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第5章 入学と再会

 とは言ったものの至れり尽くせりな感じで、エンブレ家の馬車が学園まで乗せて行ってくれるらしい。

 モブ転生してから16年。

啓ちゃんと再会したあの日以降、私が馬車に乗ることなんて二度とないと思っていたが。


 馬車には先客がいた。

(クロード様に似てるけど・・・・・・)

「ゆ、」

「?」

「ユーリちゃーん! 会いたかったよ~」

馬車の扉が閉められ走り出してすぐに、その人物は私に抱き着いてきた。

「え、その呼び方・・・・・・啓ちゃん!?」

私の知っているクロード様とは大分違うようだけど


「うん。イメチェンしてみたんだ。どうかな?」

本来のクロード様は黒髪の長髪。肌も吸血鬼かってくらい病的に白い。

 でも、今の啓ちゃんは髪が短めで、前髪をエルフみたいに装飾品で結んでる感じって言うのかな?

肌も、色白なままではあるけど、血色はいい。

「えっと、ジョブチェンでもしたの?」

「似合わないかな?」

「いや、()()()()()()どんな姿でも似合うけど、あまりに変わりすぎてわからなかったよ」

「へへへ、苦労したよ。ユーリちゃん以外には心開けなかったし。」

 なんだその、リリーちゃん以外には心開かなかったクロード様みたいなセリフは。

「そこはリリーちゃんに当てはめて言うところでは?」

「僕はリリーちゃんより蘭花さんの方がいいなぁ」

「あー蘭花さんも美人で捨てがたいよね。」

「ね~! やっぱ悪百合の世界の話で盛り上がれるだけでもユーリちゃんと一緒にいるのは正解だったなぁ。」

「まぁ、私もクロード様の様子は気にはしてたけどね。・・・・・・っで啓ちゃん私を呼んだ理由は?」


 久方振りの再会に花を咲かせるのは楽しい。

だが、今後のモブとしての行動を選択する為に本題に入るのは重要事項だ。

「じ、実はユーリちゃんにしか相談できないことがあって。」

「っていうと、メインキャラ関連?」

 クロード様もとい啓ちゃんが、ルノワール学園に入学したのは知っていたし、啓ちゃんならまぁ、上手くやるだろうと思っていたので心配はしていなかったのだが。

「うん。実はリリーちゃんが蘭花さん友情ルートを進んでいるのに、蘭花さんはどうやら(クロード様)ルートを進んでるみたいなんだ。」

「え、何それ。蘭花さんのクロード様ルートとか萌えしかないじゃん。

 っていうか、え? 何それ自慢?」

リリーちゃんカイルルートで、振られた蘭花さんは偶然不器用ながらも慰めようとしてくれたクロード様に惚れる。

 しかし、クロード様はリリーちゃんにしか心を開かない。

それがわかっていても、蘭花さんは健気にクロード様を想うのだ。

 クロード様バッドルートでは、ようやく蘭花さんの気持ちに気付いて

報われる。

 クロード様的には一途ではないけど、蘭花さんに良かったね。

と思わず言いたくなる良いエンドだった。


「違うよ。ほら、中身僕でしょ? 僕も蘭花さんは好きだけどあくまでそれは()()()()()()()として。ユーリちゃんなら言いたいことわかるよね?」

 そうなのだ。私たちが好きなのはあくまでゲームのキャラとして。

ここが現実になった以上、そこに恋愛感情はない。

 ゲームではどの選択肢を選べば好感度が上がる。とか、決まった会話しかなかったが、ここではもう生身の人間なのだ。

 選択肢を間違えれば、死ぬこともあるし。

二度と推しを見守るなんてことは叶わなくなる。


 だからこそ、私は傍観者を決め込んでいたのだが、

「言いたいことはわかった。でもならフラグへし折ればいいじゃん。」

カイルに振られた蘭花さんにはもう一つのルートが用意されている。

アトワルド・フィヌ・ルシオーラ。

伯爵家の次男坊。

俺様な彼のルートである。

「それが、蘭花さんの好意自体は嬉しくて、なぁなぁにやり過ごしていたら」

「クロード様個別ルート寸前だと」

力なくうなだれる啓ちゃん。

「それはもう、諦めるしかないのでは?」

「そこをなんとかお願い! このままだとクロード様闇堕ちルートだよ? いいの?」

「それは・・・・・・と言いたいところだけど、私魔王クロード様好きだからなぁ。」

「そっちじゃないよ。」

急に啓ちゃんの目に光がなくなる。

「あ、まさかのヤンデレルート? それはいけないな。」

(ってかもう、そっちに入ってない??)

「でしょでしょ?」

 流石に全年齢向けのゲームでヤンデレっぽいアレやコレは出てこなかったけど、クロード様には一応闇堕ちルートが2つある。

 1つはさっきのリリーちゃんに振られて、魔王になるルート。

元々クロード様の黒髪は魔性に近いものの証とされている。

まぁ、私も黒髪なんだけど。

そして実はもう1つ。

 裏ルートとして見つけたのがクロード様ヤンデレエンド

こっちはどちらかというと、オマケSSに近い感じで背景以外は文だけだったけど、せっかく心を開いたのに結局お前も僕を裏切るのか。と絶望したクロード様だけど、憎み切れなくてじゃあ、閉じ込めてしまおう。

 僕と永遠にこの暗闇で・・・・・・

と完全に自室に閉じこもってしまうエンドだ。

 

 ルートに入る方法は、全キャラの全エンディングクリア後に最初からスタートすると幼少期の攻略対象を見れるようになるのだが、その時にクロード様の心を開いておくとってコレまんま私じゃないか。

(えっとこれを回避するには・・・・・・)

「と、とりあえず今からフラグへし折れるか試してみよう。」

「うん!」

こうして、入学前日から私の平和な生活は無縁のものとなった。



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