第6話 新たな人生を
グラム、シュワユーズの二人と話をした後、また誰かが近づいてきていたので二人に『静かにしておくように』と注意しせていると扉がノックされた。先のメイドが来たのかと思い、「入ってもよいぞ。」と許可を出すと扉が開かれてクリフィード付きのメイドであるアーシャが入って来た。
「アウレクス様、旦那様が執務室で話がある用でお呼びです。」
「うむ、分かった。今から向かう。」
どうやら当主が我をお呼びのようだから拒否せずに素直に執務室へと向かう事にする。
話の内容はうすうす感づいてはいるが話を聞きにいかなければ変に怪しまれてしまう為、誠に嫌ではあるが向かう事にする。
頭の中では(行くのは嫌じゃのう)と考えながら執務室へと向かっていると道案内の為に前を歩いていたメイドが声をかけてきた。
「アウレクス様はそろそろご自身の専属メイドは持たれないのですか?」
聞いてすぐに何のことか分からず記憶を巡らせると生まれた時から五歳頃までは親が子供の傍に居るメイドを選び、五歳を過ぎてからは自分で考えて傍付きメイドを決めるらしい。
ちなみにアウレクスは五歳になって選べるようにはなったが自分で他の人の人生を決めるのが嫌で決め悩んでいたらしい。その気持ちは分かりはするが我からするとこれはチャンスともいえる。なぜなら自分に従ってくれるかもしれない者を自分で選んで決められるのだ。チャンスではあるが基本今の所は選べるのは一人らしい、だからこそよく考えて選ばなくては‥‥幸い時間はありそうなのでゆっくりと探すこととしよう。
「ふむ、そうじゃのうそろそろ持った方が良いのは分かるが折角じゃから優秀な者を迎えたいからのう。もう少し考えさせてもらうよ。」
「畏まりました。それでは後で旦那様にはお伝えします。」
うむ……まぁ、この屋敷に勤めるものとしては当主には伝えねばならぬからのう。我個人としては面倒事になりそうなので嫌なのじゃがしょうがないと割り切るとしよう。」
その後は特には会話といったものはなく、執務室へと着いた道中に見た部屋の扉とは違い、屋敷の主がいるに相応しい外観をしており全体的に装飾が施されており一目見ただけでも良い出来であることが分かる。
「旦那様アウレクス様をお連れしました。」
メイドがドアをノックした後、中にいる人物へと到着したことを伝える。そのすぐ後に『分かった、入れ。』と短く簡潔的な返事が返って来た。その言葉を聞くとメイドが扉の取っ手を掴んだ後にこちらへと向いて「旦那様が中でお待ちです。どうぞ、入られてください。」と話した後扉を開ける為に力を入れ始めた。
やはりこのメイドはここまでしかついては来ないようだ。まぁ、当主と息子の話にメイドが入れるとは思えないからな。一人で当主と話すなど誠に気が進まぬがしょうがないかと割り切ろう‥‥‥やはり嫌じゃのう。
そう考えつつも「失礼します。」と一言告げた後に開けられた扉を通って中へと入ると食事の際に机の真ん中に座っていた青髪の男、クリフィード・レイルス両方の壁に備えつけられた本棚に挟まれるように置かれた執務机で書類作業をしていた。
「ご苦労、仕事に戻りたまえ。」
メイドは一度頭を下げ、扉を閉めながら部屋を出て行った。
「さっきぶりだな、アウレクス。調子はどうだ?具合が悪い様には見えないがな‥‥」
どうやらまずは世間話に近いのから始める様だ。別に直ぐに本題でも構わぬのだがまあそれぐらいなら付き合うか。
「うむ、体の調子は良いぞ。随分と体が軽くなったようじゃ。」
「そっそうなのか‥‥病気か何かで体が怠かったりしたのか?」
「まあ、そんなところじゃな。」
「………………。」
数回ほど会話した後、クリフィードは何か考えをめぐらせているのか黙ってしまった。
今は特に急ぐ予定がなく時間はある為、話始めるまで待っておくことにした。
「‥‥‥‥‥‥‥お前はそういうがやはりそうとは考えられない。」
「ふむ‥‥‥そうでないと言うのならどう思っておるのじゃ?」
少し間を開けた後に話された言葉に質問で返すと今度はこちらを真っ直ぐ見つめながら話し始めた。
「はっきり言うがお前はアウレクスではない。一体お前は何だ!」
ふむ‥‥‥‥やはり後先考えずにいつも通りの喋り方をしたのがダメだったか‥‥‥‥まぁ、別にばれてもかまわぬのだがここは適当に誤魔化しておこうかのう。一応後もう少しここに居ておきたいしのう。
「我は間違いなくアウレクスじゃ。まぁ、頭を打った衝撃で多少は性格などが変わっておるかもしれぬがな。」
「‥‥‥‥‥‥‥。」
「はーーーーーぁ。この領地内にいる時には自分からは問題を起こさぬようにはするから今は居させてくれぬか。」
「‥‥‥‥‥‥‥。」
また黙って何か考えていたが何か決心したらしく話を再開した。
「分かった。そういう事なら今回の件は不問にしよう。だが何か問題になる行動をとった場合はもう一度話し合った後に処遇を決める。それでよいな。」
「うむ、我はそれで構わぬ。それで早速ではあるが少し散歩へと行ってもよいか?数日寝ていたから体を動かしたいのじゃ。」
「分かった。許可はするがまた怪我をしないように注意しろよ。」
「了解した、では失礼する。」
そう言って執務室を後にした。
―――――――――――――――――――
「性格が変わった‥‥‥‥か。」
久しぶりにアウレクスとふたりきりで話したが何というが子供っぽさがなくまるで年上と話しているかのようだった。物心ついた時から色々と特別な子だとは思っていたが、これはさすがに驚くことしか出来なかった。
「まぁ、唯一の救いはあまり力や権力を誇示したりはし無さそうなところか。」
色々と問題を抱えてそうなのだが何故かクリストフとカルダスよりも故意的に受け入れている自分に疑問を持ちつつもまだ残っている書類仕事へともどっていった。
――――――――――――――――――
[一方、アウレクスもといユリアスは執務室から出て一階の玄関へと歩みを進めていた。]
『さて、許可ももらったしのう、久々におぬしらで練習でも使用かのう。』
『主様、私をお使い下さるのですか。感謝します。』
『何を言ってる!私が先に使ってもらうのだ!勝手に話を進めるな!』
会談へと向かう廊下を歩いている最中、これからの聖、魔剣具を使って訓練をするといったら真っ先にシュワユーズが反応して一番先に使われる方向で話を進めようとしたがそれは目ざとく感じ取ったグラムが止めに入っていた。
『よろしいではないですか、最も一般的な形状をしている私で練習した方が主様の為になります!』
『それを言ったらお前の様な長剣よりも私の様な直剣の方が主の練習には良いではないか!』
口論はどんどんと白熱していきとどまる所が知れなくなってしまった為決着がつくまで放置することにした。
剣具たちの方は自分達で話し合ってもらうとして我自身はどうしたいのかと考えていると後ろから「おい!」と声をかけられた為、振り返るとそこには食事の際にいた金髪兄弟が腰に木製の直剣を腰に差して立っていた。
「木から落ちたお間抜けなガキがここで何してやがる。さっさと部屋に帰りな、目障りなんだよ!」
「そうだ!そうだ!目障りなんだよ!」
偶におるよな。変にちょっかい出したり絡んでくる奴がな。まああの二人の幸運な所は真っ先に我への暴言に反応する二人が順番の件でお互いに言い争っている事か。
じゃがこの様な奴に戦友たちとの時間を削られるのは不快なため無視して進むことにした。
まだ流れるような暴言を吐いている二人から目線をそらして階段へと歩くのを再開しようとしたら後ろからまた声をかけられた。
「おい!俺たちが話しているのに勝手に移動しようとしているのはどういうことだ。」
「そうだ!兄さんたちの話をしっかり聞け!」
まだ何か言っているが相手にする所か聞く耳を持つことすら時間もとい限りある人生への帽得な気がするため後ろの喚く置物から全力で走り去ることにした。
「おい!待ちやがれ!」「話を聞け!」そんな声を聞きながら下の階まで降りた後、何故がとても気持ちが晴れたような気がした。