第3章 決別
っという訳で思わぬ形で啓ちゃんもといクロード様と再会した私ユーリですが、最初は啓ちゃんがクロード様に保護されてるのかなとか思ってたから、本人だと聞いたときは驚いたけど。
「しかし、啓ちゃんがクロード様とはねー」
「僕も驚いたよ。これってさ。所謂転生ってやつだよね?」
「そうだろうね。やっぱあの時私たち死んだんだね~」
「まぁ、トラックじゃね」
内容は物騒なのに、話している雰囲気は平和そのものである。
「しかし、クロード様って侯爵じゃん? 庶民とのんきに話してていいもんなの?」
「本来のクロード様は引きこもりで心閉ざしてるからわからないけど、ユーリちゃんが来たことで明るくなった。って家の人は喜んでるみたい。」
「あ、そういえばそうか。リリーちゃんのイベント取っちゃったな。」
「しょうがないよ。それに中身は僕だし。どのみちゲーム通りのイベントなんて起きないって。」
「まぁ、私たちが来た時点で、ストーリー歪んでる可能性あるよね。気を付けよう。」
「もう、帰っちゃうの?」
お礼にと紅茶とクッキーを頂きながら、雑談していた訳だけど。
「そんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでよ。今は状況が違う。
啓ちゃんはクロード様で私は庶民。それに知ってるでしょ? 私は推しキャラと結ばれたい訳じゃない。推しの幸せを見守ることだって。」
立ち去ろうとする私の手を、啓ちゃんは縋るように離さない。
「知ってるけどさ・・・・・・やっぱ心細いよ。僕ユーリちゃんがいなきゃダメなの知ってるでしょ?」
「我儘言わないで。もう住む世界が違うんだよ。」
それでも、まだ何か言いたげな啓ちゃんに大丈夫だよ。って伝えるにはどうしたら、いいだろうか。
(あーそういえば、前世でやってたSNSで見たなぁ。)
私は啓ちゃんの頬にキスをした。
「!?」
啓ちゃんはびっくりしてるけど、
「今後会うことはないかもしれないけど、別に忘れる訳じゃないし。
だからと言って、婚約者指定とかしないでね。絶対」
(私は平和に推しの幸せを見守りたいんだから)
「わ、かった・・・・・・」
かすれそうな声で、顔を真っ赤にしたまま啓ちゃんは応えた。
「じゃあ、さようなら」
またね。とは言えなかった。言っちゃいけなかった。
それから数年。
何の音沙汰もなく、特別なこともなく16歳になった頃。
それは突然訪れた。