死闘の中の思考!
死闘の最中、グリーンの心に去来するものは!?
拳が来る。それをかわしてカウンターを入れる。それを一歩前に出る事で威力を抑えつつ、更に拳を繰り出す。絡めて関節を破壊しに行く。するりとかわされ、間合いを空けられる。間合いを詰めて攻撃の密度を上げる。時折魔斬波を織り交ぜ、攻防のタイミングを狂わせる。しかしそれに余り動ぜず、蹴りを繰り出してくる。飛びすさってかわし、再び間合いを詰める。
致命打を避ける為に、幾つかの打撃をお互いが食らう。この繰り返し。
紅虎との激しい攻防の中、グリーンは思い出していた。自分自身の、過ちに満ちた過去を。
幼い頃から武の天才と呼ばれ、力でもって多くの人をなぎ倒した。誰も自分に敵わなかった。天狗になりきっていた頃など、道を行けば武道家。嬉々として全てなぎ倒した。そうして付いた二つ名が『風神』。誰も止められない。誰も遮れない。吹き荒れる風は、気の向くままに全てをなぎ倒していった。
ある日吹き荒れる風は、あっさりと止められた。止めたのは、ただ一度のビンタ。今までのどんな攻撃よりも、痛かった。
吹き荒れていた風は、止んだ。
それから、その人と幸せな日々を過ごした。とても、とても幸せだった。やがて家族が増え、幸せの絶頂であった。
が、不幸は過去からやってきた。その冷たく黒い風は、家族を奪った。
慟哭し、荒れ狂った風は、再び全てをなぎ倒した。悲しみに暮れながら。
そして呪った。なまじ自分が力を持っている為に、強かった為に、家族は死んだ。こんな力など、持つのではなかった、と。
それから、長官に出会い、力の方向性を教えてもらった。使うべき場所、向かうべき道。
フフフ、こんな時に何を思い出しているんでしょうねぇ。
光月は内心、笑った。
自分の積み上げた力故の過ち、そして罰。私はすっかり疲れました。
だけど、力を一度持てば、その呪いからは死ぬまで逃げられない。ならば自分の満足のいくように、人が望んでくれるように使う。この力は、誰かを守る為に、強き力と戦う為にある!それが彼女との誓い!
私は、負ける訳には行かないんだ!
「うおぉぉぉぉ!!!」
グリーンの体を、その意志だけが支えていた。
戦闘員達を全て片づけ、ブルー達はすぐさまグリーンを助けに行こうと振り返った。そして、その凄惨な様を見て、動けなくなった。
グリーンも紅虎も、お互いの爪と風でズタボロになっていた。口から鼻から流れた血で体は赤く染まり、息は上がり、お互い立っているのがやっとという様相だった。
周囲にも血は吹き飛んでおり、その攻防の激しさを物語っていた。
「……次の一撃で最後だな、光月」
「……えぇ、そうでしょうね」
お互いに独り言のような音量の会話。見ていたガドガイアーの誰も止める事ができなかった。
「最期にもう一度、聞いておこう。力とは、何だ」
紅虎の言葉を受けて、グリーンは小さく息を吐いて、それから答えた。
「力とは、どんな綺麗事で飾っても、要はただの暴力です。ただそれだけではね。しかし力をどう使うのか、それこそが重要なのです。
私は、この私の力を、弱き者を守る為に使う。不当な暴力に晒されないように。それこそが、私の正義」
「ちっ……貴様とは分かり合えそうにないな」
「いいえ、私はあなたの気持ちも分かりますよ。かつての私がそうだったから」
「……だからといって最後の一撃、手を抜いてくれるなよ」
「もちろん」
言葉が途切れて、一呼吸、二呼吸置いて、二人が動き出す!
「おおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
「ああああぁぁぁぁあぁぁ!!!」
そして、決着がついた。
次回決着!




