第18話・クランの裏事情
イージス視点です
アポロ達がインプの大群と戦っている間――
時を同じくしてイージスも所属しているルフトズのクランマスターであるベスクワル・コンボイションが率いる臨時パーティーは迷宮の奥底にまで進んでいた。
「イージス!そっちよろしく」
「はい!」
指示を聞いて、彼女は大盾と共に自身の体より二回りは大きなホブコボルトの攻撃を受け止める。
その間に、他の仲間が魔法を使えるレッドコボルトやブルーコボルトを倒していく。
(私に、攻撃する力があれば……)
そうすれば、目の前のホブコボルトだって倒せるだろう。
しかし、彼女が武器を取って攻撃した途端に体はあらぬ方向を向き、戦い所ではなくなってしまう。
だが、それでも冒険者として活躍するために独学で唯一使えた盾の腕前を磨きBランク迷宮くらいなら潜れるようになった。
「イージス。後は任せて下がりなさい」
「は、はい!」
他のコボルトが倒されたのと同時に敵を引き付けていた私の出番は終わる。
「『徴兵命令・猟狼』」
入れ替わるようにクランマスターが前に出て刻印に魔力を通し魔法を発動させた。
すると、彼の体に刻まれた刻印から黒い渦のようなものが現れ鋭い牙を持つ狼が四匹現れる。
(あれが、クランマスターの魔法……いいなあ)
もし、ああやって私にも刻印があれば魔法使いとして今のようにBランクて燻ることもないのかもしれない。
そうやってうらやんでいる内にもマスターが召喚した狼はホブコボルトに突っ込んでいき肉を噛みちぎった。
「っ、増援が来た!イージス、コボルトキングを頼む」
「はいっ!!」
返答で自身を鼓舞し、更に巨大なコボルトに向かっていく。
私の身長より二回りくらい大きな槍が振るわれるが、盾で直接受けることはせず受け流す。
(私には盾しかない。だから、ここから先はもう絶対に通さない!)
誇りを盾に宿して彼女は、戦いに身を賭していく。
数分後、他のパーティーメンバーの攻撃によってコボルトたちは全て倒された。
「流石だな。イージス。君のおかげで安全にコボルトを倒せた」
「ありがとうございます。クランマスター!」
昨日、あんなことが起きて翌日も迷宮に行くことになった時は頭が痛くなったが、クランマスターが同行してくれてよかった。
他のメンバーは全員Bランク冒険者だがコボルトキングと他のモンスターを同時に相手にするのは相当苦戦していただろう。
(でも、何で今日はクランマスターが来てくれたんだろう。普段はクランハウスから出てこないのに)
今のクランマスターは『鬼才の召喚士』の二つ名を持つSランク冒険者の一人息子である。
父親の刻印を継ぐことで召喚魔法の使い手になった彼は破竹の勢いでAランク冒険者に至った。
だが、クランを継いだ後は全く依頼には出なくなったと聞いていた。
(噂でクランの金を使い込んで投資とかギャンブルをやってるって聞いたけど……)
こんな人当たりの良い人がそう言うことをするとは思えなかった。
そうこう歩いている内に私たちは最深部である迷宮の主が待つ部屋の前にたどり着いていた。
「みんな、おそらくここまで出現した魔物から考えてコボルトロードがいると思う。少し休憩して万全な準備を整えてから入るぞ」
「「「「はい」」」」
そして、私たちは少し近くの小部屋で休憩することにした。
盾は手放せないが、すぐ取り外しの出来る部分だけ装備を外しリラックスする。
「俺は少し出てくる」
だが、クランマスターは用事がある用で一人どこかへ行ってしまった。
すると、パーティーメンバーの一人が話しかけてくる。
「それにしても、イージスも大変だね。昨日の今日でまた迷宮に潜ることになるなんてな」
この人は同じBランク冒険者のフレムさん。
大火を起こす刻印を体に宿している第三世代魔法使いで、同期でもある。
「そっちこそ、今週末で退職するのに呼ばれるなんて大変ね」
「まあね。流石に、クランマスター直々に呼ばれちまったらあたしも断り切れないわ」
そう、今日のメンバーは全員クランマスターが自分で指名して選ばれているのだ。
「でも、何でマスターはこのメンバーにしたのかしら?」
「うーん。あたしもピンとこないけど……あ、そうだ!ここにいる奴ら、あんた以外今週中に辞める奴らだよ」
「えっ!?他のみんなも辞めちゃうんだ」
彼女が辞めるのは知っていたが他二人がそうだったのは知らなかった。
もしかしたら、マスターはクランを辞める人たちの活躍を見たかったのかもしれない。
(それなら、私が入っているのはおかしな話だけど……)
と言うか、ここにいる辞める三人に限らず最近出ていく人間が増えた気がする。
つい昨日も、今週か来週にクランを辞める仲間がいた。
残念なことに辞める前に亡くなってしまったが
「うっ……」
「大丈夫?イージス」
「だ、大丈夫です。少し外に出てきますね」
「そ、そうかい」
嫌なことを思い出してしまった私は装備と大盾を片手に、少し外に出ることにした。
だが、これが虎の尾を踏んでしまうきっかけになるのを今の私は知らない。




