F. Lovers〜萌芽〜 3
暇つぶしにでもなれば幸いです。
開会式の宣言の後に演台に立ったのは真っ白なスーツを着こなし、サングラスをかけた限りなくヤのつく職業に従事してそうなスキンヘッドの男だった。怖い。
『えー、皆さん。まずはこの作世学園への入学、おめでとうございます。私はこの学園の教職員兼校長を務めております一改世と申します』
少し高めの声に驚く。もっとえげつない声を想像しちゃってたよ。
『これからここで3年間をここにいる生徒たちと在校生で過ごすわけですが、別に全員と仲良くしろなんてことは言いません。事実、無理ですから。この学園の校長である私でもそのような偉業はなし得ないでしょう』
「みんな仲良く」のスローガンを一言で粉砕してみせる。
『この世界はありとあらゆる可能性の取捨選択によって存続しています。それはあなたたちの可能性そのものでもあるのです』
急に哲学的な話になってきて眠気が…。
『人の本気の可能性は未知数です。その気になれば世界に影響を及ぼしうる存在になるでしょう』
世界に影響を与える人物トップ10的な??
『話がすこし逸れましたね。最初に話した無理に他人に合わせる必要がないという発言ですが、あなたたちにはまだまだ無限の可能性が秘められているのです。その本気を隠してしまう建前などという陳腐なものに縛られて、可能性を潰して欲しくないのです。そう。あなたたちの世界は始まったばかりなんですから』
なんというか。不思議な人だなぁ。
考えが凝り固まってないというか枠に囚われないというか。思考が若い?のかな?
『さて、あまり長々と話すのは若人たちには毒ですね。だから、私からは1つだけ宿題を出すことであなたたちへの祝辞を終わろうと思います』
「宿題…?」
「なんだろうね?」
会場が少しざわつく。
一校長は呼吸を整えてから、新入生への宿題を口にした。
『これからの3年間を様々な色で世界を塗りあげてください。楽しいことも悲しいことも全部余すことなく彩ってみてください。それが私からあなたたち新入生への宿題です』
穏やかな口調。まるで我が子を心配する言葉を聞いているみたいだった。
『最後までご静聴くださりありがとうございました。では皆さん、よい学園生活を』
一校長は一礼をしてから演台を降りていき、舞台袖へと姿を消した。
パラパラと拍手が起こる。しかし横のグッチーが何やら神妙な顔つき。
「どうしたの?」
「……この宿題って3年後にレポートとかにまとめなきゃなんねーのかな?」
「意外と真面目ッ!?」
「いや、大事だろ!その宿題できなきゃ留年みたいな…」
「仮にあったとして宿題が曖昧すぎてレポートにはできなさそうだけどね」
小声でグッチーと話している間に、僕たちと同じ制服を着て肩まで伸ばした白髪が印象に残る生徒が演台でマイクを手にしたところだった。
また書き次第投稿します。