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環境戦隊ガドガイアー  作者: 黒井羊太
第四話「断固粉砕! 怒れる光月の戦う理由!」
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光月への助っ人!

光月を救ったのは!?

 虎男は、空を切った自分の拳をしげしげと見つめた。それから、光月を横から蹴飛ばし、虎男の拳を回避させた男を見やる。

「誰だ、貴様」

「お前の、敵さ」

 言って男は身構える。

――この男も……そこそこ出来るようだな。

「くくく……面白いな! つまらん任務だと思っていたが、今日はツイている! 強者に二人も出会えるとはな! 笑いが止まらん!! ハーハッハッハ!!」

 地を震わすような笑い声が道場に響く。それとは対照的に、対峙している男は静かに身構えたまま呟く。

「貴様はカリメアだな」

「ほぅ? カリメアの名を知っている奴などそうそういないと思っていたが、随分有名になったものだな」

「やかましい! 貴様ら悪は、この海隼人が容赦せん! 覚悟しろ!」

 隼人が先に仕掛ける!右、左と拳を突き出すが、虎男には当たらない。余裕の表情を浮かべたまま、軽口を叩いてみせる。

「どうした!? 当たってないぞ!? ククク、ほれ! 足下が留守だ!」

 パンッ!と、隼人はもろに足払いを食らう。

「くっ!?」

 半回転して頭から落ちそうになるが、何とか手をつき受け身を取りつつ距離を置く。

――強い!!

 動揺を隠せないでいると、それとは対照的に虎男は大きく溜息を吐いて見せた。

「まだまだだな。さっきの男の方がまだ楽しめた。貴様は……その拳法を身につけたのは空手がベースだな。それから多少ストリートファイトに身を置いたようだが……まだまだ実戦が足りなすぎる」

 虎男の淡々とした指摘に、思わず寒い物が走る。まさにその通りだったからだ。たったあれだけで、そんなにも見抜かれてしまうのか!?

「先ほどの男はもっと……人を破壊しているな。一対一、多対一、奇襲……ありとあらゆる状況で戦い慣れていた。悪くはないが……貴様ではちと、物足りぬな」

「何を……力をただただ人を傷つける為だけに使うお前に、正義のないお前が何を言う!」

 ビシッと指さして叫ぶ隼人。それを見て虎男はククク、と小さく笑う。

「何がおかしい!」

「クク……いや、余りにも幼稚な意見を真正面から言われたのでな……では問おう。正義とは何だ?」

「何ぃ?」

 虎男の凄味のある睨みに身構えながら、その質問の意図を探る。

 虎男は、身構える隼人に対し、紅虎は構えを解いてもう一度問うた。

「貴様が掲げる正義とは何だ?」

 何をしているのか、言っているのか分からない。虎男の真意はどこにあるんだ?!

 隼人は静かに混乱していた。

「……正義とは、人として正しい行いだ! 力を思うがまま使うのは悪だ!」

 自身を奮い立たせるよう、大きな声で答える。そうだ、俺は間違っていない。人を傷つける為に力を振るうのは悪に決まっている!

 しかし虎男は静かに笑う。

「ククク……善悪二元論か。如何にも人間らしい、単純にして誤解のある思考だ」

「……何が言いたい?」

「質問を変えよう。何故、強くなりたかった?」

 虎男の静かな質問。隼人は即答しかねていた。何を言っても、自分の思考より虎男の方が深く、そちらの言葉に納得してしまうのではないかと不安になる。そして何よりも、自信を持って即答できないでいる自分に戸惑っていた。

そんな葛藤を見せぬようにしながら、必死で頭を回して出した言葉を口にする。

「正義を、実行する為だ!」

 隼人の力強い言葉。だが、その言葉は勢いとは裏腹に空虚であった。そんな隼人の内なる葛藤すら見透かしたように、虎男は静かに笑ったまま話し出す。

「……正義の実行の為に力を、か。その肝心な正義の定義が、お前の中では言語かもできずあやふやで、そんなにも揺らいでいるのにか。フフフ……滑稽だな」

 言い返せなかった。本当に自分は正しいのか?どんなに答えを返しても、この虎男には心の内が見透かされ、嘲笑されるのではないかと妄想してしまう。

「はっきりと指摘してやろう。貴様は己の力で他人をねじ伏せる事に価値を見出してきた人間なんだよ! そうやって、『自分の正義』を他人に押しつけてきた! 『どうだ、俺が強い、正しいだろう!』とな!

強いものこそ正義! これがこの世の基本原理だろう!! 思い出せ、お前は本当に初めから正義などの為に力を欲したか?」

 虎男の言葉に、揺らぐ。俺は……何故強くなりたかったんだ?誰かを傷つける為?何かを守る為?

「認めろ。力こそ正義! 弱き者は強き者に従う! これこそが! この世の単純にして絶対論理! 万人が万人とも、力を欲する時は誰かを傷付けたい時だ! それから目を逸らすな! 貴様は貴様が嫌悪する悪と同質の存在なんだよ!」

 ハーハッハッハ!と巨大な声で笑う虎男。

 隼人からは、最早戦意は無くなっていた。いや、それどころではなくなっていた。隼人の思考は奈落の底へと落ちていた。

俺も、誰かを傷付ける為に力を求めていた。これは事実だった。そうして手に入れた力は、悪なのか?俺が最も嫌いな悪?この手で俺は悪を指さし、自らを正義と唱えていたのか?

ショック状態の隼人。大声で笑い続ける虎男。そこに、

「詭弁ですね」

 一人の男の声がする。二人が振り返った先にいたのは……光月だ。

「確かに、きっかけは人を傷つける為、そういう事もあるでしょう。ですが、大事なのは今です。その力でもって、何を成すか、これこそが大事なのです。……海君はその力でもって弱き人の為に戦っている、傷ついている。これを正義と呼ばずして何と呼びましょう」

 優しい語り口調で、光月は隼人を気遣う。

「先生!」

「先ほどは助けていただきましたね。ありがとう」

 ニコリと笑いながら礼を言う。その笑顔に、隼人は救われたような気持ちになる。

「詭弁か。俺の言葉がそうならば、お前の言葉は空虚な自己弁護だな」

 虎男は少し憮然とした表情で言う。対照的に、光月は微笑を浮かべたまま応える。

「それでも結構。今、私は私がすべき事を理解し、実行するだけ。……それは、貴方を止める事です!」

 バッと身構える!光月の全身から気迫が発せられる!

 それを受けて、虎男は一瞬身構えるが、すぐに解く。

 その不可解な行動に、光月と隼人は戸惑った。だがその真相はすぐに虎男から語られた。

「ちっ……時間だ。もっとお前らと遊びたかったんだがな。まぁいい。こんな面白そうな奴らと出会えただけ収穫としておこう」

 言って虎男は、何もない空間に爪を立て、引っ掻く。すると、爪痕が不思議な穴になる。以前ボムマウスも使っていた次元の穴だ。

「! 待て! 逃げるのか!?」

「時間だからな。決着は次に持ち越しだ。……貴様らの名を聞いておこう」

 まるで扉をくぐるように体を穴に沈めていきながら、虎男は問うた。

 光月は少し悩んだが、

「光月。光月龍です」

 正直に応えた。それに倣って隼人も自分の名を名乗る。

「光月と海か。覚えておこう。俺の名は紅虎ホンフーだ。よく覚えておけ」

 言い終えると、体を完全に穴へ沈め、そして消えていった。

紅虎…恐ろしい敵だった。

しかしこの状況は…

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