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環境戦隊ガドガイアー  作者: 黒井羊太
第三話「絶対守護!優しきマキシムの叫び!」
18/33

捜索の四人!

ブラックとの連絡が途絶えた。果たして彼は無事なのか!?

 沈痛な面持ちの長官が、重たい口を開く。

「諸君……すでに聞いているかもしれないが、昨日からマキシム君と連絡を取る事ができない状態が未だに続いている。本人からの報告で、太白山に入山した事までは分かっているのだが、下山した様子がない。……一人で調査に臨み、何らかの障害が起こり、帰れなくなってしまったものと思われる……」

 そこにいる全員が、既に勘づいていた。そして誰ともなく呟く。

「カリメア……」

「恐らくはな。マキシムの件と太白山での連続行方不明未遂事件、どうやら繋がりそうだ」

 沈黙に包まれるオペレーションルーム。

 各々、ショックを受けているのだ。仲間を失うかもしれない恐ろしさ。それに、あのマキシムがあっさりとやられたりするものだろうか?まだ理性と感情が一致出来ていない。

 そんな中、光月が沈黙を破る。

「では我々全員で調査する必要がありますね」

 その言葉に、長官はゆっくりと、そしてはっきりと頷く。

「その通りだ。本日早速、君たちに行ってもらう。時刻は16時丁度。これは夕方に事件が起こっている為だ。全員それまでに山の地形を頭に叩き込んでおいてくれ!」

「「了解!!」」


 四人は夕方を待って、太白山に登る。そして打ち合わせ通り、変身した四人それぞれバラバラに別れ、山全体を捜索する事になった。

「みんな! 何かあったらすぐに連絡するんだ!」

「「了解!」」

 レッドの号令の後、四人はそれぞれ歩き出した。



 どれくらい山を歩いただろうか。山の中なので時間の感覚が鈍いが、なかなか得る物は少ない。一度全員に声を掛けてみようかと思った矢先、それを見つけた。

「こんなものがこんな所にあるなんて……」

 グリーンは思わず呟いた。確かにそれは、あまりにも場所にそぐわないものだった。

 山中、恐らく人目のつかない崖の下。日の光が弱くなって分かりにくいが、棺にも似た形の機械であった。ただ棺と大きく違うのは、上部の一部がガラスで出来ていて、中を覗けるようになっている。

「これは一体…?」

 近づく前に、みんなに連絡を取る。

「皆さん、聞こえますか?こちらグリーン。太白山東部崖の下で怪しい機械のようなものを発見しました。こちらへ至急来ていただけませんか?」

 ……返事はない。

「おや?」

 不思議に思って、通信機のスピーカー部分に耳を近づける。

 ザー……という雑音の中に、叫び声が聞こえる!サッと青ざめるグリーン!

「皆さん!? 皆さん!」

「ったく、大の大人ががたがた騒いでんじゃねぇよ」

 声は、後ろからした。聞いた事のない声にばっと振り返り、身構える!

 そこに立っていたのは、人間とはかけ離れた姿をしたものだった。

 牛、にも見える風貌。牛の名残なのか、巨大な角を二本携えている。そして何よりその体つきが異常だった。全身是筋肉と言わんばかり、無駄な脂肪など一滴も存在していない。

「! カリメアの怪人……!?」

「そんな深刻に身構えるなや。無駄だから」

 面倒くさそうに頭の後ろをボリボリ掻いている。その表情からも(顔は牛だが)はっきり読み取れるほどに、面倒くさそうだ。

「? どういう事です?」

「てめぇは、俺に、殺される」

 途端、膨れ上がる殺気!一瞬背筋を冷やしながらも、グリーンは相手が動く前に先制攻撃を入れる!

「はぁぁぁぁあ!!」

 ドムッ!!

 渾身の右正拳突きを繰り出す!それは牛の怪人の腹部に突き刺さる!

「まだまだ! ウィンドパワーチャージ! 魔斬破!!」

 真空の刃と化した空気が次々と牛の怪人に襲いかかる!

 ズバズバズバッ!!

 怪人の足、腕、顔、至る所に傷をつける真空の刃。グリーンは出し切る直前に後方へ飛び、間合いを取り直す。

 改めて相手を睨みつけ、グリーンはぎょっとした。牛の怪人は、血をそこかしこから流しながらも、防御どころか身じろぎ一つしていない!

 そして不適な笑みを浮かべて言った。

「なかなか面白いじゃねぇか。だが、この程度だな。死ね」

 ぶおん。

 牛が、巨大な右腕を持ち上げる。それは明らかに牛の間合いの外であったが、はっきりと聞き取れた。

瞬間、グリーンの体は牛の方へと吸い寄せられる!

「!!」

 たちの悪い冗談のようだった。一瞬にしてグリーンは牛の間合いに入れられてしまう。

 この位置はまずい!

 即座にグリーンは膝を折る。後ろ受け身を取るようにして、反り返る!

上半身を何とかして下げなくては!早く!早く!

 ごう。

 天を仰ぐ形になったグリーンの上を、巨大な影が轟音とともに過ぎていく。

 同時に荒れ狂った風が襲いかかる!グリーンの体はまるで紙クズのように吹っ飛ばされてしまう!

「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

 数メートル先に落ちる。……右足の骨と右腕の骨が折れている。全身に痛みが走る。直撃ではないのにこの威力とは……!

 牛は、吹っ飛んでいったのを意外そうに見つめ、そして溜息を吐いた。

「はぁぁ……避けんじゃねぇよ。却って痛い目に遭うだけだぞ?」

「あ、あなたは一体何者ですか?」

 苦痛に顔を歪めながら何とか言葉を絞り出すグリーン。

「ん? あぁ、名乗ってなかったな。死人になる奴には必要ないかもしれんが、まぁいい。俺の名は『ストロングブル』。察しの通りカリメアの怪人だ」

 答えた後、あぁ面倒くさいと呟きながら、ストロングブルはその辺に生えていた大木を片手で引き抜いた。

「一体何の目的でこんなところに!?」

「あぁ? ……洗脳マシーンの試運転だ。てめぇら人類を、思いのままに動かす方法なんだが……しち面倒くさいと思わんか? 俺ならさっさと暴れて……」

 後半は段々と小さく呟いているので聞き取れない。

 とにかく時間が出来た。ここでもう少し時間を稼げれば動けるようにはなる……!

 が、それを許してくれるほど、カリメアは優しくはない。ギラリと睨みつけてくる。

「あぁ、満足したな? 今度は躱せないように木で叩き潰してやる。じゃあな」

 ぶん。

 10メートルはあろうかという大木をいとも簡単に振り回し、グリーンに向かって振り下ろす!

 体が……思うように動かない……!避けるには……手段がない……

「……ここまで、ですかね」

 グリーンの口から諦めの溜息が、漏れる。その目は、閉じられる。

 どん。

 黒い衝撃波。巨大な地鳴り。鳥たちが逃げ出して、そして静寂が帰ってくる。

グリーンまでもが!?恐るべし、ストロングブル!

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