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第8話・第二世代の魔物



 肩慣らしでBランクの迷宮を訪れた僕たちは破竹の勢いで最深部まで進んでいた。

 だが、その道中で確かな違和感を感じ取っていた。


 そして、現在は開けた場所に集まるゴブリンの集団を影から見ていた。


「『”土”よ。我が足先の前方2m先から上昇し横30m、深度3m、縦30mの壁を作り圧死させよ』」


 詠唱と共に地面が揺れる。

 その時、二十を超える奴らの足元に魔力が集まり地面が上昇し天井にぶつかり圧死した。


「あ、撃ち漏らした」

「ケッヒィ!!」


 だが、運よく生き残った二匹がこちらに向かってくる。


「あたしに任せて!」


 そう言って、アフェが短剣片手に影から飛び出す。

 彼女は僕と違い力が強いわけじゃないが、とにかく0から100への加速スピードが速い。


 だから、途中で蛇行しながら進むと敵からすれば本当に的が絞りにくいだろう。


「ほっ!」


 こうやって、移動しているだけで易々とゴブリンの背後を取り急所を一突き。

 それだけじゃない、彼女が使っている短剣は”刻印”が刻まれたレリックの一つだ。


「伸びて」

「ケヒィ!?」


 彼女の一言と共に短剣に刻まれた刻印の模様が光り出し、刀身が伸びる。

 そして、伸びた先に待っていたホブゴブリンに反応をさせる間もなく胸を的確に打ち抜いた。


「へえ、便利だね。伸びる短剣か」

「でしょ。あんたの聖剣には劣るけど、使い勝手がいいのよ」


 確かに、伸びる剣の限界は知らないが遠距離攻撃にも転用できる。

 その上、僕が扱えば間合いを誤認させるのに使ったり詠唱をするための時間稼ぎにだって使える。


 そして、僕は魔術を解いて盛り上がらせた地面を元に戻す。


「……アポロ?」

「いや、何だか違和感があってね。今のゴブリンの集団さ。ホブだけじゃなくて、メイジもアーチャーもいた」

「うん、でもBランク何だから普通なんじゃない?」

「ランクだけならね」


 問題は、そいつらが大量の集団を組んでいたということだ。

 あれだけ数が集まれば、僕でも正面から戦えばほんの少しだけ苦戦する。


 もし、彼女だけなら勝ち目はなかっただろう。


「じゃあ、この迷宮で何か異常なことが起きてるってこと?」

「かもしれないね。だから、どうせ今日は肩慣らしだしここらへんで帰ろうと思ってるんだけどいいかな?」

「アポロがそう言うならいいけど」


 ほぼ、勘のようなものだが引き際を誤った人間の寿命は短い。

 それに、まだ迷宮都市に来て初日なのだ。


 わざわざ焦って攻略する必要もない。



 そう判断して踵を返そうとしたその時だった。


「はあ、はぁっはぁ!!」


 迷宮の奥から息を切らした男が現れる。


「ちょっと待って!」

「うわぁあぁああ!!」


 明らかに冷静ではなく目の焦点もあっていなかった。

 そして、彼は僕たちの呼びかけも無視して来た道を全力で走って引き返していった。


「な、なんだったの?」

「……アフェ。やっぱり、この先を攻略しに行こう」

「え、どうして?さっきは危険だって言ってたじゃない」

「現在進行形で危険な目に会っている奴がいるかもしれないってこと」


 僕みたいなもの好きを除いて冒険者はパーティー単位で動くものだ。

 それが、一人で単独行動を行い焦った様子で迷宮を駆け抜けていく。


 つまり、奥に仲間が取り残されている可能性が高い。


「全力でいく。僕にしがみついて」

「う、うん」


 彼女が促されるまま僕におんぶされる形になる。


「『”風”よ。我が頭の中心から横1m50㎝、高さ2m、縦1m50㎝の球体の壁を作れ』」


 詠唱と共に彼女も内部入れながら風の障壁を展開する。

 同時に、体中に全開で魔力を纏い身体強化を極限まで高めた。


「舌噛まないようにね!」

「え、えぇぇえええええええ!?」


 球体の壁が空気抵抗をそのフォルムで受け流し、極限まで強化した足でただ走る。


 それだけでも、目まぐるしい景色の変化を起こし動体視力が強化されていない彼女にとっては何が起きたかもわからなかっただろう。



 そしてものの数秒で最深部である迷宮の主が待ち構える部屋にまでたどり着いていた。


「よし、着いたよ。早速中に入ろう」

「……ち、ちょっと待って。うっ」


 彼女を下ろすと完全に酔ってしまったのか、ふらふらしたままその場で横になった。

 周囲に魔物の気配は感じられないが、このまま放置はいささか不用心だ。


「『”風”よ。我が前方1mから横3m、高さ3m、縦3mの球体の壁を作り固定せよ』ごめん、先に入ってる」


 詠唱によって彼女を守るように思いっきり魔力を込めて風の防壁が展開される。

 これなら、魔物に襲われても問題はないはずだ。


 それよりも、問題はここに来るまで冒険者を見つけられなかったことだ。


「っ!」

「グオアォォオ!!」


 扉を開けると案の定と言うべきか巨大なゴブリンによって襲われている冒険者たちを見つけた。

 怪我はしているが、致命傷はまだ負っていないように見える。


「させるかっ!」

「グアアオォ!?」


 近接でも魔法でも間に合わないと判断した僕は聖剣を抜き思いっきりぶん投げる。

 その咄嗟の判断によって聖剣はゴブリンキングに突き刺さるどころか片腕を弾け飛ばした。


「『”風”よ。我が前方10ⅽm先に横5m、高さ3mm、縦1mの風刃を作り出し”直進せよ”』」


 間髪入れずに魔術を詠唱し、風の刃が追撃を加える。


「ダメです。こいつは、魔法を使うんです!!」


 だが、その時襲われていた大盾を持つ戦士から耳を疑う情報が入って来た。


(魔法?メイジでもないのに?キングにそんな知能があるのか?)

「グオォォォォ!!」


 だが、戦士の言う通り奴から魔力を感じた。

 その瞬間、ゴブリンキングは体に刻まれている刻印に魔力を流し風の障壁を出現させた。


「なるほどね。第二世代か、でも込める魔力が足りないんじゃない?」


 僕が放つ風刃は威力を高めるために相応の魔力をつぎ込んでいる。

 対して、奴が作り上げた風の障壁は作りは布のように編まれており緻密に作られているが、明らかに込める魔力が足りない。


 つまり、易々と風刃は障壁を粉砕して奴の肉を切り裂いた。


「ガガググゥゥゥ!!」


 その場で痛みに苦しむ奴を視界の端に捉えながら、投げた聖剣を引き抜き接近する。


「さようなら」


 そのまま、相手に何もさせないまま聖剣を振るった。

 当然、対魔物最強の剣はゴブリンキングの首すら易々と両断して見せた。


「す、すごい。私たちが全滅したゴブリンキングをこんなにあっさりと……」


 近くから感嘆の声が聞こえるが、それより気になることがある。


(ゴブリンキングってそもそも魔力なかったよな。それに、第二世代レベルの刻印を体に刻み付けてた)


 基本的に刻印は一子相伝の物だ。

 だが、魔物に子育てをする文化があるなんて聞いたことが無い。


 だというのに、それをこいつらが使用したのが違和感だった。


(いや、魔物でも魔法を使用した例は存在する。僕たちより高度な魔法を使った例もある。たまたま、偶発的に生まれた存在ってことか?)


 と言うか、それ以外には考えられない。

 まさか、魔物に人工的に刻印を刻み付けるもの好きなんているわけがないし――


「あ、あのー!」


 その時、思考の海から引き戻される。

 どうやら、僕を呼んだのは大盾を持つ戦士の人らしい。


「っ!ご、ごめんなさい。少し、考え事をしていまして。大丈夫ですか?」

「大丈夫です。本当に、助けていただきありがとうございます」

「い、いえいえ?」


 相手の話し方が妙に丁寧すぎる。

 僕も初対面には接し方は気を付けているが、冒険者と言うより騎士と話している気分だ。


 それより、近づいて声を改めて聴いてわかったが女性だ。


「そうだ。どうしてこんなことに?」

「それは、その私たちはクラン『ルフトズ』のメンバーなんですけど……」


 彼女はここまでのいきさつを大体説明してくれた。


(なるほどね。彼女は普通のBランクの迷宮だと思って入ったら予想以上に強くてやれれた。そして、隊長が一人逃げてしまった、とね)


 隊長らしき人物は焦って地上に戻ろうとしていたあの男で間違いないだろう。

 パーティーメンバーを見捨てるのはどうかと思うが、生存を優先してしまうのは一定の理解はできる。


 近くにパーティーメンバーらしき肉塊が倒れている。

 おそらく、それを見て精神的に限界を迎えてしまったのだろう。


「でも、僕たちが来るまでよく耐えられましたね。それに、どうして逃げなかったんですか?」

「私は、それしか能がないので……それに、もし私も逃げたらみんなが守れなくなるので」

「死体を守るために戦ってたってこと?」


 彼女は頷く。


 改めて、この部屋を一周して見てみても彼女以外の生存者はいない。

 その代わりに、あるのは誰かも判別できない肉塊が約三人分ほど残っている。


「ザレクくん。ミーシャちゃん。ドルクくん。みんな大切な仲間だったんです。それを、魔物に踏み荒らされるのはどうしても我慢できなかったんです」

「ザレク……そうか」


 一人だけ、覚えのある名前があった。

 ルフトズのクランハウスで僕たちに喧嘩を吹っ掛けて来た青年だ。


 別にいい印象があるわけではないが、それでも死者に罪はないだろう。


「早くに助けに行けなくてごめんなさい」


 もっと早くたどり着いていればその三人が死ぬことはなかっただろう。

 僕は久しぶりに味わうその感情を拳を握りながら噛みしめていた。


「……」


 そして、その光景を二人がいる空間の中で堂々と見ている人外の姿があった。




第二世代の魔法

・第一世代の魔術を体に刻んだ刻印に魔力を流して名を詠唱するだけで発動できるようにした。

・『ウォーターボール』と言えば簡単に球体の水が出来るし、込めた魔力量や魔力制御で威力や射程も簡単に決められる。

・普通の第二世代の魔法使いは基本属性の火・水・土・風の刻印を刻んでいるためアポロのように普通に全属性使える。

・でも、一子相伝の物なのでアポロではひっくり返っても使えない。

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