第8話 成長への準備
取り合えずは青魔法の『水球』で手に付いた血は落とせたのだが服に付いた血は直ぐには落としようが無いので結局着替える事にした。元々着替えるつもりではあった為、何かないか《魂魄倉庫》の中を探していると昔に買っておいた色とりどりの布が入っているのを見つけたのでせっかくなので自分で作ってみることにした。
と言っても特に特別な事は無い。というのも魔法を使えば割と簡素な服ぐらいは出来るのだ。早速魔法を発動して服を作った。濃ゆい灰色のシャツに黒のズボン、それとこげ茶色のローブとなるべく汚れても問題のない服装にしておいた。ちなみにこの服装一式は昔にクレアが故郷の子供たちに着せてあげていた服装を参考にしている。
早速着替えてみたが自分で作ったこともあってか大きさも丁度良く、動きやすい為なかなか良い出来だと思う。
「うむ、服に関しては女性が作ったものを参考にした方がうまくいくのう。」
服を作っている様子を見せてくれた妻に感謝しつつ路地裏から出ていく。
(早めにクレアの所へ戻らねばのう。)
さっきの戦いで気づいたことだが今の体で使える武器がない。一応シュワユーズやグラムなどはあるが人前では使えるものではない。それに服は良いとしても剣を持っているのは可笑しいと思われるだろうというのと、さっきは木の棒で戦ったが基本はいつでも直ぐに使うことが出来る武器が必要だと感じた為、今から護身用の剣を買いに行くことにする。
だが家から出たのは初めての為何処に何のお店があるのかもわからぬのだがここは魔法を使っていくことにする。使うのは『精霊の導き』と呼ばれる精霊魔法の一つで付近に宿っている精霊から道や目的地の場所などを聞く魔法で便利ではあるのだが精霊からの好かれ具合で情報量が変わるという欠陥もあるのだが問題ではないだろう。別に失敗しても他のを試せばよいという軽い気持ちで使う事にした。
『精霊の導き』
そう呪文を唱えると魔力が周辺の土や石、建物などに魔力が吸い込まれて行きそこから様々な精霊が顔を出してきた。
『お久しぶりですね。』『こどもになってる!』『お元気そうで何よりです。』
精霊たちから様々な言葉をかけられるが特に悪口や不機嫌な感じの言葉話聞こえては来ない。どうやら成功らしいので早速事情を簡潔に説明して案内して貰う事にする。
『それならこっちこっち!』『いいみせあるよ!』
どうやらしっかりと案内して貰えるようだ。案内されて裏路地から出て来るとそこには沢山の人が行き交う活気的な風景が広がっていた。そのまま街中を見てみるが様々なお店から聞こえる賑やかな声からもこの町が栄えているのが分かる。そんな賑わう大通りをやや小走りで進んでいく。
なぜ小走りなのかというと先ほど戦闘で時間を使った為、成るべく鍛錬の時間を稼ぐためである。それに案内してくれている子供の様な妖精の進む速度が速い為こちらも速く進まないといけないという訳だ。
やはりここに住み着いている為か迷う感じもなく進んでいく。だがあっちいたりこっち行ったりと時々何処に行けばいいのかが分からくなる事があるがそこは他の妖精たちに聞いたりすればよいので特に問題ではない。
進むこと数分、途中で裏路地に入ってからは賑やかさがなくなって雰囲気がガラリと変わった。
(確かにこういう所には隠れたいい店があると聞いたことがあるのう。)
そんなこと考えていると今更どこに向かっているのかを知ったのかシュワユーズとグラムが話しかけてきた。
『クラウス、ちゃんと私達も使ってくださいね。』
『そうですよ!四十年も待ったんですから私が満足するまで振るってもらいますからね!』
そういった後にまた二人で言い争いをまだ再開した。他の聖・魔剣具達は別に止めようとしない為、我も何もしないでおこうと思う。
そんな事もありながら裏路地を進んでいくこと数十秒、暗い印象を覚える場所の一角に剣とハンマーが交差している普通の看板が掛けられた質素な店が佇んでいた。
『ここだよ!』『いいみせってきいたよ!』『店主の腕がいいらしいです。』
うむ、妖精たちが言うにはここがこの街でも腕のいい鍛冶屋らしい。
『すまない、助かった。また何かあったらよろしくお願いする。』
『わかった!』『またね!』『次もよろしくお願いしますね。』
そう言って妖精たちは光になってそれぞれの元居るべき場所へと戻っていた。
「さて、店にでも入るかのう。」
そうして我は店の中へと入っていった。