亜美は秘かに思っている 1
医療小説ではないです
恋愛小説です
苦しい 苦しい
痛い
胸が痛い
真夜中の病室。亜美は苦痛に目を醒ます。
震える指でナースコールに手をかけて、押す。すぐに二人の看護師が現れた。
「久野さん、どうされました」
亜美の耳元で一人の看護師が囁く。
薄目を開けた亜美の目に映ったのは亜美の担当看護師の霧島さんだった。見知った顔が見れて亜美は内心ホッとする。
「胸が痛い。 苦しいです」
亜美は切れ切れな声で応える。
「どんな感じで痛みますか?」
「……ぐうぅと押される感じです。
ぐぐぅ、ぐぐぅと繰り返し、心臓を押されるような感じです」
「苦しいのは息苦しいと言う事ですか?」
「はい」
「早瀬さん、モニター心電図を持ってきて。それから当直の先生も呼んできて」
霧島さんは後ろに控えていたもう一人の看護師に手早く指示を出す。
「久野さん、ちょっと上半身起こしましょうか。いいですか」
霧島さんは、そう言いながら亜美の上半身を助け起こす。
「どうです。痛みとか息苦しさは変わりますか?」
「ちょっと良くなった……かな。
でも、まだ痛みます」
「脈診ますね。
大丈夫ですよ。すぐ先生が見えますから」
霧島さんは、亜美の手を取り、脈を見始める。そこへ早瀬と呼ばれた看護師が戻ってきた。
「先生、すぐ見えます。モニター心電図持ってきました」
「うん、じゃ、準備して。
久野さん、少し、音聞かせてもらいますね」
霧島さんは亜美に聴診器を当て、心音を確認する。音に集中する表情からは何の感情も読み取れなかった。
「はい、ありがとうございます。
次に心電図とりますので横になってもらって良いですか?
横になるとまた痛みが強くなるかもしれませんが、心配いりませんから」
霧島さんは落ち着いた声で説明しながら、亜美をもう一度横に寝かすと、赤、黄、緑に色分けされた電極を手慣れた手つきで亜美に取り付けていく。
そこに白衣の男が一人現れた。
「霧島さんか。ごくろうさん。
それで、どんな感じ?」
目を擦りながら男が聞く。
霧島さんは男に近づくと小声で報告をする。
「胸に押されるような痛みが周期的にあるそうです。息苦しさも訴えています。
心拍数90、呼吸数30。浅くて早い……」
早瀬尚美は、ベットの横でポツンと佇み、こんな時自分はどうすれば良いだろうかと考えながら、二人のやり取りを聞いていた。
単に指示を待っていれば良いのか、それとも患者さんを見るべきか、悩ましかった。
もじもじしていると、ふと亜美と目があった。
「私、死んじゃうのかな……」
それは尚美への問いかけではなかった。ただの独り言だ。しかし、その言葉を聞いた時、尚美の心臓はどきりと鳴った。
えっ? ど、どうするの。
大丈夫って言うべき?
で、でも、それは私が言っちゃ駄目な事で……
でも、でも、不安を感じてる患者さんはケアしないと、しないと……
「はい、久野さん。
青木と申します。宜しくお願いします」
葛藤する尚美の事などお構いなく、青木と名乗った医師は心電図を確認しながら亜美の横に静かに腰を下ろした。
2018/06/01 初稿
2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正
《オマケ》
蛍 「はーい、皆様お待ちかね、ヤングレ通信の始まりでーす」
亜美 「多分、誰も待っていないと思う。
その前にヤングレ通信って何?」
蛍 「それでは早速、お便りから……」
亜美 「(スルーなのね)」
蛍 「『亜美さんのネーミングの由来を教えてください』
だそうです。亜美さん、どうぞ」
亜美 「名、名前の由来?……知らないけど」
蛍 「知らないの?
自分の名前なのに?」
亜美 「だって、自分でつけた訳じゃないから。
普通、そうでしょ?」
蛍 「亜美さん、知らないらしいので、では、またーー」
亜美 「えっ、(;゜∇゜)
こんだけ引っ張って説明なしなの?!」
蛍 「次回までの宿題ね。亜美の」
亜美 「私の宿題……」
蛍 「と言うことで、次回のヤングレ通信をおったのしみにーー」