第4章 入学案内
「ユーリ! アナタ! 大変よ!」
「母さん? そんなに慌ててどうしたの?」
流石にこれだけの年月を共に過ごせば、親子仲も普通に位にはなるもので、
「王立ルノワール学園からユーリ宛に入学案内が届いてるの」
「なんだって!?」
両親が驚くのも無理はない。
王立ルノワール学園。
悪百合の世界のメイン舞台である学校であり、全てのキャラと出会う最初の舞台でもある。
貴族、王族、名家の子息、ご令嬢が社交界のマナーを学んだり、コネを作るのと同時に、
庶民の中から魔法の才能や貴族に劣らない美貌を持つ者だけが、入ることを許された。
言わばエリート学校。
本来は幼少期から入学するものだとゲーム内では言っていたし、ましてや私は入学条件に該当しない。
「何々。」
父が読み上げた内容はこうだった。
【拝啓 ユーリ・ルイス様
この度クロード・フォン・エンブレ様より推薦いただきまして、特例にて貴殿の入学を承認することなりました。
つきましては、クロード様と同じ学年にて入学及び編入の手続きをしていただくようお願い申し上げます。
王立ルノワール学園 学園長 ルノワール・ロイス】
(啓ちゃんだ。)
私は頭を抱えた。
六年間音沙汰なくお互い干渉もしてこなかったの今になって、一体何の用だというのだ。
確かに、啓ちゃんが推しのクロード様である以上、幸せかどうかは気になって、
母さんの話をしょっちゅう気にしてはいたけれど、私はリリーちゃんの様に嫌がらせに耐えられる程、
メンタルは強くないし。
庶民が、見た目クロード様に近づきすぎるのはよくないと、啓ちゃんと再会して、帰宅してから痛感した。
あのあと、一ヶ月程だろうか。
私にも我が家にも嫌がらせが続いた。
幸い、大したことはなかったし、勘違いによる妬みだったのはわかりきっていたので、無視を通していたけれど、イケメンや貴族に庶民が関わると碌なことがない。というのは、どこの世界も一緒だ。
リリーちゃんはよく耐えられたものである。
さて、それはそれとして、庶民から入学するにしても原則は15歳の成人と同時ぐらいの筈。
クロード様は現在17歳の筈だから、今更呼んだ理由を察するに。
悪百合の蘭花さんに言い寄られて困っている。かカイルの悪行に頭を悩ませているか。
知恵が欲しいのだろう。
「学費も全額免除!? エンブレ家が全て負担するだって? ユーリ。お前クロード様にえらく気に入られてるじゃねーか。」
「ははは、そうだね。」
「こりゃ、せっかくのチャンスだ行ってこい!」
「はぁ!?」
「そうよ。ついでに、カッコいい恋人の一人でもゲットしてきなさいない。」
「いやいやいや」
私の乗り気でない気持ちを他所に、乗り気の両親はすぐさま勝手に手続きをしあれよあれよという内に、
私は王都へと旅立つことになったのであった。