れた魔導士をたくさん見てきた。もちろんパーティにいたリリィといううちの魔導士も途轍もなく優秀な魔導士であったのは知っている。

 でも彼は、この目の前にいる存在はそんな優秀とかのレベルじゃない。

 人間ではなく神話の世界に生きる神獣や神人、魔神などの力を持つ……いやそれ以上の力を持っているのかもしれない。

 それはミラには分からない。私ごときには知覚すらできない規模の話だ。


 ミラは心の中で苦笑する。


 こんなにも自分がちっぽけな存在に思えたのは何時振りだろう。冒険者を始めたばかりの頃に帝国最強の冒険者の戦いを目の前で見た時以来かもしれない。

 だがレイトはミラの目の前で戦闘をしたわけではない。あくまでミラの敏感な魔力知覚の能力がそれを感じ取ったに過ぎない。それにもかかわらず、レイトに畏怖させられた。彼は、この若者は化け物だ。


職業ジョブ?何で?気になったのか?」


「ええ、あなたは明らかに異質。普通じゃない」


「普通じゃないって……言ってくれるね?なかなか失礼だな」

 と言いつつレイトは全く怒っている様子はない。むしろ面白がっているようだった。


「俺は魔導士だよ」


「違う。そんな低次元のレベルじゃない。魔導士レベルがあの影の牢獄に仕掛けられた錬成魔法を見破れるわけない。より高位の職業ジョブ……それに魔導皇や魔導神をも超える何かしか考えられない」

 ミラは自分でそう言ってからそんな職業ジョブの存在があるわけないと思い直した。

 しかしそうでないと考えられない。ミラの知っている魔導士の上位互換であり、最強の職業ジョブは魔導神だ。その職業ジョブに就いている人も知っているし、会ったこともある。一緒に共闘したこともある。でもこんな異質さを感じることはなかったし、使われた魔法の全てを見抜くなんていう芸当が出来ていたわけでもない。

 やはり上がある?私の知っている職業ジョブよりもさらに上が?


「ミラだったよな?俺の職業ジョブを知ってお前はどうするんだ?俺とやり合いたいなんて思っているわけでもないだろう?」


 そう言われてミラは押し黙る。確かに知ったところで自分がこいつと戦おうとは思わない。そこまでの血の気はもう数年前にどこかに置いてきた。

 だったら何故?その理由を考えてよく分からない。


「なんとなく気になったから?分からないことがあったら放置していたくないからか?……まあなんでもいいけど、敵対するかもしれない可能性が少しでもある相手に教えるほど俺は甘い人間じゃないんでね」

 

 その回答はレイトがミラの人知を超える職業ジョブに就いているのを肯定するものだった。しっかりと否定しないということはイエスだということ。ただ詳しく教えなければ問題はないと考えているのだろう。敵になる可能性が少しでもあるなら、か……それは心に響くほど良い教えだった。


「まあ俺が異質だと気付いたお前のの魔力知覚の能力は相当なもんだと誇ってもいいかもな。初めて言われたぞ、異質だってな」


「それはどうも。ちなみに私の職業ジョブは武闘家ね」


「教えてもらったからと言って俺のを教えるわけじゃないからな」


「ふ、期待してないわよ」


 南地区の駐屯地に着いたのはモラリアを出てから一時間のことだった。

 馬車でも片道五時間掛かる道のりをそれだけの時間で移動できるのはミラやレイトだからこそ出来ることだ。並みの人間には到底不可能な速さでの移動となる。

 まあレイトは瞬間移動の魔法があるため、わざわざ走って移動をする必要はないのだが。





 駐屯地の敷地に入っていく際にいた見張りの門番はレイトを見て、訝し気な表情を浮かべたが、同行しているのがあのミラ レヴィンドだと分かると見るからに怯えた様子を浮かべていた。硬直したままでレイトとミラを止めるようなことはしない。止めたらどうなるのか想像するだけで恐いなんて思ってそうな顔だ。

門番の男だけでなく、敷地にいた全ての騎士達は遠巻きにこちらを見ているだけで話し掛けてくる奴は一人もいなかった。


こんなんでいいのか?本当に、とレイトは思ったけどその心配をする役目は自分じゃないと思い直す。


建物に足を踏み入れ、長い廊下を右に曲がり、左に曲がり、真っ直ぐ進む。

見えてきた扉をミラはノックもせずに乱雑に開け放った。


「ん?なんだ、どうも足音の煩い奴が来たと思ったらミラだったか」


「どうやら元気してるみたいね。仕事中だった?」


「当たり前だろう。この時間までここにいるってことは事務仕事に終われてるってことさ」

サファイアは机の上にある資料を念入りに確認しながらペンで何かを記入している。


「それで私に何か用?」


「ええ、あんたの耳に入れてほしいことがあってね。私がここに直接来たってことの深刻度を考慮してほしいわ」


サファイアはペンを持つ手をピタッと止めて、じっとミラに視線を向ける。


「話を聞こうか」


サファイアは立ちあがり、対面で設置されているソファに座り直した。

 レイトとミラが隣同士、そしてその向かいにサファイアが座っているという空間は第三者的目線から見れば居心地の良いものではなさそうだった。


ミラはすらすらと詰まることなく今日有った話をしていく。

サファイアはその話をじっと聞き入っていた。途中で質問を挟めることもなく、ミラが話したことをスポンジのように吸収しているようだった。


話を聞き終えるとサファイアはミラから目を離し、ふーっと大きく息を吐き出して背もたれにもたれかかる。


「人体実験の話、俄には信じ難いな。いや信じたくないと言った方が適切か。帝国は問題が山積みだ」


「至急調査してもらえる?」


「しないわけにはいかないだろう。早急に対応する。皇帝陛下には私から報告しよう」

ミラは感謝の意を示すのに軽く頭を下げた。サファイアは香り立つコーヒーを用意して二人の前にそっと置いた。


「にしても面倒事に首を突っ込むなんて昔のお前が戻ってきたようだな」


「ちょっといろいろとあってね。その話は今度する」


「しかもあなたまでいるとはね。宿の店主と宿泊客が揃って来るとは思わなかった。どうしたの?何か気になることでもあった?」


「いや個人的な用があってね。ミラとは違う理由さ。たいして重要じゃなかったから別にいいんだが」


「そう、じゃあ早速動きますか。ルイズ!!」


「うっす!隊長、お呼びっすか?」


サファイアが名前を呼ぶと時間を置くことなく、部屋の扉が思いきり開けられる。

現れたのは二十前後の年齢の青年だ。深い青色の髪の毛はサファイアの髪色とそっくりだった。


「モラリア外れの洞窟と町長ヒックスの自宅の調査を始めなさい。私もすぐに行く」


「了解っす。でも隊長、地区の守護は誰が?」


「ヴェンとリュートに任せる。二人なら大丈夫だろう」


「まあちょっと心配っすけど、他にいないし、仕方ありませんね。んじゃ俺は先行ってますんで」


「ああ、頼んだ」


ルイズと呼ばれた青年騎士はサファイアに対して先輩のような態度で接している。もちろん先輩というのは間違いではないのだろうが、実質帝国騎士ナンバーワンの人に対しての態度ではない。それくらいルイズという青年が大物だということか?

ルイズはサファイアに手を振りながら部屋を出ていった。


「なかなか面白い子ね。サフィー、あんたってああいう感じがタイプなの?」


「別にそういうわけではない。ただ彼は私に対して恐れを抱かないからな。接しやすいし、話しやすい。部下としていると安心するんだ」


「お気に入り、なのは間違いないようね」


「その言い方はどうかと思うが、まあ否定はしない」


「サフィー、あんた丸くなったね」


「それはこっちの台詞だ、ミラ。角が取れて、まん丸になったのはお前の方だろう?」


「お互いに年を取ったってことね」


と言っても二人とも三十代前半だろう。まだ年老いたとは言えない年齢だ。ちなみにレイトの年齢は二十六。二人よりは年下になる。


「一ついいか?」


「何だ?」


「俺いる?」


「この件に関していえばこちらに任せてもらおう。ただシラヌイ様への面会に対する件があるだろう?」


「おお、話してくれたか?ってかもう返事が?」


「面会の承諾をもらえた。シラヌイ様も早急に会いたいとのことでな。明日の午前中はどうかとのご提案だが、どうだろうか?」


「ああ、それで頼む。ありがたいな、こんなに早く。正直もっと時間が掛かるものだと思っていた」


内心では素性も分からない相手と面会などしないのではないかと思っていたし、話が通る前に下の人間に拒否されるだろうとも思っていた。

やはりサファイアを通したおかげというのはあるかもしれない。


「私も少し驚いたよ。まさかシラヌイ様がこんなにもすぐ即決するなんてね」


「明日の午前中にどこで会うんだ?」


「中央区の暁の小鳩亭って名前の喫茶店だ。まあ場所は今教えなくても大丈夫。明日の朝、私が直接迎えに行くからな」


話によるとどうやらその「暁の小鳩亭」はシラヌイが行きつけにしている喫茶店らしく、そこでホットコーヒーを飲むのが一日の始まりらしい。その時間で会うのが許されたというのだから驚きだ。


「わかった。じゃあそのまま宿に居ていいってことだな」

部屋の時計に目をやるとその時刻は九時を過ぎていた。

レイトは自然と睡眠を取れる時間がどれくらいかを計算していた。宿に戻って湯浴みしてから寝る準備してっとなると一時間は考えといた方がいいだろう。ということは

「八時間くらいか?」

六時起きだとしたら八時間。うん、十分だ。


「八時間?」


「あ、いや何でもない。七時くらいに迎えに来てくれるのか?」


「いつもは七時半くらいに店に行っているようだから、そうだな、うん、それくらいの時間だと思ってくれればいい」


「わかった。いや何から何までありがとう。助かるよ」


「問題ないさ。さて私もこれから忙しくなるんでね、ここら辺で失礼させてもらう」


「サフィー、頼んだよ。腕っぷしが欲しいってなったらいつでも言って」


「ああ、その時は頼む」


三人は同時に立ち上がり、部屋を出ていく。

駐屯地の門前でサファイアと別れて数十分でミラの宿屋まで辿り着いた。

レイトはそのまま部屋に戻り、ベッドにダイブした。

湯浴みしないと、と思いつつも体を動かすのが怠い。ベッドの誘いはどんな魔法の効果よりも強烈だ。


レイトが本来このアルキメデス大帝国に来た理由はシラヌイに会って魔神について聞くこと。できれば特徴や居場所を教えてもらえると助かるが、それは明日次第だろう。

その目的から大きく外れ、色々と面倒事に首を突っ込んでしまったのはちょっと反省している。でもそのおかげでサファイアに出会い、シラヌイへの面会にこじつけたので結果オーライではあったのだが。


「そういやあの洞窟崩れちゃったからなあ。あの店の人に何て言おうか」

夢見心地になりながらも洞窟で出会った新米冒険者達のことを考えていた。

彼らの実力はまだまだだった。戦闘している姿を見たわけではないが、普段の動きの硬さがそのまま出てしまっている感じだった。


「まあ俺のせいでもないから、別に気にする必要もないか」

 気付けばレイトは眠りについていた。ぐっすりと深い眠りで七時間。

 朝の木漏れ日がカーテンの隙間から差し込み、レイトの顔に当たることで目を覚ました。

 夢を見ることもないくらいあっという間の七時間だった。正直眠い……


 部屋に備え付けの時計に視線を向けるとちょうど六時を過ぎるところだった。

 部屋から出て、一階に向かうとシェイラが食堂で仕事をしていた。

「あ、おはようございます」


「おはよう」

 なんか良い。こういうのが夫婦なのだろうか。経験がないから分からないが、不思議とシェイラが台所に立つ姿は落ち着くものだった。

「早いですね。まだ六時ですよ?」


「ああ、ちょっと用事があるからね」


「それ大切な用事っぽいですね?その前に少しだけ腹ごしらえしておきますか?」


「お、朝食?いいね、ありがたい。頼むよ。あ、その前に湯浴みしたいんだけど、どこ行けばいいんだ?」


「この扉を抜けて突き当たりを右に行きば風呂場があるのでそこでできますよ」


「お、そうか。んじゃ、まず湯浴みしてくるわ」


「はい、その間に準備しておきますね」


温かい湯を自由に使える宿屋なんて聞いたことがない。大抵は湯一杯5カパーと決まっている。これもやはり高い宿泊費のおかげだろうか。

温かい湯で体を洗い流し、さっぱりしたところで食堂に戻る。

約十五分の間でシェイラは朝食の準備を終えていた。

早起きは三文の徳などと言われるが、レイトはそれを実感していた。この何気ない時間と宿の朝の静けさも好感が持てた。


「さあどうぞ、召し上がってください」

レイトの正面では茶碗を洗っているシェイラの後ろ姿が見える。飯も美味い。

とそんなことを考えているともう六時半を過ぎているに気づいた。やばい、のんびりしすぎた。


レイトはシェイラが用意してくれた朝飯を数分で平らげた。


「そういえば昨日は大変だったみたいですね」


「ミラに聞いたのか?」


「いえ、昨日のミラの表情を見たら何となく想像がつきました。あんな顔は冒険者の頃にしか見たことがなかったので」


レイトでは気付けないくらいの変化なのだろう。実際表情に変化があったようには感じ取れなかった。

長年一緒にいて、尚且つ姉であるからこそ察することができるのかもしれない。

そういった血縁を持ち、自分のことを理解してくれている人がいるという感覚はレイトには遠い記憶となっている。

幼少期まで遡らないといけなくなるほど昔のことだ。

だが鮮明だ。忘れることは決してない。大切な思い出だ。


「詳しくは聞かなかったけど、あのミッチェルって子……彼女はミラの娘さんってことだよな?」


「はい。ミッチェルはミラの一人娘です。ただミッチェルが小さい頃に離れて暮らすようになりました。ミッチェルも母は死んだと教えられていたみたいです」


「そうか……」

 確かに二人が対面した時のそれぞれの表情は不安と喜びが入り混じった感じだった。それは敏くないレイトにも分かった。

 

 シェイラは少し迷った様子でミラの過去について話し始める。






ミラがまだ冒険者の頃です。巨人の轍という冒険者パーティは帝国最強と呼ばれ、多くの信仰者を生み出しました。

信仰者は巨人の轍ならばどんなモンスターも、どんな闇パーティも相手じゃないと信じてやまない人達のことです。

私もパーティメンバーの一員でしたから当時のことは鮮明に覚えています。彼ら彼女らの妄信的な態度は少し苦手でした。

でも私を含めた他のメンバーも私たちに勝てない存在なんていないと自信を持っていたのは否定しません。それくらい負けを知らなかったんです。


ミラとミッチェルが人生を分かつことになった出来事の話でしたね、申し訳ないです。

二人がそうなったのはアンノウンという大規模闇パーティが関係していました。

今も帝国に潜み、構成員を増やし猛威を振るっているそのパーティに巨人の轍は敵わなかった、そう言うべきでしょう。

アンノウンの構成員ヘルスピアという人物が全ての元凶でした。


星と満月がまるで絵画のような美しさで地上を照らし出していた夜でした。

「もう逃げ場はない。観念しな、ヘルスピア!」


「ハンマーヘッド、先行しすぎだ!相手はアンノウンの幹部の一人、油断するなよ!」


「ベルトリウス、分かってるよ。こう見えても結構冷静なんだぜ、俺は」


巨人の轍は全員で十人います。ですがその夜はリーダーであるベルトリウス、前衛のハンマーヘッド、ミラ、そして後方支援を担当する私の四人で行動していました。だからこそ皆慎重になっていたと思います。決して油断などしていませんでした。でも……


「エポナ墓地……う~ん、素晴らしい光景だっ」

 エポナ墓地は帝国の皇族が眠る神聖な場所であり、一般人が亡くなっても決して入ることはできない墓地です。その場所に見惚れたようにヘルスピアは佇んでいました。


「ヘルスピア!もうここまでだ。お前に逃げ場はない」

 ベルトリウスを中心にして、前衛にミラとハンマーヘッド、後衛に私が位置取りしました。


「もとより逃げる気などさらさらないっ。我はこのエポナ墓地を訪れるのが日課なのだっ」


「そのよく分からねぇ日課は今日で終わりだってことは自覚してんだろうな?」


 ハンマーヘッドが身の丈とほぼ同じくらいの大斧を装備してヘルスピアと対峙しました。ミラも、ベルトリウスも準備万端で、私もいつでも支援することができる状態でした。


「帝国最強と謳われる巨人の轍に狙われるとは我も大きくなったものだっ!しかし……どうしたものか、強者四人を相手にして生き残れるかどうか……うむ、我には難しいか?」


「独り言が多い奴だな!」

 

 私はハンマーヘッドに攻撃、防御、素早さを数段階上げるアクト スウィルを行使しました。

 大柄でありながらハンマーヘッドはミラに次ぐ移動速度を持つので、付加魔法を加えればミラをも超えるスピードで移動することができる。これはいつも私とハンマーヘッドで組む時の初手の攻撃です。

 大抵の相手はこれだけで倒すことができますが、相手はヘルスピア。そう簡単には行きませんでした。


 ハンマーヘッドはヘルスピアの目の前に移動し、大斧を振り下ろした。

「速いっ。でもその程度では我は倒せないっ」


 ハンマーヘッドのあの一撃をいとも容易く躱すことができる相手。やはり気を抜いていては足元をすくわれると思いました。

 ベルトリウスも魔法を行使し、ミラもすぐに駆け出した。

私だけが全ての位置を把握することができます。ベルトリウスをサポートするのも私の仕事でした。

 ミラ、ハンマーヘッド、ベルトリウスの三人で動いた結果、ヘルスピアを追い込み、傷を負わせることはできました。


「痛い痛いねっ、本当に。殺す気でいるねっ、本当に。でも我の能力を知らずによくこんなに攻められるねっ」


 その発言には驚きを隠せませんでした。

 ヘルスピアの情報は全て揃っているはず。職業ジョブも死霊術師と分かっているし、使用する魔法や特技もあらかた頭に叩き入れている。それでもまだ知らないことがあると?

 彼の移動速度が予想を遥かに上回っていたことを考えるとまだ何か隠されている能力があるのかもしれない。


「ミラ、ハンマーヘッド、そいつから離れて!」

 私の言葉に二人とも何故!?とも言わず、すぐにヘルスピアから距離を取る。

「異能力持ち……まさかそんな……!」


 魔法でもなければ特技でもない……だとしたら異能力しかない。ただそんな情報があるならば耳に入ってきてもおかしくないはずなのに。


「無意味だっ。距離を取っても我の異能は防げない。血脈の殺刃ブラッディ エッジ


ハンマーヘッドが持っていた斧に付着していたヘルスピアの血液が分離し、硬質化した血の刃へと変形した。蛇のように奇怪な動きをしながら血の刃は襲いかかってくる。


「くっ」


切り傷を負いながらもなんとかして耐え抜いた二人に私は治癒魔法を行使しました。けれども傷は治らず、血は流れたままでした。

「血が止まりません!これは!?何で!?」


「呪血判。我の血で傷を付けられた者は呪われるっ」


それがヘルスピアの異能力。呪いとは具体的にどういう類いのものなのかは明かしてこない。

 血液の流失が止まらない?これが異能の力?

「ミラ、ハンマーヘッド、解呪の魔法を掛けます!」


「……ええ!ベルトリウス、少しの間時間を稼いで!」


「ふう、けっこうな無理難題だぞ?それ。リーダーは大変だ」

小言を言いながらベルトリウスは前衛へと躍り出て、素早く魔法を行使する。

 ベルトリウスの戦闘力は巨人の轍のなかでは高くない。下から数えた方が早いくらいだが、前衛、中盤、後衛の全ての役割を卒なくこなすことができる万能型としてパーティ内で重要な役割を担っている。

 私としてもベルトリウスのバランス感覚はパーティになくてはならないものだと思っています。

 

 ベルトリウスがヘルスピアと交戦しているうちに二人に解呪の魔法を行使しました。

 予想よりも容易く解ける異能の呪術だったので、解呪はすぐに成功しました。


 なんとかベルトリウスは持ち堪えており、二人の再加入によって形勢はこちら側に傾きました。

 ヘルスピアは間違いなく不利だと分かっていたはずです。でも……それでもヘルスピアの表情に焦りや諦めは浮かんでいませんでした。余裕すら感じているようで、不気味な感じがしました。


 三人の攻撃で追い込まれたヘルスピアは抵抗することもなく最後はミラの手で葬られました。


 その次の日、ニヤリと笑みを浮かべたままの顔で死んでいるヘルスピアの遺体を拘束して皇帝の眼前へと持っていった後、魔炎で焼かれ、ヘルスピアの肉体はこの世から消えました。

 私たちはアンノウンの幹部の一人を倒すことに成功したのです。

 これは闇パーティ、アンノウンを滅ぼす足掛かりになる!そう思いました。

 でも…………ヘルスピアの呪いはこれでは終わらなかったのです。



数日後、ミラに用があった私は彼女住む自宅を訪れました。中央区にあり、豪邸とは言えないまでも十分な広さがある一軒家がミラの自宅でした。

当時のミラは結婚をしていて、子供もいました。その子供がミッチェルです。私が訪れたのは夕方過ぎで、ミラとその夫、そしてミッチェルの三人が在宅しているものだと思っていました。

けれど呼び鈴を鳴らしてもいっこうに出てきません。

何度か鳴らしましたが、結果は変わりませんでした。


ただ僅かに室内から漏れる明かりと突然聞こえてきた子供の泣き声で異変に気が付きました。

私は家のドアを蹴破り、中に入りました。

泥棒でも入ったのではないかと思ったんですが、物は散乱していなかったのでその心配は杞憂なものでした。

しかし明かりがついていた部屋に入ると想像よりも奇怪な光景がそこにはありました。


ミラが心ここに非ずの状態で子供の前に立っていたのです。

それだけならば違和感を抱くことはありませんでした。しかしミラの両手が血だらけになっているのを確認した時にこれは何かがおかしいと悟りました。

しかもミラの夫は部屋の隅で壁に寄りかかったまま座り込んで動かなくなっていたのです。

血だらけになった状態で一目見ただけで死んでいると分かるくらいでした。


「な……これは、何?何が起きて……」

 呼吸もままならないほどの驚愕はミラの表情を見たときに襲ってきました。

 心ここにあらずといった感じで意識すら無くしているようでした。

 自らの夫を手にかけて、次は子供を狙おうとしている!?

 私は何も考えることなく咄嗟にミッチェルを抱きかかえ、ミラの自宅を抜け出しました。

 加速魔法を掛け、屋根をつたって逃げていく私をそれ以上の速さで追ってくるミラの顔はやはりいつもとは全く異なるものでした。

 まるで操られているようで、今ここで追いつかれたら殺されると本能でそう感じたので、必死に逃げました。なるべく人がいないところへと。


 周囲に人影はない。ここならば第三者に被害が及ぶことはないだろう。

 

「ミラ!これはどういうこと!一体どうしたと言うの?」


 その言葉に対しての返答はなく、虚ろな目でミラは私を殺そうとしてきました。あれは間違いなく本気でした。

戦闘力で私に勝ち目はない。どうすればミッチェルを逃がすことができるか妙案が全く思い付きませんでした。

お情けのような防壁魔法を何度も何度も行使してミラの行く手を阻むことくらいしかできません。でもそれも意味を成さず、数秒後には手の届く距離まで近付かれるのは明白。

私には空間転送魔法は使えないし、飛行魔法も使えません。

終わった?と思い、必死にミッチェルに覆い被さりました。

ぎゅっと抱き締め、力んで目を瞑ります。


痛みや体の変化は訪れません。

私はゆっくりと目を開けて前方の光景を見ました。

そこには見慣れた後ろ姿がありました。


「シェイラ、これは一体どういうことだ?姉妹喧嘩にしては派手すぎると思うが」


「サファイア!どうしてここに?いや、そんなことは今はいいわね。ミラの様子がおかしいの。なにかに操られているようで、こっちの話をろくに聞きもしない」


「ミラ!聞こえるか!」


サファイアの問いかけにすらミラは答えることはない。

ただひたすらにサファイアに襲いかかる。目的はやはり自らの娘のようでした。


ミラの拳とサファイアの剣が何度もぶつかり、その際に生じる風圧で私はよろけそうになりました。

圧倒的な力と力のぶつかり合いは互角でした。


そんな時、地面から光り輝く鎖が何本も突き出してきて、ミラの体を拘束しました。

拘束魔法、レイフルズ チェイン。相手の動きを止める魔法としては強力で、速い魔法である。

この魔法を行使できるほどの魔導士といえば?


「ごめんね!シェイラ!ちょっと遅くなった!」

「リリィ、助かった……」

「無事は無事みたいね」

「ええ、なんとかね。本当にギリギリだったけど」

「どうにかしてミラの意識を奪わないと。拘束が解けるのも時間の問題だから……」


「リリィも来たか……他の者たちは?」

「ハンマーヘッドにも同様のことが起きてるみたい。ベルトリウスを含めて他の人たちはそっちに向かってる」

 サファイアは巨人の轍の女性メンバーとは仲が良く、それはリリィも例外ではない。剣士と魔導士という職業ジョブの違いはあるが、それぞれが信頼し合っている仲である。


「ちょ、リリィ!転移するなら言ってくれよ!いきなり消えるからびっくりしたんだぜ!」

 建物から飛び降りてきたのは白銀の甲冑を身に纏った、巨人の轍のメンバーの一人であるジョン クロークだった。

「ごめん。急いでたから」

「んで大丈夫なのか?……おっとミラ、獣みたいだな、なんか」

 理性を失っている姿を見て軽口を言うジョンはあまり危機感を抱いていない様子だった。

 

 ハンマーヘッドにも同様のことが起きている。私はそれを聞いてすぐに思い出す。ヘルスピアの呪いについて。

 確かヘルスピアの異能、呪いは傷を付けた箇所を治癒不能にする効果だったはず。しかし本当にそれだけなのか?今、ミラとハンマーヘッドの二人がこのような事態になっていることを考えると別の効果もあるのではないかと感じました。 

 私はサファイア、リリィ、ジョンの三人に自らの考えを話してみた。ジョンはあまり考えていないようだったが、他の二人はそれぞれが思案していた。


「二人がそうなっているということはシェイラの考えが正しいのではないか?」

「うん、私もそう思う」


 いずれにせよ、他の選択肢は何も思い浮かばないのだからシェイラの考えで進めていくのが妥当だろう。


 リリィの異能でミラの意識を刈り取る。夢想白煙というリリィにしか使えない異能力。白い煙を発生させて、相手を睡眠状態へと誘う使い勝手のいい異能である。異能なので魔力を使用しないし、魔法対策をしていても効力を発揮するところも利点といえる。

 

 すやすやと眠りにつくミラに私とリリィが最上級の解呪魔法を使用しました。

 心の最奥に仕掛けられた呪縛をも取り除く最高の解呪魔法アスタ―フレイマ。ミラの深層に潜んでいたヘルスピアの一部が体内から放出された。

「くくくくっく……面白いっ。ここまで高いレベルの解呪魔法を使用できるとは……たまげたっ」

 

「意思を持ってる?呪い本体が?どういうこと?」

 解呪するときに現出する魔力の塊が一般的な呪いの本体であるが、今回の場合は全く異なっていた。

 ヘルスピアの本体は確実に殺したはず。しかし目の前にいるのはヘルスピアと同じ姿の何か。


「サファイア ブルーバード……リリィ エルメス、シェイラ レヴィンド、ジョン クローク。呪いの存在ではすぐに殺されてしまいそうな面子だっ。ということでここは逃げるしかないようだっ」

 

「逃がさねぇよ!!」

 ジョンは聖槍でヘルスピアを狙うが、その前に存在が消失する。

「逃げられたけど?」

「う、うんまあ、こういうこともあるよな、うん。あるはずだよ、うん」


「終わったの?」

 

「終わったみたいだな。ヘルスピアは逃がしてしまったが……」

 

 ミラが目を覚ますのに二週間の月日が掛かった。目を覚ました彼女を待っていたのは絶望だった。自らの手で夫を殺した事実にミラは塞ぎこんだ。いつもは強気で突き進んでいく彼女の弱った姿に私も戸惑いました。彼女の心は治ることはありませんでした。それから一度も活動することなくミラは冒険者を引退しました。ミラの引退の一年後、巨人の轍は解散。メンバーはそれぞれが違う道を歩むことになり、今に至ります。


 パーティの解散から三年の月日が流れた年に私は「南の白鶴亭」をオープンしました。

 ミラの心のリハビリに付き合いながらお客さんをもてなす難しさも体感しました。冒険者の時には決して経験できないことでした。

 ミッチェルはあの事件によって教会に預けることになった。ミラはもうミッチェルに合わせる顔がないと……そう言っていました。一緒に過ごしたいという気持ちはもちろん強かったみたいですが、一緒にいれば不幸にしてしまうという気持ちも遥かに強かったようです。それにミッチェルの父親を殺したのはミラ自身です。その後ろめたさは今でも変わらずずっと持ち続けているのでしょう。


 ミラの心は少しずつ修復していきました。笑顔も見せるようになりましたし、いつも通りの傲慢さも戻ってきました。

 ミッチェルの安全を帝国の知り合いに確保してもらいながら今まで過ごし、今に至るのです……






「カモシタとかいう男のことか?」

 帝国の知り合いって誰だ?と思ったが、ふとその顔と名前を思い出した。

 

「ええ、カモシタさんは極東の国ヒノモト出身で、帝国の情報司令部に所属している人です」


「へぇ、そんな人が帝国にいるなんてな。ヒノモトって言えばここからかなり遠いだろ?」


「ええ、でも帝国とヒノモトは遠方にありながら同盟関係ですから。多くの極東人が帝国にはいますよ」


「へぇ、それは初耳だ」

 そう言われてみれば確かに外を歩けば、ちらほらと極東人の姿があったような気もする。

 と、少し話に夢中になりすぎた。時計を見ると六時五十分を過ぎていた。


「五分前に着いたか……まあ問題ないだろう」


「サフィー、どうしたの?こんな朝早くに。ミラに用事でもあった?」


「今日はレイトに用があってな。それでは早速行こうか、レイト。シラヌイ様がお待ちになっている」


「ああ、案内してくれ」

 

 レイトは「南の白鶴亭」を後にした。あ、その前に……



「シェイラ、朝食ありがとう。美味かったわ」


 





 



 





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