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君との別れ  

作者: 梨恋

君は僕のことを覚えているだろうか

きっと覚えていないだろうね。たった2か月の付き合いなのだから。


僕は誉音たかね あおい。君の名は鈴音すずね れい

もっと君と一緒にいたかった。

もっと君のことを知りたかった。


「蒼、帰ろうぜ」

クラスメイトの楷音かいね みどりが鞄を持って駆け寄ってきた。

「いいよ。すぐに用意をするね」

鞄の用意をしながら言うと彼は

「よかった」

と嬉しそうに言った。友達なのだからそんなに気にしなくていいのに。

今日は3月1日。僕の學校の卒業式。

なのに、外は雪が降っていた。

「お空が泣いているのね」

妹の楓は言った。

「そうだね。お空が泣いているね。どうして泣いているのだろうね」

「お兄ちゃんが中学校からいなくなるから」

楓はそう言って優しく微笑んだ。


その翌年、僕と楓は晴れて私立の學校に合格した。楓は今まで僕の行っていた清秋学院初等科、僕は聖俊学院高等科に。碧は残念ながら違う学校になってしまった。彼とはもう会えない気がする。

2月中旬、また雪の降っている日だった。国道は除雪車が忙しなく動いていた。僕は帰ろうと生徒玄関を出ると三つ編みを腰まで下げた女子生徒が立っていた。僕が声をかけるべきか、声をかけた場合そのあとどう接していけばいいのか、考えていると彼女はこっちを向いた。僕に気付いた様子でこっちに向かって微笑むと

「どうかしましたか?」

と聞いてきた。

「いえ、雪の中、傘もささずにいるので何をなさっているのか気になったので。すみません」

なにも悪いことをしていないのに謝った僕を見て彼女は

「あら、なんで謝るの?可笑しな方ね。私は1年2組鈴音 澪。あなたのお名前は何?」

とクスクス笑った。

「僕は、1年1組誉音 蒼です。」

自己紹介が終わった頃

「お兄ちゃん、帰ろー」

楓が校門で待っていた。

「あっ、すみません。妹が待っているのでこれで失礼します。」

一礼してその場を去ろうとしたが澪は

「あっ、ごめんなさいね。またゆっくりお話がしたいわ。」

と言った。

「はい、またいずれ」

今度こそその場を去って行った僕を見て澪はどんな顔をしているのだろうか。

僕もゆっくりお話がしたいとその時思った。


僕が彼女に会って1か月がたとうとした。

しかし、彼女は學校には来ていなかった。1週間ほど前から登校していなくて心配になった僕は2組の担任に彼女のことを聞くことにした。

「あの、鈴音はどうして休んでいるんですか?最近休んでるみたいなので。」

担任は

「あー、澪はちょっとな。」

と言ってその場を去って行った。担任がだめなら友達だ。澪は何気友達が多い。友達に聞くと

「澪?入院してるみたいよ。持病のなんかが悪化したとかで。はい、携帯教えといてって言われたから。」

携帯番号とメールアドレスの書かれた紙を僕に渡してくれた。

「ありがとう、連絡してみるね」

2組の教室を出て、屋上で電話してみた。

「あ、もしもし。蒼だけど」

「「蒼君、ごめんね。浅井沢あさいさわ病院にいるって万桜まおちゃんに伝えてもらった?」」

「いや、入院しているのは聞いたけど。今日、お見舞いに行ってもいい?」

「「あっ、うん、いいよ。楓ちゃんにも久しぶりに会いたいな。連れてきてくれる?」」

「うん、分かった。楓と行くね。あっ、ごめん、5時限目始まっちゃうからまたあとでね。」

「「はーい、じゃあね」」

短い電話を終え、教室に戻り授業を受けた。

放課後、楓を校門で待っていると

「お兄ちゃん?どうしたの」

楓が走ってきた。

「澪に会いに行こ。」

「うん、何処に?」

僕は手を引きながら言った。

「ん?病院。ちょっと入院してるみたいなんだ。」

「えっ、そうなの?早く行ってあげよう」

乗り気になった楓と見舞い品を持って行った。


澪の病室に着くと楓が元気にドアを開けた。

「か、楓。もう少し静かに開けようよ。ごめんね、澪。」

「いらっしゃい。楓ちゃん、久しぶり。蒼君も。ゆっくりしていって。」

澪の元気そうな姿を見て僕は安心した。

「よかったよ、澪が元気そうで。心配したよ。」

見舞い品を渡しながら言うと

「ありがとう。ごめんね。言おうと思ったんだけど蒼君の携帯、分からなかったし。」

と、寂しそうに言った。

「ごめん、すっかり忘れていたんだ。いつでも会えるからと思って」

3人で、暫く話していると

「お兄ちゃん、楓、先に帰るね。お母さんに何も言わないできちゃったから。澪ちゃん、またね。」

楓は澪に手を振りながら帰っていった。

「2人になったね。」

「うん、そうね。蒼君にはちゃんと話しておこうかな。」

澪は引き出しの中から1枚の紙を出して僕に見せた。

「澪?これは何。」

僕はこの紙の意味が理解出来なかった。

「私の余命。あと1か月ですって。蒼君と2年生になりたかったな。」

澪の余命?澪は何を言っているんだろうか。

「澪が、あと1か月でいなくなるってこと?」

「そう。流石に楓ちゃんの前では話せないから。」

「そっか、寂しくなるな。澪が初めてのちゃんとした友達だったのに。」

「私がいなくなったって私は蒼君のお友達だよ?この縁はずっとつながっているのよ。」

寂しそうな微笑みを残しながら澪はそう言ってくれた。


それから、毎日のようにお見舞いに行き気付けば4月になっていた。

「澪、今日は入学式だったんだ。従妹の芽衣って子が聖俊に入ってきたんだよ。」

學校であったこと、家であったことを話すのが日課になっていた。

澪はいつも笑いながら聞いていた。何も言わず、笑っていた。

「澪?今度は澪の話を聞かせてよ。」

僕がこういうと澪は決まって

「今日は蒼が来てくれた。」

っていう。

「ほかにはないの?」

と聞くと

「特にない。」

と言う。澪の幸せはは僕が澪の元へ足を運ぶこと。澪の笑顔が消えないように僕は毎日澪の病室に通った。

しかし、その笑顔が消えてしまう日が来てしまった。

4月中旬、澪は眠るように亡くなった。僕や楓、両親、病院のスタッフに見守られながら。笑顔でこの世を去って行った。

澪が亡くなって2時間ほどたった。楓は未だに僕の腕の中で泣いている。楓は澪を本当のお姉ちゃんみたく、思っていたのだから当然だ。

「楓、もう泣かないの。澪は楓の笑顔が1番可愛いって言っていたんだよ。だから、澪の最後ぐらい笑顔で見送ってあげよう。」

「うん、そうだね。」

楓にとっては初めて死に直面した日だった。


1週間後、澪のお通夜、お葬式も終え、楓と二人で澪のお墓に墓参りに来た。

「澪ちゃん、はい。澪ちゃんの好きだったカーネーション。」

笑顔で澪に話しかける楓。無理して笑っている。

澪、どうしてこんな早くにいなくなるんだよ。楓のそばにまだいてあげて欲しかった。

「おにいちゃん、お線香あげよう。」

楓が僕の分のお線香を持って走ってきた。

「うん、そうだね。」

2人でお線香をあげた。


ゆっくりおやすみ。澪。僕は楓の心が癒えるまで必ずそばにいるから安心して。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編というのはなかなか書くのが難しいと思います(*゜▽゜)ノ 言いたいことを短くまとめる、結構大変です(=_=) それが上手く出来ていたと思います! [気になる点] 登場人物に無駄があるか…
2015/12/25 01:17 退会済み
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