5話
光りの精霊が帰って行き、この黒い空間に俺の声だけが響くようになった。
ココは俺の精神って事は…俺が知っていて、なお欲しているものならこの空間に生み出すことが出来るってことかもな。懐中電灯とテレビは俺が知っていたから、出せたと考えていいだろう。これ絶対に植物状態の人間がすることじゃねぇ。
さて…調べるとしよう。この世界について。
さっきのテレビには病室で魔術を施せれている映像が流されていて、母さんの泣き顔がうかがえる。
この映像の視点動けば良いのにな……よし動かすか、この空間は俺無双でいけるだろうし。
「あ、えーっと…。なんか視線動かせるような…リモコン?」
ガタッと落ちてきたのは、コントローラー。いやぁ、俺ス○ブラやるときこれでやるんだよね、w○iのリモコンでやるよりしっくりきて……懐かしいな、おい。これもうここで生きていけるんじゃないのか?
なんでもありだな。ほんとマジ。
リモコンを握り視点を動かす。
ドアの前まで動かして、ドアをどうやって開けようか少し迷い止まった。“これ”は誰にも見えないみたいだし、開けるってことは怪しまれるし……。
重いっ切ってドアにぶつかったら、通り抜けることができた。おぉー!幽霊になった気分だぜ。幽体離脱ってこんな気分なのかな。
病院の中をうろうろして、美人(微巨乳)な看護師の姉ちゃんをじっくり眺めた後、正面玄関から外へ出た。
「うっは!箒にのって空飛んでるッ!あ、あっちには何か飛んでる…え、何アレ…ドラゴン?あーあ、早く目ェ覚まして肉眼で見てみてぇな。ハ○ポタみたいだな…漫画の世界かよww」
画面に映ったのは、如何にも魔法の世界ですって感じのファンタジーな映像。箒に乗って空を飛んでいたり、なにやらでかく羽の生えた生き物に乗り空を飛んだりしていたり…まぁ、なんというファンタジー。
端の方に自動車が見える。前の世界みたいなハイブ○ットカーではなくゼンマイ式の自動車だ。自動に動くのではなく、いちいちゼンマイを巻く作業が必要な自動車だ。この世界の魔法はかなり発達しているように見えるが、科学はあまり発達していないようだな。
(家にあったテレビはカラーだったけどブラウン管テレビだった)
なにやら画面の中の自動車は黒いマント(?あぁ、魔法使いだからローブかもしてない)の奴に蹴り飛ばされてる。自動車の持ち主らしき人物は黒のマントの人物に土下座しているようだ。
え、ちょっと気になる。
話いる内容が気になって、土下座としていらっしゃる人のところへ動かす。
話している内容とかがよく聞こえるように、リモコンで音量をあげる。
『このような汚らしい機械を大通りに置くなど……!己の身分を知れッ!』
『で、ですが…我々魔法の使えない者にとっては、この機械は数少ない移動手段なのです!』
『知るものかッ!今すぐに目の前からそのポンコツを消し去ってやるッ!』
『そ、そんなッ!』
黒いマントの人間は片手を前に突き出し、俺の右手が火を吹くぜっ!な感じのポーズをとった。
その構えを見て、土下座してる人はガタガタと震えてしまっている。
おうふ、この世界じゃこのポーズはイタイポーズじゃなくて恐れられるポーズなんですね。
『えぇい、だまれ!精霊の加護(魔力)も持たぬ成りそこないが!』
その言葉に対して、周囲にいる一般人と思わしき人物たちも恐怖で顔が固まってしまっている。そして、関わらないように徐々に離れていく。
ほほぅ。この世界には魔力を持つ者と持たないものがいるんだな。
一般人の会話からでも世界の情報が手に入るんだな。
さてさて、続きを聞きますか。
『お、お許しくださいっ』
土下座して顔を上げない人は必死に許しをこう。
反論しないまま許しをこうってことは、逆らえない立場にいるか、はたまた他の理由があるのか。
話の内容的には、魔力で分けられる身分って感じで判断していいかと思う。
まぁ、ただの予想なんだけどな。
『もう良い。貴様のような、クズと話なんぞしていたら、耳が腐るわ』
『な、なら…!』
許されるのかっ!?とでもいいたそうに土下座クンは顔を上げる。
『我、炎の精霊の加護を借り、その力を我が力とする!≪フィア≫』
黒いマントの奴がそう言い放つと、掲げた拳から火の玉が勢いよく車に向かって飛んでゆく。
火の玉は車の前輪のタイヤに当たり、使い物にならなくなる。
…魔法の原理ってどうなってんだ?原子の流れめちゃくちゃだろ……。
『あぁ!なんてことを!』
『はっ。なんだ貴様。魔力なしのくせに俺に逆らうのか…?』
黒マントの男が嘲笑うように言うと、土下座クンは悔しそうに項垂れる。
ほほぅ。なるほど、やはり魔力持ちの方が権力あるんだな……。
ココまで来て手に持っていたコントローラーを落とした。
あれ?俺…このんなかんじの話聞いたことあるぞ?何処で聞いた?…いや…見ただ。
俺はこの世界を知ってる。
“魔法が全て”
“日本が第二次世界大戦で勝利している”
“国王制の政治”
“魔法が発達し、科学がおろそかになっている”
“舞台は日本”
“精神の中に魔力を表す石が有る”
前の世界で…読んだ。この世界のような世界観の漫画だ。
魔力が全てを制する世界。第二次世界大戦でピンチに成った日本軍が魔法という新しい旋ぽを使い世界を制覇した。という世界観。
もちろん他の国…連合軍とかの国は魔法なんて信じていなかったから、動揺しているすきに敵軍を根絶やしにしたらしい。
日本軍はいい気になり、連合軍を次々に脅し始めた。他の国々(連盟軍)も止めたかったが、国ごと消すと言われ黙っていることしかできなかった。
この戦争を期に日本は魔法の研究に、国を上げて没頭し始めた。研究しなければならなかったから。新しい魔法を生みださなければ、いつ恨みを買った反乱軍(連合軍等)にやられてしまうか分からなかったから。
この魔法の研究が仇となり日本は滅びの一歩を辿ることになる。ある魔導師の失敗により、一匹のエルフが逃げ出してしまう。そのエルフは眷族を増やし、人間を殺し魔力を奪い始める。魔力が無ければエルフは死んでしまうし、生きるための行動だった。
日本の人口が半数を切った時、エルフの数匹が海外へ。他の国も浸食され始めた今こそ力を合わせる時だ、と日本が申し出たものの、日本の味方に成ってくれるような国はほとんどなかった。
信用を得るため海外に日本が所持している魔法使い、魔女を送った。
エルフは魔法を使う、そんなエルフと対等に戦えるのは核ミサイル並の武器か魔法くらいだった。
2012年日本支部を担当するその漫画の主人公[神谷国彦]16歳。主人公は魔力で精霊を実体化出来る特技を持っているエリート。
魔術学校に通っていて成績も上々(さらにイケメンときている)彼はエルフが逃げ出したと聞き、自分が捕まえてやる!と言うがあっさりエルフに、負け、さらに幼馴染までも殺されてしまう。彼が任された部隊は壊滅し、生き残ったのは彼のみ。
そんな絶望的な状況で主人公は色々な人に出会い、心を改心させる。
とうとう、エルフのボスを追い込み人類はエルフを打ち取った。
エルフのボスを殺せるのは主人公のみ。
前の世界で読んだ漫画まんま…。ここまで覚えてる俺ってどうなんだろうか……。
もし、前の世界で読んだ小説みたいに世界を移動してしまっていたとしたら?
俺に起こったこの体験が現実で引き返せないということが…確信した。なんでかは分からない。
そして、俺も殺されてしまうんではないか?
話の中では人口の半分は死んでしまうんだし、その中に俺が入っていてなんら不思議はない。そして、母さん…俺の両親も入っていても不思議じゃないのだ。
生き残ればいいんだ。
主人公がエルフのボスを倒すまで。
新しい世界で死んでたまるか……!
ココまでお読み頂きありがとうございます。
誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。
まだあだ初心者なので生暖かい目で見ていってください