エピローグ
戦いを終えたガドガイアー。平和を守り、愛しき日常へと帰っていく。
平和になった街を、マキシムは光月と歩いている。今回受けたブラックの傷はほぼ完治したものの、光月が念の為にと家まで送ってくれる事になったのだ。
「イタタ……」
「まだ障りますか?」
「イヤ、大丈夫ダ、先生」
実際はあちこち痛いのだが、マキシムにとってはこのくらい何でもない風に装ってしまえるレベルだった。
「……マキシム。君に言っておかなければならない事があります」
改まった様子で光月が切り出す。
「何ダイ? 先生」
「今回、私の危機を救ってくれて本当にありがとう。流石に死ぬかと思いました。しかし、君は少し自分自身を蔑ろにしている気がするんですよ」
「蔑ロ?」
「そう。『誰かを守る為なら自分がどんなに傷ついても良い』、といいますか……確かにその考え方は素晴らしいです。ただ、私たちは共に戦う仲間。私だってあなたに傷ついてほしくなんかない」
「……」
確かに、言われればそうなのかもしれない。危機に陥ると、捨て鉢的に自分の体を盾にする。でも、それはマキシム自身の強い意志の表れでもあるのだ。
「ダガ先生……」
反論を言おうとした瞬間、前方から猛スピードでマキシムに何かが体当たりした!
「グフッ!!」
完全に油断していたのか、それはマキシムの鳩尾に直撃した。しばらく目を白黒させてから、未だ自分の胸元から離れないぶつかってきたものを見た。
「ア……」
それは、親方の娘、多佳子だった。マキシムの胸に顔を埋めて泣いている。胸元を掴む手は、例えマキシムが全力を出したところで離れないだろう、そう思わせるほど強い力だった。
「多、多佳子サン……?」
「馬鹿っ!! 心配したんだから!!」
いきなり怒鳴られる。一瞬、何について言っているのか分からなかったが、すぐに自分を心配してくれていた事に気づく。
光月の方を向くと、光月は優しい笑顔で一つ頷いた。
――そういう事か。
俺は、戦う中で、俺以外の人間が傷つくのが嫌だった。それは同時に、自分ならいくら傷ついても良い、という考え方になる。俺には、何もないから。姉さんを失ってからずっと、そう思っていた。
だが、違っていたのだ。今こうして俺の事を心配して、涙を流してくれている人がいる。俺が傷つく事で悲しむ人がいる。
俺は、守る為に傷つき、却ってそれが人を傷つけていたのだ。
「ゴメンヨ、多佳子サン。……ゴメン」
「……うん……」
頭を撫でてやりながら、優しく呟く。
「お~、元気で帰ってきたか!」
いつの間にか親方が現れている。顔を見て驚いた。いつもの元気はつらつな態度なのだが、顔にははっきりと疲れが見える。
――……この人も俺が心配で眠れなかった……?
胸が、痛む。そうだ、彼らの為にも、俺は無事に帰らなきゃならないんだ。守るというのは、俺自身も含めての事なんだ。
「……っておいおい。往来で抱き合うたぁ若いねぇ、二人とも」
親方の呆れた声。その言葉に冷静さを取り戻す多佳子。みるみる顔を赤くして
「!!! きゃーーー!!」
叫びながらドンっ!!とマキシムの胸を突き飛ばす!
「!! ゴフゥッ!!!??」
傷口を尋常ではない多佳子の力に突き飛ばされ、思わずうめき声を上げ、その場にうずくまるマキシム。
「あっあっ! ごめんなさい!! 痛かった!?」
自分のしでかした事に気づき、謝るものの、どうしたらいいのか分からずおろおろする多佳子。それを見てあきれる親方。
確かに胸の傷は痛かったが、それは自分が守り抜いた平和の証だと思うと、ブラックは幸せな気持ちでいっぱいだった。
ブラックは誓いを新たに、これからも戦い続ける!
『次回予告』
ブラックコト、マキシムダ。今回モ見テクレテアリガトウ。
守ルトイウ事。ソレハ自分自身モ含メテトイウ事ニ気ヅカサレタ事件ダッタ。ソレハトテモ大事ナ事ダ。
次回ハ!
対カリメア組織ガ編成サレタ!ソノ名モ『HIDE』!シカシ結成間モナク壊滅状態ニ!?
一体誰ガコンナ真似ヲ!怒リニ燃エルアノ男ガ立チ上ガル!
次回、「断固粉砕! 怒れる光月の、戦う理由!」
次回モ、君ノ心ト! ネイチャーコネクトぉ!




