後悔の轟火!
カリメアの作戦は進行しつつあった!
「♪今日も~市民の為に~えんやぁこ~ら~♪っとぉ~……」
鼻歌混じりに、清掃員のオッさんがゴミを回収している。その周りには、防護服で身を包んだ警備員が、ゴミの中に不審な物が混じっていないかを確認している。
「……よし!危険物無し!行ってよし!」
ようやく許可が下りて、オッさんは一息吐く。
「やぁ~れやれ、一ヶ所ごとにこれじゃ一日掛かっても終わりゃしねぇべなぁ」
「まぁそう言いなさんなって。俺等だって好きでやってる訳じゃない。けど、あんたらをはじめ、街の安全の為なんだ。収集中にミンチになんてなりたかないだろ、我慢してくれ」
監視員の返事に、まぁな、と小さく答えて、ゴミ収集車に乗る。
「んじゃ、お勤めご苦労さん!」
窓から手を振って、労う。お互い大変なのだ。あの事件以来。常にピリピリした空気の中で仕事をしている。
「道中気をつけて」
監視員は淡泊に返した。
「しかしあの事件、何だったんですかね~?」
オッさんの相方である若者が、運転しながら口を開く。
「ん? さぁ~てな。テロって話もあるが……んでもテロにしちゃ狙いが曖昧すぎるべし……。んな事よりオメェ、前向いて安全運転で行げよ。人さ轢いて監獄暮らすなんてゴメンだがらなぁ」
「はいはい、大丈夫ですって」
次のゴミ捨て場の前に通る両脇が林に面した走り慣れた道だ。ここらで人が出てくる事はまずない。対向車も考えにくい。ゆったり走れる区間なのだ。
「バガヤロウ、そう言う時にこそ注意が必要なんだ。いづも口を酸っぱくすて言っでっぺな!」
若者は、苦虫を噛み潰した。どうも、いちいち説教臭いのだ。
「大丈夫ですってば」
と言おうと思った瞬間、
「前!!」
オッさんが叫ぶ!若者はブレーキを思い切り踏みつける!!
キキィィィィィィ!!!
ガックン、と体が前のめりの状態から元通りの位置に戻って、慌てて車から飛び降りる!
「何があったんですか!?」
若者は状況が分かってないらしく、オッさんに大声で尋ねる。
「バガヤロウ! 人だっ!」
オッさんの返事に、若者はサッと青くなる。まさか……人を轢いた?でもそんな手応え……
辺りは草だらけで何も見えない。若者は泣きそうになりながら、どこかに転げているはずのソレを探す。
「だ、大丈夫ですか~……?」
しかし返事もなければ姿も見当たらない。
と、突然後ろから強い衝撃が!!
ボカッ!!
二人は意識を失いその場に倒れこんだ……
そして何者かが車に乗り込み動き出す。
「ウィ~♪」
カリメア戦闘員が運転するゴミ収集車は、一路、目的地へ向かう……
「レッド! レッド起キロ! 起キルンダ!」
マキシムの叫ぶ声が聞こえる。
朦朧とする意識の中、徐々に思い出す。そうか、俺はボムマウスに負けて……
「くぅ……こ、ここは……?」
レッドが目を覚ますと、民家の屋根の上にいた。どうやら、爆風で吹き飛ばされたらしい。
「良カッタ。気ガツイタカ」
「マ、マキシム……どうしてここに?」
「長官カラ指令ガアッテ、至急ココニ向カエト……ドウヤラ俺ガ一番近カッタラシイナ」
聞けばあの後、全員に現場集合が掛かったらしいが、他のみんなは遠くに居て間に合わなかったらしい。
「怪我ハ大丈夫カ?」
言われて体を確認するが、所々裂傷があり、血が出ている。正直、腕も足も、満足に動かせる気がしない。戦闘服の高い防御力を以ってしても、ネズミ爆弾の直撃は防ぎきれなかったらしい。加えて、衝撃波によって轟火自身が気を失ってしまっていた。
「……大丈夫だ。それより、俺はどれくらい寝ていたんだ?」
レッドは強がりを言った訳ではない。しかし今は体に負った傷を治療するよりも、ボムマウスの動向を抑える事の方が優先だ!
「大体一時間クライカ……」
「そんなにか!……不甲斐ない……」
ギリッと歯がみする。自分の未熟さ、弱さが事態を更に悪化させている事に苛立ちを隠せない。
「長官! 奴の動きは掴めましたか!?」
通信機に向かって話しかける。
『いや、こちらの衛星からGPSソナーで動きを追っていたが、まんまと撒かれてしまった』
「そうですか……また振り出しか……クソ!!」
バシィッと自分の手を殴りつける。
「落チ着ケ轟火。焦ッテモ良イ事ナド無イ。今ハ本部ニ戻ッテ傷ヲ治セ」
マキシムが宥めるが、今のレッドは頭に血が上ってしまって冷静さを取り戻すのは無理に近い状態だ。
「畜生! 敵を倒すどころか……一人で先走って何も出来ずに敗れて……俺は……!」
言葉が続かない。が、何を言いたいのか、マキシムは分かっている。
『今回は状況が不利だったのだ、仕方あるまい。問題は次だ。奴らの次の一手を読まなくてはな……』
長官が沈黙を破った。そうだ、切り替えて行かなくては。今は、この街が危険にさらされている。
「奴は清掃工場を爆破すると言ってました……ここから一番近い清掃工場はどこでしょうか?」
『清掃工場か……葛岡だな。しかしあそこには厳重な警備が布かれている。いくら奴らでも正面突破は難しいだろう』
長官の言葉に、レッドはしばらく考え込む。そして
「……そうか……!」
と呟き、そしてマキシムに耳打ちをした。聞いている内に、真っ青になっていく。
「ム、無理ダ、ソンナ事!」
「大丈夫、出来るさ。……リーダー命令だ、やってくれ」
しばらく悩んだが、マキシムは頷いた。
轟火の考えた作戦とは…!?清掃工場の危機を守れるのか!?




