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第十三話「旭光回廊会戦」①

 かくして、双方戦闘態勢に入る。

 

 龍驤麾下の航空隊は、現在現場付近に展開しているのは、ハイ・ゼロ一個中隊8機のみだが、500km後方の龍驤による遠隔統制状態にあった。

 

 それに加え、利根の瑞雲隊は全12機が周辺流域へ展開済み。

 

 敵側のエアカバーは未確認。

 

 利根の広範囲索敵網でも一機も確認されていないので、航空戦力ゼロと言えるのだが。

 増援前提の可能性もあり、利根達もその想定でいた。

 

 駆逐艦はどれも軽巡並みの大型駆逐艦……それも三隻もいる。

 

 ネウストラシムイは、試作プロトタイプ駆逐艦なので同級艦はいないのだが。

 バクーとティビリシは、かの有名な高速駆逐艦タシュケント級の二隻。


 いずれも軽巡並みの武装と40相対ノットの快速を誇る有力な駆逐艦揃いだった。

 クロンシュタットに至っては、重巡洋艦とは名ばかりの戦艦クラスの巨艦。

 

 オリジナル世界の正史では、未完成に終わった艦なのだが、第二世界の歴史では、ソビエト海軍もまともな陸戦が起こらなかった関係で、多大なリソースを投入された事で、日米に負けず劣らずの大艦隊を完成させている。


 正史ではプロジェクト71と呼ばれ、企画だけで終わったソ連史上初となるはずだった空母も、クラースナヤ・ズナーミャと言う名で実在していた程なので、正史のソビエト海軍とは質、量とも別格だった。

 

 重巡洋艦クロンシュタット自体、元々は金剛やレナウンに対抗すべく計画された艦であり、艦種としては巡洋戦艦と呼ばれるクラスの艦。

 

 重巡と称しながら、日本海軍最良の重巡洋艦と言われた利根よりも、遥かに巨大な総排水量4万トンにも及ぶ巨艦だった。


 レナ達から提供されたデータから、レーザー照準方式のレールガン搭載艦なのは判明している。

 その戦闘力は、過去の事例でもレナウンとほぼ互角に渡り合ったような強敵。

 

 戦力的に、単純比較すると、明らかに利根達が劣勢だった。


 対する利根達は、有明と夕暮、それに隠蔽状態のアマゾン。

 それに利根だけ……後方に龍驤と睦月、如月が控えているが、航空戦力の展開が終わっていないので、現時点では戦力外。

 由良もどちらかと言うと、指揮艦的な性格が強いので今回は、龍驤の護衛に付いている。

 

 ブリタニア組は、アマゾン以外は全艦メンテナンス中で待機状態。

 

 幸い航空優勢は利根達が握っているので、その点を鑑みれば五分以上の戦力と言えるのだが。

 正面から戦うには少々キツイ戦力差だった……何より、利根達は対人類戦の経験が皆無に近い。

 

 インセクター相手なら、豊富な戦闘経験データから、無敵に近い戦闘力を発揮するのだが……同じ示現体、それも人間の指揮官に率いられているとなると、戦術やデータも真っ白の状態で戦う事になる。


 幸い直近にレナウン達と衝突して、示現体同士の戦いについては経験を積めている事とクロンシュタット達との戦闘記録データを提供されている為、ゼロベースではないのが、安心材料ではあるのだが。

 いずれにせよ積極的に打って出れる状況ではなかった。

 

 龍驤からの航空増援が来れば、戦力比は一気に利根達が優勢になるので、ここは持久戦を挑むのが正解と言えたのだが。

 柏木としては、消極的に行動することで戦場のイニシアチブを失う事の方が問題と考えていたので、利根たちには積極的に討って出るように指示を出していた。

 

「……よし、戦闘開始! ガンガン進めっ! だがいいな……いきなり、撃つんじゃないぞ!」

 

 柏木准将の号令一下、戦闘が始まった……。

 

 やがて、双方相対距離が200kmを切る……最初の一撃を放ったのは、クロンシュタットの方だった。

 

「敵、砲撃来ます! 第一波砲撃……本艦の後方500m、及び左舷3000mに弾着を確認……他は見当違いの遠弾ばかり……まだまだ余裕ですわ」


「なんだ、やけに気が早いな……もう居場所は割れているから、牽制のつもりか? だが、以外に近いな……レーザー照準方式なら、対策済みじゃないのか? 青島中尉! 状況知らせっ!」


「あー、はいはい。レーザースキャンはナノマシン装甲で対策済みですよ。なんでまぁ、当てずっぽうで撃って来てるとしか思えないですな……散布界もめちゃくちゃです。おそらく、おっしゃる通り牽制砲撃で脅かして、こっちに撃たせてから、対砲迫精密射撃狙い……そんなとこじゃないですかね」


 ……青島中尉、普段から利根艦内で生活しているので、機関室で寝ていた所を割りと問答無用で艦橋に連れてこられていた。

 

 なお、役割はいつも通り……システムの微調整と情報分析を担当。

 

「向こうには、こちらのデータなんぞないはずだが……。ひとまず必中距離に入るまで、攻撃は控えるべきだな。ここはセオリー通りまずは航空攻撃でいいだろう! 龍驤、先鋒はお前だ! 対人類戦なんぞ、初経験だろうがしっかり頼むぞ!」


 任せると言っておきながら、柏木も普通に仕切っていた。

 

 利根も異論はまったくないし、むしろ気分が高揚していた。

 駆逐艦の二人は、いつになく静かなのだけど、実はやる気過ぎて、かえって静かになっていると言う……。

 

 士気高揚と言う面では、この柏木将軍直卒と言う状況……極めて、上手く働いていた。

 

「こちら、龍驤! こっちも緊急戦力展開中でテンワヤンワなんやで! とりあえず、スクランブルさせた第一陣は小型爆弾程度しか積んどらんのや……牽制程度にしかならんと思うがそれでもええんか?」


「構わん……敵のエアカバーは皆無だからな。まずは一発ジャブ打ってみるってとこだ。向こうの注意を上空に引きつけつつ、出方を伺う……多少落とされても構わんぞ」


「司令は、気楽にそう言うけど。落とされたら、わっちは構うんやで……皆、大事、大事なわっちの子供のようなもんなんやで!」


「だったら、無駄死にさせんように上手くやれ。どうせ安普請の消耗品だ……遠慮なく使い潰せ。それに、そんな事言ってると、また航空兵どもが騒ぎ出すぞ! ったく、連中なら、ここは喜び勇んで突撃するところだぞ? 先陣こそ武人の誉れってな……少しは見習え」


「わっちは、おっちゃん達とは違って、ノーダメージでスマートに勝つ主義なんや……。まぁ、ええわ……ここはわっちにお任せや! けど、対人類戦かぁ……インセクター相手みたいにいかんちゅうことやな。それに、人殺しは……嫌やなぁ……」


「そんなもん気にするな……向こうも大した人数は乗って無さそうだったからな。よほど運が悪くなきゃ、相手も死なねぇよ……ただ正直、どんなもんか戦ってみないことには解らないからな……。とりあえず、戦力はどれだけ出すつもりなんだ? これは春日井少佐に聞いたほうが早いな……すまんが少佐に繋いでくれ」


「せやな……少佐に繋ぐわ……春日井の兄ちゃん、あとよろしゅーなっ!」


 あくまで、軽いノリの龍驤。

 モニターの映像が龍驤の格納庫の春日井少佐に切り替わる。


「……こちら春日井……いやはや、いきなりの対人類戦闘とはまた穏やかじゃない……ですが、状況は理解してます。ひとまず、雷撃仕様の97式艦攻16機が第二陣として出撃中。上空警護のゼロ一個中隊も回す予定でしたが、有人なんで、敵艦隊がエアカバー機を随伴してないのであれば、見送りましょうか?」


「いや、敵は空母も随伴してないんだが……なんか隠し玉持ってそうだからな。念のために回してくれ。対人類戦闘なら、むしろ有人戦隊の方が良いかもしれん……無人機も人類艦の相手をするには明らかに経験値不足だ。演習で標的艦を相手にするのとは訳が違うだろう。だからこそ、その辺は、俺達のフォローが必要だ……悪いが、頼りにしてるぞ!」


「では、有人航空隊は自分が率いる事を許可願います……たまにゃ、飛ばないと腕が鈍りますからね」


「おいおい、航空隊司令直々とはな。まぁ、気持ちは解るから、好きにしろ……詳細は任せた!」


「了解、了解……腕が鳴りますなぁ! せっかくなんで、新型機で行きますよ! しばしお待ちをっ! おい、野郎ども、出撃だぞ!」


 春日井少佐との通信を切ると、柏木も戦術MAPを見る。

 

「無人ハイ・ゼロ隊、各機……敵艦隊を視程に入れました! 全機突撃を開始しましたっ!」

 

 利根の報告と共に、8つの青い光点が素早く半包囲の体制でウラル艦隊へ突撃していく。

 その様子を誰もが固唾を呑んで見守っていた。

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