レッド、命がけの作戦!
葛岡の清掃工場が危ない! レッドの取った作戦とは!?
葛岡清掃工場。今日も街中のゴミが運ばれてくる。
「はい、一回停まって~」
警棒を持った警備員が、清掃工場へ入ろうとする清掃車を停める。ここではあの清掃車連続爆破事件以来、厳重なチェックが入るのだ。
「後ろ見せてもらうね~」
と言いながら、後ろのゴミを確認する。と言っても、目視だけなので大した成果はない。が、一応決まりなのでやっている。
「はい、行って良いよ~」
その言葉を待って、清掃車は動き出す。
警備員は後ろに気を取られすぎて、誰一人気付かなかった。運転手が戦闘員になっている事を……
「フフフ……潜入成功だな……」
ボムマウスは一人笑う。彼もまた、別の清掃車の運転手を装ってあっさりこの厳重な警備体制を突破したのだ。そして彼の前には同様の手口で集まった、十人程の戦闘員。
ボムマウスはバッと手を振り上げ、命令を下す!
「戦闘員共! 作戦通りに行けぇ!」
「「ウィーー!!」」
敬礼して、清掃工場めがけて走り出す戦闘員達!
ニタッと笑いながらそれを満足げに眺めるネオ・ボムマウス。
「これでこの作戦……成功したも同然だな……」
後は待つばかりである。
「ボムマウス! 追いついたぞ!」
走り込んで、レッドが叫ぶ!その余りに意外な来客に、流石に動揺するボムマウス!
「貴、貴様!! あの爆発で生きていたのか!?」
「お前を倒すまでは俺はやられはしない! さぁ、行くぞ!」
身構えるレッド!それに対し、ボムマウスは余裕だ。
「流石にお前が生きていたのは少しビックリさせられたよ……だがな、良いのかな? そんなに強気で。俺が本当に一人だと思ったのか?」
そう言いながら、トレンチコートの下から小さなスイッチを取り出す。
「これが何だか分かるか? ……この清掃工場にしかけた爆弾を一度に爆発させるスイッチだ。あそこにはまだ大勢人が残っているなぁ? ん?」
レッドは、一気に血の気が引くのが分かった。それを押されたら……清掃工場は爆破され、機能を完全停止するだけに留まらず、そこで働く多くの人々に人的被害が及んでしまう!
「既に仕掛け終わっていたのか……!! ……卑怯だぞ!」
レッドに出来る事は、罵倒する事だけだった。しかし、それはボムマウスにとって罵倒にはならない。
「卑怯? いい言葉だ。そうだ、私は卑怯なのだ! だから清掃工場を人質にとって貴様を嬲り殺す事が出来る! やれ! 戦闘員共!!」
「「ウィーー!!」」
ボムマウスの声に従い、戦闘員達が一斉に動き出す!身構えるレッドだったが、
「おっと! 動くなよ~? うっかり指が滑ってスイッチを押してしまうかもしれんぞぉ」
「くっ……!!」
ボムマウスの言葉に、動く事が出来なくなってしまった。
ドガッ!バキッ!ボスッ!
袋叩きにあうレッド!
「ガッ! ……クゥ……! グアッ!」
呻き声を上げるしかできない。動く事も、防御する事もままならず、ただひたすら戦闘員達の攻撃を耐える。それしか出来ないのだ。
その様子を見て、笑い声を上げるボムマウス!
「ハァーーハッハッハ!! 良い眺めだな!? ガイアーレッド!! 何もする事が出来ぬまま、死ね! 死ね! 死ねぇ~~~!! ハァーーハッハッハ!!」
ひとしきり笑った後、その表情はみるみる消えていった。まったく諦めていないレッドの力に満ち溢れている目を見たからだ。ボムマウスがこの世で最も嫌いな目だ。苛立ちが募る。
「止めろ、何だその目は! そんな目をするんじゃない。命乞いをしろ! 私の前で無様にのたうち回れぇぇ!!」
怒鳴るが、レッドの顔は背ける事もなく、じっとボムマウスを見ている。そんなレッドの顔に、どうしても絶望の色を塗りつけてやりたくなった。
「そうか……そんなにこのスイッチを押して欲しいか……ならば、押してやるよ!!」
大袈裟に振りかぶり、スイッチを押……
「止めろ!」
レッドが思わず叫ぶ!その声に目を細めるボムマウス。
「そうだ、その声だ……だが、もう遅い。スイッチ、オン」
カチリ。
……
「……ん?」
期待していた音が鳴らない。何も起こらない?そんな訳はない。確かに戦闘員共に爆弾を設置させたはず……故障か?
カチリ。
……
カチリ。
カチリ。
カチリ。
「何故だ!? 何故爆発しない!!」
怒り狂って、スイッチを地面に叩きつける!パキッと軽い音がして、スイッチは壊れてしまった。
その様子を見て、レッドに力がみなぎる!
「フフフ……間に合ったようだな! この勝負、俺達の勝ちだ!!」
バッと立ち上がり、即座に周りにいた戦闘員二、三人を一瞬にして片付け、間合いを取るレッド!!
言葉の真意、というより、状況が全く分からないボムマウスには、小さくオウム返しする他無かった。
「間に合っただと……? 何の……話だ……?」
動揺を通り越して呆然としているボムマウス。レッドは得意げに言葉を続ける。
「俺が、本当に一人だと思ったのか?」
ついさっき、ボムマウスに言われた言葉をそっくり返してやる。
言われてハッと気付く。確かに、わざわざ一人で来る理由など無い!
「ま、まさか!! 仲間が解体しただと!?」
はっきり答える代わりに、レッドは不敵に笑って見せた。
一方清掃工場では……
「アブソリュート・プロテクション!!」
キィィィィィィィィン!!
ドムッ!!
ブラックが最後の一個を爆発させていた。
アブソリュート・プロテクション。勿論自分に使えば絶対無敵の鎧となる。それを一つに限り対象物に纏わせる事も可能なのだ。仕掛けられた爆弾をアブソリュート・プロテクションで覆い、圧縮させる事で爆発させる。回りに爆風どころか爆音すら漏れずに済んだ。
解体、というにはあまりに雑ではあるが、ブラックにとっては一番早い方法だ。
「レッド……」
終わるなり、心配そうな声を出す。
そう、レッドがブラックに授けた作戦だったのだ。レッドが囮になっている間、恐らく清掃工場に仕掛けられた爆弾を解体する。
その話を聞いた時は、レッドの正気を疑った。が、
「俺は俺の責任を果たしたいんだ。そのための痛みならいくらでも耐えてみせるさ! それに俺とお前、どっちが爆弾処理に向いているか考えれば、これがベストなんだ!」
という言葉に押されてしまった。怪我の事も触れたが、最早言葉はなかった。
「早ク行カネバ……レッド待ッテテクレ……」
巨体が黒い風のように、一路レッドの居る所へ。
「お前に甘いと言われた……。そう、確かに甘かった! だが! 人は成長する! 昨日までの俺とは段違いに強いぜ!」
ビシッと指差しながら叫ぶレッド!言葉の意味は良く分からないが、とにかく凄い意気込みだ!
「ふ、ふん! 全ての爆弾を解体したから何だというのだ! お前はもうボロボロではないか!」
動揺を隠しながらボムマウス。そうだ、こんなボロ雑巾みたいな奴など、恐るるに足らない!来る奴一人ずつ始末していけば何の問題もない!
「行けぃ! 戦闘員共!」
「「ウィーー!!」」
一斉に襲いかかる戦闘員達!!しかしレッドは小さく笑う。
「!?」
「フフフ……俺の能力の真価!! 見せてやるぜ!! フレアーーーーーー・フィストォォォォォォ!!」
キィィィィィィィィィン!!
掛け声と共に、レッドの腕が真っ赤に……いや、真っ白く染まる!
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 俺の、怒り!!!!」
戦闘員めがけて殴りかかる!!当たる直前、
ボッ
小さな音がした。そして戦闘員のレッドの拳が触れた箇所を含めた周辺が少し煙を上げ、黒く焦げた痕だけを残し消えてしまった。
「なっ!?」
これに驚いたのはボムマウスだ。
触れたところが蒸発しただと!?馬鹿な!……こいつまさか、自身の感情の昴りによって温度が変わるのか…?
などと冷静に分析している間にも、戦闘員は一人、また一人と倒されていく。
「さぁ、お前が最後だぞ! ボムマウス! 今度は逃げる隙など与えはしないっ!!」
ビシィっとボムマウスを指差す。
ボムマウスはしばらくの間動揺し慌てていたが、一つの考えに至って冷静さを取り戻した。
「フフフ……追いつめたつもりか! それで!」
突然強気になったボムマウス!レッドが警戒していると、トレンチコートの下に両手を突っ込む!
「!?」
「状況は未だ! 私の方が有利だ! 例え一対一でも、私は決して負けない!!」
バッと取り出したのは、新型ネズミ爆弾!それも6つも!
「な!?」
これには流石に動揺した。レッドの思っている通りの使われ方をしたら……!!
「止めろ!」
思わず叫ぶが、言った所で止めるボムマウスではない。レッドの声に歓喜の顔で、
「実に良い声だ……だがこれで終わりだ!! いけぃ!!」
予想通り、ボムマウスはネズミ爆弾をばらまいた!!奴の狙いは……レッドの後ろにある清掃工場だ!!
「!!」
目を剥き驚く!しかし一瞬後には爆弾を処理すべく立ち向かう!!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
ボッ!
フレアー・フィストで蒸発させる!!まず一つ!!
「次!」
何とか届く範囲にもう一つがある!
ボッ!
二つ!次はどこだ!?
探している内に、ネズミ爆弾が動き出す!!その生物的で不規則な動きにレッドは翻弄されてしまう!
「くっ!?」
ね、狙いが定まらない……!!
右往左往するレッドを眺めて、ボムマウスは笑う。
「ハーーハッハッハ!! 無様だな! ガイアーレッド! さぁ行け可愛い子達よ!! 清掃工場を爆破するのだ!!」
「「チューー!!」」
呼応して叫ぶ!レッドに絶望が襲いかかる!!
が、次の瞬間、意外な事が起きた。
「「チュ!? チューー♪」」
今までバラバラに走っていたネズミ爆弾が、一斉に同じ所をめがけて走り出す!!
「!?」
「な、何だ!? お前たち、真っ直ぐ走れ!」
ボムマウスの言葉も空しくネズミ爆弾は見当違いの方向へ走り続ける!まっしぐらに走ったその先には……
「みんな!!」
「貴様達は!!?」
ブルー、オレンジ、グリーンの三人が立っていた!そしてその手には……籠?
「間に合ったようですね」
グリーンがいつもの口調で呟くと、籠を下に置く。ネズミ爆弾達はその籠に向かって走り出す!!
「何故だ! お前達、何故そっちに走る!?」
ボムマウスが叫ぶ!!そして、籠に秘密があるのかと凝視した。……目が丸くなった……
「チ……チーズだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?」
そうなのだ!籠の中にはチーズ!
やがてネズミ爆弾達は籠の中に入り、チーズに貪りつく。
「やれやれ、これで……っと」
ふわり、と籠の周囲の空気が変わる。グリーンが籠周辺の空気を遮断したのだ。
「ブルー。よろしく」
「了解。ウォーターパワーチャージ!! ウォーター・スライサー!!」
ブルーの掌から水がこぼれだし、そして宙で三日月状に固まる。それを握り、まるで刀のように籠ごとネズミ爆弾達を斬る!!
シパン!!ドム!!
爆発したが、爆風は来なかった。グリーンが籠周辺の空気を遮断しているおかげで爆風は籠の外に漏れなかったのだ。
この一連の流れにレッドは驚いた。
「す、すまない! みんな!」
「当然の事よぉ☆」
「全く……馬鹿が一人で突っ走るんじゃない」
「まぁまぁ、無事で何よりですよ」
順に答える三人。
「しかし……この籠は?」
レッドが疑問をぶつける。するとオレンジが答えてくれた。
「これねぇ……実は長官が……」
(回想)
『レッドの報告によると、敵はネズミ型の爆弾を所持しているようだ。ネズミと言ったら………チーズだな、美弥希君』
『はい、長官』
「え、えぇ!? 長官としてその考えは……いいの?」
『みう……あなた○ムとジェリー、見た事無いの?』
「いや、知ってるけどさぁ……アレ漫画……まぁ、いいや。了解」
『じゃぁ、こっちから転送するから受けとってレッドを助けてあげて!』
『頼んだぞ、諸君』
(回想終了)
「と言う訳なのよ……」
「そっかぁ、流石長官だ!!」
レッドは素直に喜んだ。
しかし喜べない奴もいた。
「おいこら!! 何でネズミがチーズ食べるんだよ!!?」
ボムマウスだ。あまりにおバカな考えに阻止されて最早泣きそうな顔だ。
「おい、お前。お前はトムと○ェリー見た事無いのか?」
ブルーが嘲りを交えながらボムマウスに言う。その言葉に、いよいよ泣きそうな顔でボムマウスが叫ぶ。
「貴様達は! ネズミはチーズを食べるどころか! 大して興味を持たないって研究結果を知らないのか!?」
※実際に某国での実験データのある事実です。
「「……」」
一同黙る。そんなデータあるのかよ……とか、マニアですね……とか、別にどうでも良いじゃん……とか、奥が深ぇ……とかそれぞれ思っている。
「黙るなよ! くそぉ、俺は納得してないからな!」
「納得シヨウガシマイガ、オ前ヲ倒ス。ソレガ人々ノ平和ノ為ダカラ」
駆けつけたブラックが言う。そして揃った5人は改めてボムマウスに対して身構える!
「さぁ、形勢逆転だ! 覚悟しろ、ボムマウス!!」
レッドがばしっと決める!その言葉に、今までコメディ顔だったボムマウスがシリアス顔に戻る。
「逆転か……ならば、また逆転すれば良いだけだ!」
おもむろにコートをはだけるボムマウス。
露にされたコートの裏地には無数の爆弾がびっしりとぶら下がっている!
「切り札は最後まで取っておくものだぁ! まとめて吹き飛べ! ガドガイアーぁぁぁぁぁぁぁっ!」
コートをガドガイアーに投げつける。爆発の瞬間。ほぼ同時にグリーンとブラックが叫ぶ!
「魔斬波!」
「アブソリュート・プロテクト!」
真空の壁と鉄壁の鎧に阻まれ、清掃工場を吹き飛ばすはずの爆発は、ボムマウスのコートを吹き飛ばすに留まった。
「ちぃぃい! もう手持ちの爆弾が……」
「尽きたようだな! 今度は俺たちの番だぜ!」
殴りかかるレッドの拳をかわし大きく飛び退くボムマウス。
「ここは一旦退いて、体勢を立て直さなくては!」
苦々しげに吐き捨てると逃走を図る。
「まてぇぃっ!」
走り去るボムマウスを5人が追う。
追いつめたぞ、ボムマウス!しかし次回…!?




