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欲望の教科書 肉蒲団 ―史上最も過激な仏教的自己啓発書―  作者: 光闇居士


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第四面:奇侠・賽崑崙との邂逅、そして美をめぐる密約

挿絵(By みてみん)

『月下の密談、寝台の上の豪傑と名士』


【しおの】

遊学の旅、佳人を求めて

岳父と妻に別れの言葉を告げ、未央生はあてどなき遊学の旅路へと歩み出した。彼の足には定まった行く先などなく、ただひたすらに、麗しい佳人のいる土地こそが、我が身を寄せ、心を安らげるべき故郷だと信じていた。一つの府、一つの県を通り過ぎるたび、彼は必ずそこに数日間滞在した。

若くして名士として知られた未央生は、日頃から科挙の学問に励む傍ら、詩社を結んで仲間と集うことを好み、その文章は広く世に出ていた。千里四方の学問を志す者で、彼の名を知らぬ者はないほどであった。それゆえ、彼がどこを訪れても、土地の友人たちがこぞって彼を詩社へと招き入れた。

しかし、未央生にとって詩を詠み、友と交わることはあくまで二の次であった。彼の人生における第一の要事、それは類い稀なる佳人を探し求めることに他ならなかった。毎朝早くに床を離れると、賑やかな大通りであろうと、静かな裏道であろうと、女性の姿を求めて隈なく歩き回るのだった。だが、彼の目に映るのは平凡な女たちばかりで、天が与えたもうた真の美しさ、国を傾けるほどの美貌には、ついぞ巡り会えずにいた。


旅籠での豪傑との出会い

ある日のこと、彼は人里離れた寂れた旅籠に逗留していた。連れていた二人の供人が揃って病に倒れ、身動きが取れなくなってしまったのだ。一人で外出したいと思っても、供もなしに婦人に出会っては体裁が悪い。彼はただ独り、宿の部屋でやり場のない退屈をかこっていた。

その時、ふと隣室の客が顔を出し、声をかけてきた。

「旦那様、お一人ではさぞかし退屈でございましょう。わたくし、あちらの部屋に酒を一壺用意しております。もしお嫌でなければ、こちらへお越しになり、一杯ご一緒しませんか」

未央生は応えた。「旅先での束の間の出会い、ご迷惑をおかけするわけにはまいりません」

すると男は言った。「わたくしが聞き及ぶところ、学問をなさるお方は、形式にとらわれず、さっぱりとしたお付き合いを好まれるとか。旦那様はなぜそれほどまでに堅苦しくなさるのですか。わたくしはしがない身の上の者ですが、人と交わることを何よりの喜びとしております。旦那様のように将来を嘱望されるお方には、気後れしてしまうのも確かですが、こうして同じ屋根の下で過ごすのも何かのご縁。ほんの少しの間、腰を下ろしていただくことに、何の差し障りがありましょう」

未央生はちょうど退屈の極みにあり、誰かと語り合いたいと切に願っていたところだった。彼はすぐにその誘いを承諾した。男に導かれて隣室へ移ると、男は未央生を上座に促し、自らはその脇に座ろうとする。未央生が再三それを辞し、ようやく男を向かいの席に着かせると、男は名を尋ねてきた。

未央生は自分の号を告げ、男に名を問い返した。

男は言った。「わたくしのような無骨者に、風雅な別号などございません。ただ、人呼んで賽崑崙と申します」

未央生は驚きの声を上げた。「それはまた、変わったお名前ですね。どのような由来があるのですか」

男は答えた。「その話をしては、旦那様が恐れをなして、わたくしと杯を交わすのがお嫌になるやもしれません」

「いや」と未央生は言った。「この私とて、豪侠の気概を持つ者です。たとえ神仙や鬼神が目の前に現れようとも、恐れはしません。身分の貴賤や賢愚など問いません。ただ、互いの心が通じ合うかどうか、それだけです。どうして嫌がることなどありましょうか」

賽崑崙は言った。「ならば、遠慮なく申し上げましょう。わたくしは、日頃、盗みを稼業としております。塀を飛び越え、壁を通り抜ける術を心得ており、たとえ数千丈の楼閣であろうと、幾重にも重なる厚い壁であろうと、いともたやすく寝室の奥深くへと忍び込み、金品を一つ残らず頂戴してまいります。盗まれた家の主は、翌朝になってもそれに気づくことさえございません。世間では、古に崑崙という男が郭令公の屋敷に忍び入り、紅綃という美女を盗み出したという話がございますが、彼がそれを成し遂げたのは生涯にただ一度のこと。わたくしは、同じようなことを幾百回となく繰り返してまいりました。それゆえ、人々はわたくしを、崑崙に匹敵する者、すなわち賽崑崙と呼ぶのでございます」

未央生はこれを聞いて大いに驚いた。「それほど長くその道におられ、名も知られているというのに、どうしてお縄にならずに済んでいるのですか」

賽崑崙は答えた。「もし捕まるようなことがあれば、もはや豪傑とは申せません。昔から申します、賊を捕らえるには現行犯でなければならない、と。盗品さえ押さえられなければ、たとえわたくし自身が『私が盗んだ』と名乗り出たところで、誰にもどうすることもできはしないのです。わたくしを知る遠近の人々は、媚びへつらうことはあっても、怒らせて報復を恐れぬ者などおりません。それに、わたくしめにもささやかながら義侠の心がけがございまして、自らに課した五つの戒め、申なれば『五不偷』というものがございます。それは、不幸に見舞われている家は盗まぬ、祝い事のある家は盗まぬ、顔見知りの家は盗まぬ、一度盗んだ家は再び盗まぬ、そして無防備な家は盗まぬ、というものです」

未央生は興味を惹かれ言った。「その五つの戒め、ぜひ詳しくお聞かせ願いたい」

賽崑崙は語り始めた。「人の家に不幸があった時、たとえば病や死、あるいは不意の災難に見舞われ、まさに困難の渦中にある時にわたくしが盗みに入れば、それは火に油を注ぐようなもの。その家は二度と立ち直れなくなるでしょう。ゆえに、盗みません。

人の家に祝い事がある時、たとえば嫁取りや新築、あるいは子の誕生や祝賀の席など、まさに慶事の最中にある時にわたくしが盗みに入れば、その喜びの場に水を差し、今後の行く末に影を落とすことになります。ゆえに、盗みません。

見ず知らずの家を狙うのは構いませんが、毎日顔を合わせ、挨拶を交わすような馴染みの家を盗んだなら、相手はこちらを疑わぬでしょうが、わたくし自身が顔を合わせるたびに後ろめたさを感じることになる。ゆえに、盗みません。

裕福な家には金銀が有り余っております。一度忍び込み、その豊かな財産から少しばかりお裾分けをいただくのは、さしたる過ちではありますまい。しかし、一度味を占めたからといって、何度もその家を荒らし続ければ、それは飽くことを知らぬ貪欲な者。そのような真似はいたしません。

そして、夜毎びくびくと盗賊を恐れ、常にそのことを口にするような家は、わたくしを侮っているのと同じこと。その侮りには、わたくしも侮りをもって応えます。一度忍び込み、わたくしの腕前がそう易々と防げるものではないと思い知らせてやるのです。しかし、心が広く度量の大きい家は、金銭など身外の物と気にかけず、大門を閉め忘れようと、部屋の戸を開け放していようと、頓着いたしません。そのような家を盗むのは、弱い者いじめに等しい。わたくしは決してそのようなことはいたしません。

これが、わたくしの守る五つの戒めでございます。遠近の人々は、わたくしにこのような美点があることを知っておりますので、盗賊と知りながらも、盗賊扱いをせず、かえって親しく交わってくださるのです」


結盟:美を求める密約

未央生は彼の話を聞き、思わず嘆息した。盗賊の中に、これほどの豪傑がいようとは。

(もし彼と親しくなれたなら、他のことでは役に立たずとも、いつか紅綃や紅拂のような佳人に出会い、その家が豪邸で近づく術がない時、あるいは我が身一つでは忍び込めない時、彼にあの崑崙の役目を頼めたなら、どれほど素晴らしいことだろうか)

そう思い至ると、彼は興奮のあまり、思わず手を打ち、足を踏み鳴らしていた。

しかし、賽崑崙から義兄弟の契りを結ぼうと持ちかけられた時、未央生の心には一瞬ためらいが生まれた。口では「結構なことです」と応じながらも、心の中ではまだ踏ん切りがつかずにいた。

賽崑崙は彼の心の内を見抜いたように、口を開いた。「賢弟は、口では承知したと言いながら、まだ心に迷いがあるご様子。もしや、わたくしと関わることで、ご自身に累が及ぶことを恐れておいでか。ご安心めされよ。わたくしは腕が立ちますゆえ、決してしくじることはございませんが、万が一捕らえられたとしても、死ぬのはこの身一つ。決して無実の方にご迷惑をおかけするような真似はいたしません」

未央生は心を見透かされ、さらにその疑念まで晴らしてくれたことに感じ入り、すぐに心を決めた。二人はそれぞれ金銭を出し合い、三種の供え物を整え、年月日を記した誓紙を交わし、旅籠の一室で血をすすって盟約を結び、生死を共にすることを誓った。

賽崑崙が年長であったため、未央生が弟となった。二人は供え物を分け合って食べ、夜が更けるまで酒を酌み交わした。やがてそれぞれの床に就こうという時、未央生が言った。

「別々の部屋で寝ては、互いに寂しいではありませんか。よろしければ、私の寝台で枕を並べ、語り合いながらこの長い夜を明かすというのはいかがでしょう」

賽崑崙は言った。「それも一興ですな」

二人は衣服を脱ぎ、同じ寝台に入って横になった。


盗賊が語る閨房の秘め事

寝台に上がるやいなや、未央生はいつもの癖で呟いてしまった。

「これほど良い土地だというのに、どうして心惹かれる婦人が一人もいないのだろう」

これを聞いた賽崑崙が尋ねた。「賢弟はなぜそのようなことを。もしや、まだご結婚なされていないのですか。それとも、方々で奥方をお探しで?」

未央生は答えた。「妻はおります。ですが、一人の男が、どうして一人の女だけを頼りに一生を終えることなどできましょうか。妻の他にも、幾人かの伴侶を得てこそ本望というものです。兄上には隠し立ていたしませんが、私はこの上ない色好みでして。今回の旅も、表向きは遊学ですが、実のところは佳人を探すためのもの。多くの土地を巡りましたが、出会う婦人といえば、厚い白粉で浅黒い肌を隠しているか、きらびやかな装飾で貧相な姿を覆っているかで、化粧をせずとも香り立つような絶世の美女など、どこにもいやしませんでした。ですから、見るのも嫌になり、つい愚痴をこぼしてしまったのです」

賽崑崙は言った。「賢弟、それは大きな思い違いというものです。天下の美女というものは、決して人前に姿を現しはしません。そして、人前に出るような女は、決して美女ではないのです。良家の娘は言うに及ばず、たとえ妓楼の女であっても、よほど醜く、誰からも相手にされぬ者だけが、戸口に立って客を引くもの。少しでも値打ちのある女ならば、黙って座していても男が訪ねてくるものです。ましてや良家の娘が、どうして門前に立ち、見ず知らずの男に顔を晒したりしましょうか。もし、真の美女のありかを知りたいのであれば、このわたくしに尋ねるのが一番でしょう」

未央生はこれを聞き、驚いて上半身を起こした。「それはまた妙なことをおっしゃる。兄上は色里に出入りするわけでもないのに、どうして私の求めるものを知っているのですか」

賽崑崙は静かに語り始めた。「わたくしは色里には参りませんが、閨房の秘め事については、この目ではっきりと見て、この耳ではっきりと聞いております。さて、お尋ねしますが、天下の美女は、裕福な家に多いと思われますか、それとも貧しい家に多いと思われますか」

「それは当然、裕福な家の方が多いでしょう」と未央生は答えた。

「では、その裕福な家の美女たちは、顔に化粧を施し、衣をまとっている時と、化粧を洗い落とし、衣を脱ぎ捨てた時と、どちらがその真の姿をよく観察できると思われますか」

「もちろん、化粧を落とし、裸になった後の方が、その本質がよく見えるに決まっています」

「ならば、お分かりでしょう。わたくしたち盗賊は、貧しい家には見向きもしません。出入りするのは、珠玉で飾られたような屋敷ばかり。おのずと、目にする女性も多くなります。しかも、わたくしが赴くのは夜も更け、あたりが寝静まった頃。女たちは衣を脱ぎ、月の光を浴びて涼んでいるか、寝室の帳を開け放ち、灯りの下でまどろんでいる。わたくしは、彼女たちが完全に眠りに落ちたか確かめるため、すぐには仕事に取りかからず、暗がりに身を潜め、その姿をつぶさに観察するのです。物音を立てぬか、身じろぎせぬか、深く寝入るまで、じっと目を凝らしている。ですから、実に詳しく見ることができる。顔立ちや肌の艶だけでなく、秘められた場所の形や、そこに茂る毛の濃淡までもが、はっきりと見えるのです。この数百里四方の屋敷で、どの女が美しく、どの女がそうでないか、わたくしの頭の中にはすべて刻み込まれております。もし賢弟がそちらの方面にご興味がおありなら、このわたくしに尋ねるに越したことはございません」

未央生は最初、布団の中で耳を傾けていただけだったが、この話を聞くに至り、思わず胸をはだけて起き上がった。「なるほど、ごもっともだ!富豪の家の奥方など、人目につくことすらない。たとえ見かけたとしても、その素顔など分かりはしない。あなた方のようなお方こそが、彼女たちの真の姿を知り得るのですね。もう一つお尋ねしますが、あなたが美しい婦人の豊かな秘部を見た時、万が一にも欲情してしまったら、どうなさるのですか」

賽崑崙は言った。「若い頃は、その光景に耐え切れず、暗がりで婦人に向かい、まるで彼女と交わっているかのように自らを慰めたこともありました。しかし、何度も見るうちに、それも当たり前の光景となり、女の秘められた場所を見ても、ただの道具のようにしか見えなくなり、心が動くこともなくなりました。ただ、彼女が夫と交わっているのを見た時、漏らす嬌声や、愛液で濡れそぼち、ぴちゃぴちゃと音を立てるのを聞くと、つい興奮してしまうのです」

未央生は、彼の語る話の妙に引き込まれ、体を反転させて賽崑崙の方を向き、寝そべって熱心に耳を傾けた。

賽崑崙は続けた。「もしお聞き苦しくなければ、二、三の例を挙げてお聞かせしましょう。お聞きになりたいですか」

未央生は言った。「素晴らしい!ぜひお聞かせください。あなた様とこうしてお話ができましたことは、まさしく十年書を読むにも勝る得難い経験でございます」

「わたくしが見てきたことはあまりに多く、どこから話したものか。では、賢弟が一つ問いを発すれば、わたくしがそれに一つ答えるという形にいたしましょう」

未央生は尋ねた。「婦人というものは、交わることを好む者が多いのですか、それとも好まぬ者が多いのですか」

賽崑崙は答えた。「それはもちろん、好む者の方が圧倒的に多い。およそ百人の婦人がいれば、好まぬ者など一、二人いるかどうか。残りは皆、交わることを好みます。ただし、この『好む者』の中にも二種類ございます。心から交わりを好み、それを口にも出す者。そして、心では好んでいながら、わざと『嫌だ』と見せかけ、夫に無理強いされてから本性を現す者です。

この二種類のうち、前者の方が始末は早い。かつてわたくしは、暗がりから、女が夫に交わりをせがむのを見たことがございます。これはいかにも淫らな女で、夜通し求め続けるのだろうと思いきや、数度交わるとすぐに疲れてしまい、あとは気だるそうに眠りこけて、夫がそれ以上求めても求めなくても、どうでもよくなってしまうのです。

しかし、心では好んでいながら、わざと嫌がるふりをする婦人は、実に始末に負えません。

以前、ある屋敷に忍び込んだ時のことです。夫が妻を抱き寄せ交わろうとしましたが、妻はそれを拒みました。夫が無理にのしかかると、妻は突き返す。夫は妻が本気で嫌がっているのだと思い込み、やがていびきをかいて寝入ってしまいました。

するとその婦人は、わざとらしく寝返りを打って夫を起こそうとしました。しかし夫は起きない。今度は手で揺さぶってみましたが、夫は深く眠りこけており、どうしても目を覚ましません。すると彼女は、突然大声で叫んだのです。『泥棒!』と。

他の盗賊であれば、これに驚いて逃げ出すところでしょう。しかし、わたくしには分かっておりました。彼女が泥棒を呼んでいるのではなく、夫を起こして交わりたいのだということが。

案の定、夫が驚いて飛び起きると、彼女は巧みな言葉でごまかしました。『まあ、猫が鼠を捕まえる音だったみたい。私が泥棒と聞き間違えたのね。何でもないわ』。そう言うと、夫を強く抱きしめ、自分の秘部を夫のそれに擦りつけるようにしました。夫はこれに欲情し、再び彼女の上に乗り交わり始めたのです。

最初は、体を揺さぶられても、まだ耐えて淫らな声は上げませんでしたが、数百回も交わすうちに、次第に甘い鼻息を漏らし、嬌声を上げ始め、下からは愛液が止めどなく流れ出しました。

真夜中まで交わり続けると、さすがに夫は疲れて眠ってしまいましたが、彼女の方はまだ欲情が収まりません。かといって、また夫を起こして交わらせるわけにもいかない。そこで、病気で苦しむかのように、ため息をつき始めました。夫は心配して彼女の胸や腹をさすりましたが、彼女は眠ろうとしません。夫も眠れなくなり、仕方なく再び彼女の上に這い上がると、一から交わりを再開しました。鶏が鳴く頃、二人はようやく体を休めました。わたくしは一晩中その様子を見張っていましたが、いざ盗みを働こうとした時には夜が明けてしまい、身を隠して立ち去るしかなかったのです。ですから、この種の婦人というものは、実に手に負えぬものだと知っております」

未央生は、その話がこの上なく面白いと思い、体をひっくり返して片側を向き、夢中で聞き入っていた。

賽崑崙は言った。「賢弟がまだお聞きになりたいのであれば、もう一、二話いたしましょうか」

未央生は言った。「素晴らしい!もしそうしていただけるなら、まさしく、あなた様との一夜の語らいは、十年書を読むにも勝るものです。どうぞ、早くお話しください」

「わたくしが見たことはあまりに多く、どこから話したものか。では、先ほどのように、賢弟が一つ問いを発すれば、わたくしがそれに一つ答えるという形にいたしましょう」

未央生は尋ねた。「婦人は交わる時、快感に身をよじる者が多いのですか、それともよじらぬ者が多いのですか」

賽崑崙は答えた。「それはもちろん、よじる者の方が圧倒的に多い。およそ十人の婦人がいれば、快感に身をよじらぬ者など一、二人いるかどうか。残りは皆、身をよじります。ただし、婦人の口から漏れる快感の声には三つの種類がございます。それは、わたくしたち盗賊にしかはっきりと聞き分けられず、交わっている当の男にはかえって分からぬものなのです」

「どのような三種類ですか」と未央生は尋ねた。

賽崑崙は語った。「交わりが始まったばかりで、まだ快感には至らず、心では感じていないが、夫を興奮させるために、体だけが感じているかのように振る舞う。この時の声は、はっきりと聞き取ることができ、口にする言葉も一つ一つ明瞭です。これが一つ目の快感の声です。

交わって快感に至った時、心も体も、五感も四肢もすべてが悦びに打ち震える。この時の声も聞き分けられますが、口から出る言葉はすべて曖昧で、息も絶え絶えになります。これが二つ目の快感の声です。

そして、交わって快感の極みに達した後、精神は疲れ果て、手足はだるくなり、もはや身をよじることさえできない。この時の声は喉の奥で鳴るため、ほとんど聞き取ることができません。かつてある屋敷に忍び込んだ時、夫婦が交わるのを見ました。最初は激しく体をぶつけ合い、雷のような音が響いておりました。しかし、終わりに近づくと、その婦人は音も立てず、身じろぎもせず、まるで男に生きながら殺されたかのようでした。わたくしがそっと近づいて耳を澄ますと、喉の奥から、いい、いいと、囁いているような、ため息のような声が聞こえてまいりました。わたくしはその声を聞き、彼女が快感の頂点にいることを悟り、思わず欲情が込み上げ、全身が痺れてしまいました。自ら慰めることもなかったのに、己の精がほとばしり、寝具を濡らしてしまったほどです。

ですから、婦人には、さらにこの三つ目の快感の声があるのだと分かったのです」

未央生はこの話を聞くうちに、全身がむず痒くなるような心地になり、知らず知らずのうちに、熱いものがほとばしり寝具を濡らしていた。さらに他のことを尋ねようとしたが、いつの間にか東の空が白み始めていた。

二人は起き上がり、身支度を整えると、再び向かい合って座り、艶めかしい話の続きに興じた。こうして数日間、親しく交わるうちに、二人の友情は深く、固いものとなっていった。

未央生はついに賽崑崙に本心を打ち明けた。「私は生涯、女色を命として生きてまいりました。今、兄上に出会えたことは、まさに三世にわたる幸運です。この胸の内を打ち明けずにいれば、せっかくの好機を逃すことになりましょう。どうか、兄上にお願いがございます。あなた様が見てこられた婦人の中で、最も美しいと思われる方を一人お選びいただき、この私に一目拝ませてくださるよう、何かお力添えをいただけないでしょうか。もし本当に絶世の美女であったなら、兄上には隠しませんが、私の運命には良縁を呼ぶ星が巡っているのです。生涯に一度、女性と出会いさえすれば、私が彼女を求めずとも、彼女の方から自然と私を訪ねてくるはず。その暁には、どうか兄上にその神通力を発揮していただき、私たちの仲を取り持っていただけませんか」

賽崑崙は首を横に振った。「それはできかねます。わたくしには、『一度盗んだ家は再び盗まぬ』という戒めがございます。財物を盗んだ家でさえ二度と足を踏み入れるのは忍びないのに、ましてや女性の操に関わることなど、とてもできはしません。しかし、こういたしましょう。今後は賢弟のために心を配り、もしどこかの屋敷で美しい婦人を見つけたならば、その時は財物を盗まず、すぐに引き返して賢弟にご相談し、二人の仲を取り持つ手助けをいたしましょう。これならば、お引き受けできます」

未央生は言った。「私は、義士を見る目がありませんでした。先ほどの発言、どうかお許しください。しかし一つ、兄上からそのようなお言葉をいただいた上は、もし絶世の婦人を見つけても、くれぐれも財物を盗んで、今日の約束をお忘れになるようなことはなさらないでください。もし事が成就した暁には、必ずや厚く御礼をさせていただきます」

賽崑崙は言った。「そうおっしゃるところを見ると、賢弟はやはり義士を見る目がない。わたくしがもし賢弟からの礼を目当てにするような人間であれば、今すぐあなたの荷物を奪う方がよほど手っ取り早いでしょう。たとえ賢弟が将来、官職に就き、わたくしを援助してくださるとしても、その銀子などたかが知れています。わたくしが一仕事すれば稼げる額にも満たない。そのような礼など求めはしません。わたくしが今、賢弟に美しい婦人を見つけると約束したからには、明日にも必ず見つけ出してみせましょう。賢弟はもう、わたくしと出会ったのですから、これ以上あちこち彷徨う必要はございません。しばらくこの辺りに部屋を借りて、読書でもしながらお待ちください。わたくし一人の力に頼るだけでなく、もし賢弟ご自身が良い女を見つけたなら、ご自分で行動なさるがよい。わたくしの方で見つけたら、すぐに報告に参ります。二つの道から探せば、必ずや良縁に巡り会えるはず。決して無駄にはなりますまい」

未央生は大いに喜び、すぐに人を使って宿を探させた。別れに際し、彼は賽崑崙の手を取り、改めて四度深く拝礼してから、その場を辞した。

さて、未央生の奇妙な出会いは、この後どのような展開を迎えるのであろうか。それはまた、次回の物語で。

評して曰く、賽崑崙の人品は、未央生に十倍も勝る。これでは、未央生が盗賊と交わったのか、それとも賽崑崙が盗賊と交わったのか、分かったものではない。

第四回の要約

色男でインテリの主人公・未央生びおうせいは、「最高の美女と出会う」という目的のため、遊学と称して旅に出ます。しかし、なかなか理想の女性には巡り会えず、退屈な日々を送っていました。

ある日、寂れた宿屋で、賽崑崙さいこんろんと名乗るミステリアスな男と出会います。彼は、実は「伝説の大泥棒・崑崙に匹敵する」と言われるほどの凄腕の盗賊でした。しかし、彼には「不幸な家は襲わない」「一度盗んだ家は狙わない」など、独自の美学とルール(五不偷)を持つ、義賊的な一面がありました。

二人はすっかり意気投合し、義兄弟の契りを結びます。その夜、同じベッドで語り合ううち、話は女性のことに。未央生が旅の本当の目的を打ち明けると、賽崑崙は驚くべき事実を告白します。

「本当の美女は、昼間、表を歩いてなんかいない。彼女たちの素顔や本性を知るには、夜、寝室に忍び込むのが一番だ。俺たち泥棒は、仕事柄、裕福な屋敷の奥様や娘さんたちの、化粧を落とした無防備な姿から、夫との夜の営みまで、誰よりも詳しく観察しているんだ」

賽崑崙は、女性の性の本音や、快感のサインの種類など、生々しくも具体的な話を披露します。書物では決して学べない「リアルな情報」に衝撃と興奮を覚えた未央生は、「ぜひ、あなたが見た中で最高の美女との出会いをセッティングしてほしい!」と懇願します。

賽崑崙は快諾し、二人は「最高の女を探し出す」という壮大なプロジェクトのために、ここに固い盟約を結んだのでした。


この物語の文化的・宗教的メッセージの解読

この作品は、単なる艶笑小説ポルノグラフィーではなく、書かれた時代の社会や価値観に対する鋭い批評と、人間の本質への深い洞察が込められています。

1.「建前」と「本音」の世界の逆転

この物語の核心は、社会の「表(建前)」と「裏(本音)」の価値をひっくり返して見せることにあります。

未央生:学問を修めた名士という「表」の顔を持つが、その行動原理は飽くなき性欲という「本音」。

賽崑崙:盗賊という社会の「裏」の存在だが、彼独自の義侠心や哲学を持っている。

物語は、「立派なはずの名士よりも、卑しいはずの盗賊の方が、よほど物事の本質や人間性を理解しているのではないか?」と読者に問いかけます。これは、儒教的な道徳観や身分制度が絶対的であった社会に対する、痛烈な皮肉です。

2.知識の価値観への挑戦 ―「頭でっかちな知識」 vs 「生々しい体験知」

未央生の知識は、科挙の勉強や詩文といった、書物から得た観念的なものです。しかし、彼が最も知りたい「女性の本質」については全くの無力です。一方、賽崑崙の知識は、法を破り、人の寝室に忍び込むという危険な「実践」によって得られた、極めて生々しい体験知です。

未央生が賽崑崙の話に「十年間の読書に勝る」と感動する場面は、「机上の空論よりも、現場で得たリアルな情報の方が価値がある」という、現代にも通じるメッセージを示しています。

3.人間の「欲望」の絶対的肯定

この物語が書かれた明代末期は、厳格な儒教道徳が揺らぎ、個人の感情や欲望(「情」)を肯定する新しい思想が生まれた時代でした。この作品は、その時代の空気を色濃く反映しています。

仏教的な禁欲や、儒教的な倫理観が「建前」であるのに対し、この物語は人間の根源的なエネルギーである「性欲」を、隠すべき恥ではなく、人間を突き動かす力として真正面から肯定しています。未央生の旅は、単なる色事の旅ではなく、「最高の快楽とは何か」という、ある種の哲学的・求道的な探求の旅として描かれているのです。


結論として、この物語が読者に示したかったのは、社会的な建前や道徳観念の裏に隠された、人間のどうしようもない欲望や本音の面白さ、そしてその生々しい真実こそが、人間を理解する鍵なのだということでしょう。それは、時代を超えて人々を惹きつける、この文学作品の普遍的な魅力の源泉となっています。

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