2話
えーっと、はい。夢は覚めてません。え?やっぱ、夢じゃ無いってオチだったらうれしい。
アレから三回春が来て3歳に成ったぽいです。
とりあえず、これが現実だと思うしかないと思うので、あきらめた。
3歳ってな、やっと自由に歩き回れるんだぜ?家ん中歩き回ったんだが、前の俺の部屋は物置と化していた。
前の俺が夢だったんじゃないかって思えてくる。まぁ、その話はすぎたことだし、今は余り考えないようにしてる。
今は3時頃で母さんに、今日は晴れてるから御庭でおやつ食べましょうって言われたから庭のベンチに座ってる。
そんなに広くない庭だけど、母さんが育てた色とりどりの花が咲いている。
母さんがおやつを取りに行ってる間、やることと言えば花を眺めるくらいだったので所持気飽きた。
ゲームや漫画などの娯楽を知っている身としては辛い状況だ。あぁ、モン○ン途中だったのに…一歩手前で止まってたのに……。
《ねぇねぇ…》
は?え?何事?誰かが耳元で囁いた気がした。ちょ、え、怖い。
いやいや、おれに霊感なんてないから。うん。きっと。
再三度庭を見渡すが、何にもいない。あ、いや、そのホント止めて。
《えぇ!きのえないのぉ?》
聞こえてる聞こえてるっ!で、でも返事しない方が良いよなっ!テレビで霊とかには声をかけてはいけませんって言ってた気がするし…!!
早く声無くなれ、なくなれ。
《貴方みたいに魔力いっぱい持ってる子が私達の声聞こえないはずないもんっ!!》
は?魔力?なんだそれド〇クエかよ。
まてまて落ち着け俺、知らない人が話しかけてきたら軽くガン飛ばして舌打ちするって中村(前の俺のクラスメイト)に教えてもらったろ?
《ねぇったら!きこえてるのはわかってるんだからねっ!はやくへんじしなさいよ……!うぅ……ばかぁ!……うわあぁぁぁん!…ぐす……っ!えぐっ…!》
うーわー。
あ、ちょ…えー……。
行き成りわめきだした“声”に苛立ちを覚えた。煩いなっ!
もう良いよ…。そう言ったら嘆くのを止めてくれるだろうか?
そう思った時後ろから声をかけられた。この声は知ってる、耳に聞きなじんだ声だ。
「れいくん。おやつにクッキーを焼いたの。」
「かあさん…」
母さんにはこの声が聞こえなかったのか?
俺だけに聞こえたのならもっと怖い、なんだこれは。
今、母さんに相談したら迷惑がかかるんじゃないだろうか。
俺はどうしたらいいの?言葉をぐっと押しとどめた。
《ほんとにきこえないの?……じゃ、しかたないわ。きこえるようになったらまたくるね》
「…え?」
「れいくん?クッキー苦手だったかしら?」
「ううん。大好きだよ。」
「そう?」
「うん」
“声”が聞こえなくなった。
だんまりという選択が正しかったのか?
考えていても今の俺にはきっとどうすることも出来ないだろう。
このことにかんしては俺は無知だから。
母さんの作ってくれたクッキーを口に運ぶ。甘い…いやこれは甘すぎじゃないか?
あぁ、前(の俺)の母さんも料理苦手だったなぁ。
口直しに用意されていた紅茶に手を伸ばす。
おぉ。さすが、インスタント。この味は変わらないぜ。
「…おいしくないかしら?」
料理が苦手なのに、頑張って作ってくれたのに、不味いというのはダメだろ。
今の自分に出来る精一杯の笑顔を顔に纏わせ、言った。
「凄く美味しいよ」
「あ、ありがとうっ!お母さんお料理苦手なんだけどね、頑張って作ってよかった!」
………あと数枚は食べたほうが良いだろうか。こんなに喜ぶとか思ってなかった。
いつも、おやつは買って来たものだったし、手作りのお菓子は初めて食べた。
ここの日から、俺のおやつは母さんが作ったものに成った。全て。
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夕飯前、俺はテレビにくぎ付けになった。
こんなことがあってたまるか…!
『国王陛下の婚儀が5年後の20××に決定いたしました!我らが大日本帝国の新たな国王の式の来賓に関してですが――――――』
大日本帝国?日本だろ?このテレビ壊れてんのか?
大日本帝国は明治時代に多く使われた日本の呼び方だ。
平成の今そんな風に日本を呼ぶ日本人はほとんどいないだろう、いないはずだ。
国王?天皇陛下の間違いじゃないのか?
『ではここで、大日本帝国の歴史を簡単にふりかえっていきましょう。それではまず第二次世界大戦では[―――]様が偉大なる魔術によって、この大日本帝国を勝利へと導きました。これにより、世界を支配下と置いたわが軍は――――――』
あとの話は衝撃的すぎてほとんど、耳に入ってこなかった。
どうゆうことだ?第二次世界大戦で日本は負けたはずだ。
世界を支配下とか悪役じゃないか。
もう一つ聞きなれないワード
「魔術って何だよ…」
魔術。漫画やアニメの中では魔法とか言われていた気がする。
文字どうり、火を生みだしたり、天候を変えたりするものだ。
こんなものが平然とあるなんておかしい。なんで俺は今まで気付かなかったんだろう?
もしかして嘘なんじゃ?なんて淡い期待も砕け散った。
『続いての映像がその大魔術を発動時の映像です』
目に映った映像には、沢山の兵士達が紅い光によって黒焦げになりボロボロと崩れ落ちるシーンだった。
次に蒼い光が発射されたが、それを浴びた兵士たちが無残な姿となり果てる。
体のいたる所からから真っ赤な血が噴き出して、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
ただの肉の塊となり果てた人間だったソレは白い煙と成り干からびたソレだけが残る。
白い煙が消えた後のシーンからは血が一切見えない。
赤黒い画面はもとの荒野へと変わる。
見ていて耐えられない。胃の中身を全部吐いてしまいそうだ。
ピッという音がして顔を上げると、テレビの電源が消されていた。
「れいくん。貴方にはまだ早いわ。見ない方が良い」
「あ…ぅ……」
気が付けば目から涙が零れ落ちていた。
母さんはグロいシーンを見て泣きだしたのかと思い、俺をゆっくり抱きしめた。
やっぱりここは俺の知ってる世界じゃなかったんだ。
俺はこんな世界に生まれ変わったというのか?
頭の中で情報が整理出来なくなり、頭痛が起こった。
意識を手放した。