イチゴうさぎの奇跡 1
寝不足でぼうっとする頭を抱えて私は病室の天井を見つめたまま憂鬱なため息をついた。
春先に体調を崩して一週間ほど寝込んで、治りが悪いなぁと、病院に行ったらそのまま入院となった。
そんなこんなで昨日は余り眠れてない。
「久野さん、気分悪いですか?」
ベットの横に控えていた看護師さんが気遣わし気に聞いてきた。
「いえ、それほどでも」
曖昧な答えをすると、ピピッと体温計が鳴った。
看護師さんに体温計を渡す。
脈と血圧を計られる。
「胸が痛むとか胃がむかつくと言うような症状はありませんか?」
「うーん、特には無いです」
「はい、ありがとうございます。おだいじに」
カルテに数値を記録すると看護師さんは隣の人のところへ移動する。
「佐倉さん、お早うございます。ご気分いかがですか?
体温と血圧測らせてもらって良いですか?」
お隣さんは佐倉さんというのかと思いながら私は二人の会話をぼんやりと聞いていた。
すると窓際のカーテンがふわりとひるがえり心地よい風が吹き込んできた。
春風に運ばれてきたのか、ふわりと桜の花びらが私の白いシーツの上に舞い落ちる。
「桜咲いてるんだ。
そうだよねぇ、始業式だもん」
花びらを見て、私は再び憂鬱な気持ちになる。
今日は高校の始業式。
新しいクラスの面子や担任の先生が誰なのかなど、気になる事が山ほどある。
今ごろはHRで自己紹介でもしている頃だろうか。
あーあ、出遅れちゃったなぁ
今頃、みんな楽しくやっているのだろうな。
それに引き換え私は……
蛍、ちゃんとやってるかな
蛍とは堂本蛍の事。中学からの私の親友。
私よりしっかり者だけど内気な性格で友達は少ない。
蛍、寂しがってないかな。かまってあげようかなあ
私は枕元に置いてあった携帯を手に取り、どうしようか迷う。
……嘘だ。
寂しいのは私の方。かまってほしいのも私の方。
LINE送ろうかな。でも、入院初日で音を上げるのもお子ちゃますぎだし、今は授業中だろうし。
う~ん。う~ん。う~ん……
》蛍 寂しい
》苺兎食べたい 買ってきて
結局送っちゃいました。
2018/04/30 初稿
2018/05/01 タイトルちょい変更しました。
なんか一号さぎと読めたので……σ( ̄∇ ̄;)
2019/09/14 改行などのルールを統一のため修正
すったもんだの末、こんな形となりました。
結構な長丁場になりそうです。
投稿スタイルは短期集中にしたいですが、間が開く可能性が高いです。
都度、活動報告で上げていく予定です。
因みに、副題の so bat boy は『魔物ハンター妖子』のテーマ曲から拝借しました。
妖子のCVを務められた久川綾さんが歌われている、ちょっと切ない歌です。
個人的に大好きで、いつかこんな世界観を物語にしたいと思っていました。
最後までお付き合い頂けたら幸いです。