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第十二話「重巡洋艦クロンシュタット」①

 「セルゲイ・ダイナトフ」

 ウラル連邦軍の特務少将の肩書を持ち、重巡洋艦クロンシュタットの艦長でもある。

 

 一言で言えば、熊のような大男。

 筋骨隆々の体躯と、短く刈り整えた髪と髭面。

 

 彼はウラル連邦軍のセカンド遠征軍の中でも、随一の精鋭艦隊の指揮官でもあった。

 

 ウラル側の特務艦隊……要するに裏仕事専門の艦隊を率いて、これまでもブリタニアの特務艦隊とも幾度となく交戦していた。

 

 当然ながら、精強なレナ達との戦いで、数多くの実戦経験と戦訓を得て独自進化を遂げており、ウラル側の量産型無人艦艇群とは別格と言われるほどには強力な艦隊だった。


 今回彼に命ぜられた役割は、同盟国でもあるシュバルツが近日中に行うとされている、大規模作戦行動……その側面支援となるセカンドへの侵攻。

 それに際しての、侵攻ルートの事前偵察、そして、別口でブリタニア合衆王国から依頼されている、女王ルクシオンの捜索と保護。


 そして、それら任務に伴うこの流域の制圧任務だった。

 

「クロン……状況はどうだ? 現在地の特定は出来たか?」


 セルゲイは野太い声とともに、隣に佇むと銀色の長い髪のシャプカ帽を被った細身の少女に声をかける。

 

「はっ! セルゲイ提督、我々の世界のコリドールに戻ってきたのは確かなのですが……未だに、詳細な位置特定ができていません。どうやら、我々の勢力範囲外のようです……あの男が事実を言っているのであれば、桜蘭とブリタニア接続回廊である旭光回廊のどこかだと思われますが、座標を特定するに足るデータがありませんので、それ以上の詳細については、解りかねます!」


 榛色はしばみいろの瞳を大きく見開いて、要するに解りません! と遠回しに応えているクロン。

 この辺は、実に正直……セルゲイもある程度、予想していた答えなので別に文句もなかった。

 

「……ふん、カイオス・ハイデマンか。あの若造、ナチス・ドイツの狂人イカレの子孫だかなんだか知らんが……本当にこんな所にブリタニアの王女殿下がいらっしゃるのかねぇ……。あの野郎やたら、情報通なのは良いが……肝心なところは教えねぇと来たもんだ……果たしてどこまで信用できるんだかな」


「さぁ? 我々はいつも通り与えられた任務をこなすまでです。いずれにせよ、今回の我々の任務は戦闘ではなく、王女殿下の安否確認、可能なら保護する事ですから、いつもみたいに後ろ暗い任務じゃないから、私としては少し気楽です」


「やれやれ、クロンちゃんは純粋だねぇ……そんな建前を本気で信じてるのかね?」


「……まさか、ルクシオン王女殿下は戦場の露と消えた……それを確定させるに足る情報、あるいはその痕跡の捜索……万が一生存しているようなら、速やかに消えてもらう……そういう事ですよね?」


「ご名答……ブリタニアの連中の話だと、無謀にも単身インセクターの巣窟に突っ込んでいったらしいからな……それで生き延びてるようなら、むしろ大したもんだ」


「ですが、我らが宿敵……ブラックウォッチのレナウン達が救助に向かったまま未だ帰らずと言う情報もあります。……奴らが、そんな簡単にインセクター如きに敗れるとは思えませんから、或いは……」


 そこまで言ったところで、クロンシュタットのヘイゼルの瞳が細められる。

 

「どうした?」


「……今の感じ、何かに見られた……提督! レーダーに反応っ!」


 彼女が報告した時点で、セルゲイは艦橋の天井付近をじっと見つめていた。

 そして、皆まで言うなと言わんばかりに右手を挙げる。


「お前も勘付いたか? 上に何かいるな……だが、本国の情報によると、この流域は孤立流域のはずなんだがな。……護衛艦ネウストラシムイ、ティビリシ、バクーに通達! 水平方向の警戒を厳にとな……クロン、急げ! 対人類戦闘準備だ! アンチレーザースモークをいつでも炊けるようにしておけっ!」


「は? 対人類戦闘……ですか? インセクター相手ではないのですか?」


「虫どもなら、こっちを見つけ次第、殺気むき出して突っ込んでくるし、我々にはクイーンシップがあるからな。そもそも奴らが大人しく遠巻きに監視なんてするものか! だが、これはどういう事だ……無人流域のはずではないのか? いったい何者だ……」


「確かに、データ上ではかつて、回廊内に桜蘭帝国の中継基地があったようですが……桜蘭の公式発表でも、重力爆弾による閉鎖遺失回廊となってます……まさか、桜蘭の生き残りがいるとでも?」


「その可能性が高いな……だが、こんな環境で生き延びたような連中なら、相当やばいぞ……そんな奴らとブリタニアの精鋭が合流……俺達にとっては、考えうる限り、最悪の可能性だな」


「て、提督……上空に機影、更にレーザー通信で通信要請です……」


「はっ……案の定か! しかし、手際が良いなんてもんじゃねぇな……この分だとすでに包囲されてるか、敵の照準にガッツリ捉えられてるってとこだな。だが、いきなり、ブチ込んでくるほど野蛮じゃねぇとでも言いてぇのかねぇ? まぁ、良いだろう、繋げ……クロン、お前らは早急に敵の配置を割り出せ、ついでにクイーンシップのマリオネットハンドラーの準備はどうか?」


「マリオネットハンドラーは問題なさそうです……レーザー通信、同期しました……敵との通信回線……開きます」


 クロンシュタットのブリッジのモニターに、桜蘭の将軍の姿が映る。

 

 やたら、ジャラジャラと勲章を並べたなんとも場違いのような礼服姿。

 その姿に違和感を感じながらも、セルゲイは鷹揚に敬礼をする。

 

「当方は、桜蘭帝国軍斑鳩基地司令の柏木城一准将だ……貴官らは何者だ? この流域は桜蘭帝国の領域であり、貴官らの行為は明確な不法侵入である。まずは所属と目的を告げるよう要請させてもらう」


 桜蘭の将軍……柏木が恭しく告げる。

 

 威圧感たっぷりのその礼服といくつもの勲章……相当な上級将校のように見えるが。

 階級自体は准将……なんとも珍妙な組み合わせだった。


「司令官直々のご挨拶とは、痛み入る……俺は、セルゲイ・ダイナトフ……ウラル連邦軍少将だ。すまねぇな……次元転移実験中にセカンドから本国に帰還するつもりが妙な所に出ちまったんだ……ひとまず当方に、領域侵犯や侵略の意図はないと名言する」


 いけしゃあしゃあと嘘を並べるセルゲイに、クロンシュタットが感心したように感嘆の声をあげる。

 黙ってろ……とばかりにセルゲイが視線を送ると、彼女も慌ててビシっと姿勢を正す。

 

 軍人を気取っていても、一皮むけば普通の年頃の少女とあまり変わらないのが彼女達示現体なのだ。

 セルゲイが軽く咳払いをすると、すすすーとモニターの外へと移動する。

 

 そのやり取りを見ていた柏木も思わず苦笑する。

 

「すまねぇな……今のは、見なかったことにしてくれ」

 

「いやはや、失礼……では、事故で遭難した……と言うことか? だが、それならば武装解除するなり、白旗を掲げるなり、それなりの意志を示すべきではないかな?」


「おいおい、こんなインセクター共がいつ襲ってくるか解らん場所で、武装解除とか無茶言うなよ! そもそも、公式データ上では、ここらは中立流域ってことになってるんだぜ? お前らこそ、なんでこんなところにいるんだ? まさか閉鎖流域を超えて来たっていうのか?」


「我々は桜蘭帝国、斑鳩星系所属の防衛艦隊だ。この近辺は中立流域ではない……かつてと変わらず桜蘭帝国の領域だ。その領域内に不審船がいれば、臨検に赴くのは当然だ、なぁに悪いようにはしない。貴官にも立場がある以上、その点については尊重すると約束しよう」


「マジかよ……するってぇとてめぇら、こんなとこで延々籠城してたって事かよ。ここはインセクターの巣窟じゃねぇのかよ……正気の沙汰とは思えんな」


「心配には及ばんよ。言いたいことはそれだけかな? いずれにせよ、我々は貴官らに退去勧告をさせてもらう。もし、遭難中で本国への帰還の見込みが薄いと言うことであれば、武装解除の上で、諸君らの受け入れ準備もあるがどうする?」


 事実上の降伏勧告に、セルゲイも眉毛をピクリと動かす。

 さすがに、どのような反応が返ってくるか……柏木にも読めないだけに、嫌が応にも緊張感が走った。

重巡クロンシュタット……。

ロシア製の排水量4万トン級の巨大巡洋艦です。

全長も250mもあって、30ノットの高速で突っ走れます。

防御力も最大装甲330mmとなかなかのもの。


こんなでも、戦艦じゃなくて、重巡洋艦。

ロシアさんの不思議なとこだけど、巡洋戦艦自体巡洋艦の延長なんで、間違っちゃいないんだけど。

限度があんだろ……一応、世界最大級の巡洋艦……なのかなー。


ちなみに、主砲は、B-50 Pattern 1940年型 30.5cm(54口径)三連装砲3基。

なんか……微妙。(笑)


クロンちゃんは、細々で白い髪……シャプカ帽……いわゆるメーテル帽子をいつも被ってる子です。

割りとツンデレ、かっこもちょっとメーテル風。(笑)


セルゲイは、CV大塚が鉄板だと思います。

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