琥珀(こはく)の涙~ロシアからの独立
大戦後長い間圧政に強いたげられた東欧諸国(社会主義国家)。
東西統一を果たしたドイツに刺激を受け脱却路線を模索する。(ソ連の衛星国から)
その東欧諸国社会主義の首謀がソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)。
ユーラシアの怪物は磐石なものでなければならぬ。
合議制で構成されているのが最高会議・クレムリン。
15の異民族の犇めき合う共和国が互いに互いを牽制しクレムリンからの完全独立の兆しを見せてしまう。
クレムリンを中心としたソ連邦なる15共和国諸国。社会主義を離れ独立の道を歩める時代に突入してしまう。
ベルリンの壁崩壊の2年後1991年ソビエト連邦・クレムリンが崩壊をする現れである。
目映い光りの琥珀は哀しみに一筋の涙を流す。
淋しげな乙女の涙は琥珀の涙である。
ソ連はその昔にロマノフ王朝ロシア帝国である。
古都st.ペテルブルグを中心に放射線状にアジア中央大陸に膨張していく。
ロシアの強靭なる軍隊は近隣の民族をどんどん征服していく。ロシア拡大主義を掲げロシアという国の領土はいくらでも獲得出来止まらない。
軍事に優るロシア帝国である。ロシアが目をつけた近隣は侵略戦争により領地化されて拡大をされ減ることはない。
対外的戦略で膨らみ続けることがロシア帝国の存続価値がありロマノフ王朝がいかに強いか誇示していく。
帝政ロシアのロマノフ朝の膨張主義になんと翳りを落とすのはコール首相のヒト振り。
ベルリンの壁崩壊から西欧化のうねりが巻きあがり民主化の波はソ連邦に波及してくる。
(ソ連の)共和国を形成した15の民族は不協和音を公言してバラバラとなる。
悲哀ばかりのクレムリン支配はもうごめんだ。支配者の統治はいらない。
ソ連から脱却をした独立国家を望みたい。故にソ連から独立を希望したい。
「我が国はクレムリンを中心にして合議制である。なんら足並み揃わぬことはなし」
中央集権国家を構成するクレムリン。構成する共和国はいずれもひとつとしてソ連からの独立を許してはならない。
今現在の"国境の確保"は国家存続の最大使命であり維持をしなければならない。
ソ連からの独立阻止は武力行使軍隊を使う。威嚇だけで独立消滅の声を聞けばよいが。
西欧化を望み意にそぐわぬ連邦政権にさようならをしたい。
クレムリンからの独立を決意する異民族の共和国。
クレムリンの"独立はやめよ"の優しい提言は悉く突っぱねられてしまい強靭な武力を使う。
時のクレムリンはソ連共産書記長ゴルバチョフ(後に大統領職)が君臨した。
「我がソビエトユニオン(連邦)はひとつである。分離独立などまかりならぬ。あってはならぬ」
ゴルバチョフは鼻息荒々しい。クレムリンから独立宣言をなす(ソ連の)共和国に遠慮なく戦車など軍機を差し向ける。
ロシア人ではない異民に向けて砲弾を発射させた。
ソ連最高会議で苦悩するゴルバチョフ書記のネクタイピンに紫色の琥珀がある。
紫色の琥珀は元気なく哀しげな表情だけ翳している。
非武装で話し合いでの解決を望みたい。琥珀はじっと我慢していた。
ソ連の異民族の共和国国家。堅牢なる共和国連邦が崩壊する端緒はバルトからであった。
北欧諸国の近くにあるバルト海に面した異民族の共和国。
旧ソ連にあった三国はバルト族と呼ばれ中央集権クレムリンの組織で常に少数民族の悲哀を味わった。
彼らバルト族は非ロシア民族のインド=ヨーロッパ語族である。
嫌悪感を示すソ連からの決別をいち早く選択し自国の憲法で独立を取り決めた。
やると決めたら即決採択。それが有能なる民族バルトというものである。
独立憲法採択はエストニア共和国から始まり追随はラトビアとリトアニア。憲法改正とは"ソ連に対する違法行為"。
クレムリンは激怒する。
直ちにソ連軍は反応をし飛行機・戦車をバルトに向けた。ゴルバチョフは威嚇のつもりで進軍させる。だが軍隊は実弾装備である。バルト民族に遠慮なくバンバン発射してしまう。
バルト海に面したカリーニングラード(ロシア領)もバルト第4の共和国である。
この地域も第4の国として独立を宣言してしまえば面白かったが如何せんロシア人の領地。見渡す限りロシアでは独立の気運は狼煙とはならない。旧プロシア=ドイツの面影は皆無である。
クレムリンの逆鱗に触れたバルト。強靭なソ連軍の軍事行使の目に遭う。
鬼のごとしクレムリンに対し独立のために国民は立ち上がる。そして尊い国民の血を流してしまう。
クレムリンからバルト制圧指令を出したゴルバチョフ。背広からちらつくネクタイピン紫色琥珀。さめざめと薄黒い涙を流した。
バルトの独立騒動を経てソ連はペレストロイカ(人事粛清)を敢行。ゴルバチョフは失脚してしまう。
変わって台頭したのがロシア共和国のエリツィン大統領である。
「私は崩壊したソ連を建て直したい。健全なる15共和国の協力こそが我が国の領土保全である。うんなんだ!15の共和国は今はないだと。数字は減っただと。(ロシアから)独立なんぞ許さんぞ。この仏さまのエリツィン様が許さんのだ」
どう贔屓に見ても悪人顔のエリツィン大統領(悪徳代官)は独立したいと我がままを言う(連邦の)共和国に話し合いの場を設ける。
バルト諸国の分離離脱は悪徳代官エリツィン登場が遅すぎ。渋々ながらもあきらめる。
次に独立の気運はベラルーシ(白ロシア)・ウクライナ・コーカサス(カフカス)諸国。子細に見るとエリツィンはロシアの領地減少に歯止めをしたい国境確保に尽力する大統領であった。
ベラルーシ・ウクライナはロシア人と同じスラブ系民族。ロシアとは同胞意識もあるはずだが主従関係は御免であるらしい。
エリツィンは南ロシアに位置するコーカサスに飛ぶ。
「あっちで独立。こっちで独立宣言とロシアはどうなるんだ。クレムリンから簡単に離れては堪らない。コーカサスぐらい繋ぎ止めておかねばならない」
悪徳代官さまは気合いを入れる。大統領に就任してからは真新しい背広と愛妻からプレゼントをされたネクタイピンに琥珀と指輪にも琥珀であった。
エリツィンの琥珀はメノウ色。平和を祈り平和を願う哀しみな琥珀だった。
南ロシアに位置するコーカサス。大変に険しい山脈を挟み南北にコーカサス文化がある。
北コーカサス地方は山岳民族的な色合いが強い。
「トルストイの『カフカスの虜』の舞台になったコーカサスだ。我が栄光のロシアから離脱することは許さん」
悪徳代官は毅然とした態度で北コーカサス民族に独立を断念させる。
エリツィンの琥珀は暗い素顔である。
コーカサスは山脈を分けて北コーカサス(ロシア)。
南コーカサスはグルジア・アゼルバイジャン・アルメニア
北コーカサスの山岳民族はいったん独立を宣言をするも失敗してしまう。