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亜美は秘かに思っている 11

*未成年者の喫煙は(法律で)禁止されています。


*喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。疫学的な推計によると、喫煙者は肺がんにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなります。

「……で、ありますから私は今回の出来事を大変な誇りと感じております。

皆さんがこれから社会に出て……」


 1週間前の大事故。そして、その時の全校生徒による献血活動の表彰式典が講堂で開かれていた。

 胸を張り、誇らしげに演説をする校長先生を尻目に亜美はこっそり講堂を抜け出した。

 正直、馬鹿馬鹿しくて聞く気になれなかった。亜美にはこんな茶番に付き合うよりもっと大切な用件があるのだ。

 誰にも見咎められないように慎重に人気(ひとけ)のない廊下を進む。目指すは校舎裏だ。


 やっぱり居た


 校舎の影から覗き、目当ての人物を確認して亜美は胸を撫で下ろす。

 別に約束をしていたわけではない、当てがあった訳でもない。でも、何故か、きっとここにいるだろうと半ば確信めいた思いがあった。


「えっと、海道君」


 壊れかけた机に腰かけ、煙草を吸う海道健に亜美は声をかける。

 海道は亜美の姿を認めると少し驚いたような表情を見せたが、何も言わなかった。

 気まずい空気が流れる中、亜美はおずおずと口を開く。


「傷の具合はどう?」


 健は無言で煙草を一息吸い、吐き出す。


「まぁまぁだ」


 ようやく一言。

 取りつく島がない。だが、亜美はめげずに言葉を紡ぐ。


「良かった。

……えっと、お礼を言ってなかったから」

「お礼?」


 健は、何の事だと言わんばかりに眉をひそめる。


「事故の時に助けてくれたお礼よ。

あの時はドタバタしてて言えなかったでしょ。

あの時、もしも海道君が居なかったら、多分私、死んでたと思う。

それか、もっと酷い事になっていたかも知れない。

だから。

ありがとう。

助けてくれて、本当にありがとう」


 亜美は深々と頭を下げた。


「い、いや、別に良い。助けたくて助けたんだ。礼を言われる事はない」


 海道は座っていた机から下りると、少しドギマギした風に答える。 

 亜美はじっと健を見つめる。健は何も言わなかったが、居心地が悪いように身じろぎする。


「じゃあ、何で助けてくれたんですか?」


 不意の質問に健は明らかに狼狽える。


「な、何でって……特に理由はないな」


 海道は探るように見詰めてくる亜美の視線を避けながら答える。


「そうなんだ。

てっきり、私の事が好きだから助けてくれたのかと思ったのに。

違ったのかな」

「いや、好きだ。それは間違いない」


 慌てて答える海道を見て、亜美はクスクスと笑う。ああ、やはりこの人は可愛らしい。と、内心思いながら。

 亜美は、一度深呼吸をする。そして、真っ直ぐ健を見ると言った。


「もし、まだ間に合うならこの間の事、受けても良いですよ」

「ほ、本当か!」


 亜美の言葉に健はグイッと前に出る。その圧力に()され反射的に後退りかける亜美だが、それを懸命に堪える。


「た、但し条件があります。それが飲めるならお付き合いします」

「条件、何だ?言ってくれ」

「えっと、一つ目は煙草を止めること……」

「そんなことか、造作もない」


 健は一言答えるとポケットに入っていた煙草を速攻で投げ捨てる。


「二つ目は何だ?」

「二つ目は……

もっと自分を大事にしてください」

「何だって?」


 二つ目の条件の意味を測りかねて、健は戸惑う。


「放送室で怪我をしてるのに無茶するあなたを見ていたら何でか胸が凄く痛くなりました。

もうあんな思いはしたくないんです。

だから、もっと自分を大事にしてください」


 亜美の言葉に、健は答えを躊躇う。目を閉じ、じっと考える。

 最初の条件の時とは打って変わって、なかなか答えが出ない。


「約束、守れますか?」


 静かに亜美が尋ねる。

 ようやく健は目を開けた。


「分かった。約束する。これからは自分の事も大事にする」


 その言葉を聞き、亜美は満足そうに微笑んだ。


「や・く・そ・く ですよ」


「はーー、顔、赤くなっちゃうわ」


 佐倉さんが両手で頬をぱちぱちと叩く。


「うう、良い話です」


 尚美は袖で目を拭う。


「これが私と海道君との出会いのお話です。

お粗末様でした」


 少し照れたように亜美は話を結ぶ。

 その時、ピピピッと尚美の腕時計のアラームが鳴った。


 「あ、見回りの時間だ。私、行かないと。

久野さん、胸の方はどうですか?」


 尚美に問われ、亜美ははっとなり胸に手を当てる。


「なんか、痛くなくなってます」

「本当ですか?それは良かった。

では、私、行きますね。お休みなさい。

佐倉さんもお休みなさい」


 尚美はそう言うと病室を出て、ナースステーションに戻る。


 何だか胸がポカポカして、スキップしたい気分だった。


















「霧島さーん。戻りました。

問題なしです」


 見回りを終え、霧島さんに元気一杯に報告をする尚美。

 しかし、霧島さんの反応は乏しかった。

 頬杖をついたまま深刻な顔でカルテに見詰めている。


「誰のカルテを見てるんですか?」


 尚美は、そっと霧島さんが見ているカルテを覗きこむ。


「ああ、亜美ちゃんのですか……

……

…… ……」


 カルテに書かれている内容を理解するにつれ尚美の顔から血の気が失せていく


「えっ!それ……まさか、えっ?!」


 あからさまな狼狽を見せる尚美。 

 霧島さんはゆっくりと顔を上げ、尚美を見据える。


「そうよ。

このままだと亜美ちゃんの心臓は長くはないわ」


2018/06/11 初稿

2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正


《オマケ》

蛍  「ふぃー。ようやく第2幕、終幕です。

   最後までお付き合いいただきありがとうございました」

亜美 「ありがとうございました」

?  「m(。_。)m」

亜美 「わっ!なに、これ?」

蛍  「ああ、アカゴケミドロよ」

亜美 「……アカゴケミドロって何?」

蛍  「『蒼空(そうくう)戦隊 アオインジャー』に出てくる敵の『大幹部カルクアルケミスト』が変身した姿よ」

亜美 「……

   ごめんなさい。2割も理解できないわ」

蛍  「そうなると、第3幕を見るしかないね」

亜美 「な、何で第3幕とアカゴケミドロが関係するのよ」

蛍  「だって第3幕はアオインジャーとアカゴケミドロの戦いを主軸に展開する予定なんだもん。(あくまで予定だけどね)」

亜美 「えっええー、この話は私と海道君の恋愛物じゃないの?

   しかも、第2幕のラストであんな引っ張りかたして、そんな話が展開するってあり得ないでしょう。

   海道君も何か言ってよ。

   って、あれ?海道君はどこ行ったの?」

?  「┐('~`;)┌」

蛍  「と言う事で第3幕をお楽しみに」

亜美 「第3幕は一月のお休みをいただき、8月初旬開幕予定です」

亜美・蛍「「第3幕『僕のヒーローアカゴケミドロ』しばしお待ちください」」

蛍  「スマーーァシュ」

亜美 「それ、違うお話よ」





《第2幕の登場人物》

久野(ひさの) 亜美(あみ)

高校二年生。

高校に入った時に一方的に健にプロポーズされた。

一旦は断るが下校中の事故で助けられ、付き合うことになる。

意外と怒りぽい。


海道(かいどう) (たける) 

高校二年生。亜美の通う高校の番長。番長連合の四天王の一人。学ランを着たゴリラと揶揄されている。見た目はゴツくて怖いが実は心優しく、真面目で筋を通す男。


《必殺技 鉄山靠(てつざんこう)


平田(ひらた) 源太郎(げんたろう)

高校一年

健の舎弟分 調子がいいだけで強いわけでも悪いわけでもない

いわゆる雑魚或いはモブ

健の事を健さんと呼ぶ。

ニキビ面で亜美と同じくらいの体格であることが第2幕で発覚。


堂本(どうもと) (はたる)

亜美の中学からの同級生

メインキャラの一人だが今回はほとんど出番がなかった。


瀬川(せがわ) (まこと) 

亜美の高校の生徒会長。

すらりとした長身、メガネ。

容姿端麗、学業優秀。秘かに亜美の憧れの人だった


戸松(とまつ) 美子(よしこ)

亜美の高校の副生徒会長。

長髪でスタイル抜群の美女。

真とは恋人同士。

事故で大怪我をする。


佐倉(さくら) (なつ)

亜美の病室の患者さん。

夜更かしはお肌の敵ですよ。

ほどほどにね。


霧島(きりしま) 春菜(はるな)

亜美の入院している病院の看護師。

かなり優秀。


早瀬(はやせ) 尚美(なおみ)

亜美の入院している病院の看護師。

新人。感受性が強く、涙もろい。


青木 是光(これみつ)

循環器系の医者。

当直で亜美を見た。



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