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欲望の教科書 肉蒲団 ―史上最も過激な仏教的自己啓発書―  作者: 光闇居士


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第三面:鉄扉の娘

挿絵(By みてみん)

『蝋燭の光、開かれる絵巻』

夜深く燭揺れ、

画巻に触れて心惑う。

初めは戸惑い、

今は誘惑に酔いしれる。

二つの影、

秘めやかな情が燃え上がる。


【しおの】


さて、未央生が孤峰和尚と別れた後、道すがら彼の胸のうちには不満の念が渦巻いていた。

「まったく、筋の通らぬ話だ。こちらは二十代の盛り、咲き誇る花のようなこの私に、髪を剃り、苦行を積めとは。世にこれほど道理をわきまえぬ者がいようとは。彼がかつて名士でありながら仏門に入ったと聞き、その胸中にはさぞ並外れた見識が秘められているに違いないと期待したのが間違いだった。禅の機微に触れ、我が文才の糧にしようとしたのが、かような手ひどい仕打ちを受けるとは。あげくの果てに、妻に不貞を働かれる男を嘲るような偈を私に贈るとは、到底受け入れられるものではない」

彼は一人、憤りを募らせる。

「私は天下に恥じぬ堂々たる男だ。官職に就けば国を治め、万民を安んじることができる。どうして妻一人を治められぬことがあろうか。今、私は生涯の伴侶たるべき女性を見出したのだ。それをみすみす見過ごすことなどできようはずもない。たとえ色恋の罪を多少犯したとしても、我が家の閨を固く守り、他の男にその隙を窺わせるような恥辱を受けるつもりは毛頭ない。まして、私ほど見目麗しい男に嫁いだ婦人が、他の男に言い寄られたところで、見向きなどするものか。操を失うなど、万に一つもあり得ぬことだ」

そう思うと、あの和尚の偈が腹立たしかった。

「本来ならば、あの紙片など破り捨てて然るべきだ。だが、後日再会した折、彼の非礼を封じるための証拠がなくてはつまらない。しばし懐に忍ばせておくこととしよう。彼が己の不明を悔いる日が来るか、見届けてやるまでだ」

決意を固めた未央生は、その偈の紙を丁寧に折り畳むと、帯の間に深く差し入れた。

家に帰り着いた未央生は、さっそく供の者たちに命じ、あらゆるつてを頼って仲介の女たちに触れを出させた。求めるは「天下に並ぶ者なき佳人」である。

彼はもとより由緒ある家柄の生まれで、才気と美貌を兼ね備えていた。彼を婿に迎えたいと願わぬ親はなく、夫としたいと思わぬ娘もいなかった。触れを出してよりこのかた、日に何人もの媒婆が縁談を携えて彼の屋敷を訪れた。

さほど身分の高くない家の娘であれば、未央生自らが出向いて顔を確かめたが、名家の令嬢となると体面を重んじるため、寺院や郊外で偶然の出会いを装い、互いにそれと知らぬふりで品定めをした。その結果、多くの娘たちが未央生に焦がれて恋の病に罹ったが、彼の眼鏡にかなう女性は一人としていなかった。

ある日、一人の媒婆が言った。

「こうなりますと、そこいらの娘御では旦那様のお相手は務まりますまい。かの鉄扉道人のお嬢様、玉香様こそが、あなた様にふさわしいお方かと。ただ、あのお父上がひどい変わり者でございまして、娘を見合いさせるなどとんでもない、と取りつく島もございません。されど旦那様は、ご自分の目で確かめねば承知なさらぬ。これではどうにもならぬ縁でございます」

未央生は訝しんで尋ねた。

「なぜ『鉄扉道人』などと呼ばれるのだ。また、なぜその娘が美しいと断言できる。それほど美しいのなら、なぜ人に見せようとしない」

媒婆は事の次第を語り始めた。

「そのお方は有名な老学者で、たいそう孤高なことで知られております。己の田畑で生計を立て、人に頼ることはございません。生涯友人もなく、一人家に籠って書を読んでおられる。誰が訪ねて門を叩こうと、開けるどころか返事一つしないのです。ある高貴な方がその名声を聞き、屋敷を訪れたことがありました。長らく門を叩いても応じぬため、詩を一枚したためて門に貼り、立ち去ったそうでございます。その詩に、こうありました」

——高士は粗末な蓬戸に住むというが、誰が知ろう、先生の門は鉄でできているとは。

「その詩をご覧になった道人は、『鉄扉の二文字は、まさに我が意を得たり』とたいそう気に入り、それ以来ご自分で『鉄扉道人』と号するようになったのです。跡継ぎの男子はおらず、ただ一人いらっしゃるお嬢様が、花か玉かと見まごうばかりの美しさ。誰と比べようもございません。その上、父君から手ずから教えを受け、多くの書を読みこなし、詩歌の才にも恵まれております。家のしつけは厳しく、寺に参ることも、芝居見物に出ることもなく、十六になる今日まで人前に顔を見せたことがございません。私どものような者でさえ、門の内へは入れませんでした」

媒婆は一息つき、続けた。

「昨日、その道人が門前に立っておられるのを見かけ、私を呼び止められました。『そなた、もしや媒婆ではないか』と。私が『仰せの通りでございます』と答えますと、家の中へ招き入れ、お嬢様を指してこう言われたのです。『これが我が娘だ。まっとうな婿を取り、息子として老後の面倒を見させたい。よくよく心して、私にふさわしい男を探すがよい』と。私はすぐに、あなた様のことを申し上げました。すると道人は、『彼の才名は聞き及んでいるが、徳行のほどが分からぬ』と。私が、『旦那様は若くしてお心も落ち着き、何一つ欠点はございません。ただ一つ、ご自分の目で確かめねば祝言は挙げぬと申しております』とお伝えしたところ、道人はたちまち顔色を変え、『戯言を申すな!巷の妓女ならいざ知らず、由緒ある家の娘を男に品定めさせる道理があるか』と、にべもなく追い返されてしまいました。これを聞いては、私もそれ以上は何も言えず、すごすごと引き下がった次第でございます。ですから、この縁談は成就いたしませぬ」

これを聞いた未央生は、密かに考えを巡らせた。

「今の私には、上には父母もなく、下には兄弟もいない。明日妻を娶ったところで、誰が私の心を戒めてくれるだろうか。たとえ私が自ら妻の貞操を見張るとしても、家を空ける時がないわけではない。あの老人のように古風な人物であれば、私が気を揉むまでもなく、娘を厳しく律してくれるだろう。私が一生家を留守にしても案ずることはない。ただ、一度も顔を見ずに決めるのは、どうにも腑に落ちぬ。媒婆の口車に乗せられるのはごめんだ。しかし……」

彼は媒婆に言った。

「あなたの言う通り、これ以上の縁談はあるまい。どうか知恵を貸してくれ。せめて一目、彼女の姿を垣間見ることができぬものか。おおよそ見込み違いでなければ、それでよしとしよう」

「それは断じてできぬ相談でございます」と媒婆は首を振った。「お信じになれないのであれば、あとは占いやおみくじに頼り、神仏にお尋ねするほかございません。縁があれば結ばれ、なければ諦めるべきでございます」

「それもそうだな」と未央生は頷いた。「私には、仙人を招き、神託を請う術に長けた友人がいる。彼に頼んで天意を問い、それから返事をすることにしよう」

媒婆は承知して去って行った。

翌日、未央生は身を清め、その友人を自邸に招いた。香を焚き、地に額ずき、静かに祈りを捧げる。

「弟子が願い奉るは、鉄扉道人がご令嬢、玉香のこと。その類まれなる美貌の噂を耳にし、妻に迎えたいと存じます。されど、いまだこの目で確かめてはおりません。大仙よ、願わくばお示しください。もし彼女の美しさが真に絶世であるならば、この縁組をお許しあれ。さもなければ、きっぱりと諦めます。どうか、曖昧な言葉ではなく、弟子がはっきりと心を定められるお導きをお願い奉ります」

祈りを終え、四度拝礼すると、彼は立ち上がり、神意を記すという仙筆にそっと手を添え、それが動き出すのを待った。

やがて筆はひとりでに動き、紙の上に詩を綴り始めた。

紅粉の叢中 第一の人、

鬼を疑い 神を疑うこと勿れ。

只だ愁う 艶冶の将に淫を誨えんことを、

邪正の関頭 好く津を問え。

 右、其の一

この詩を読み、未央生は考えた。「姿が美しいことは間違いないようだ。だが、後半の句は、彼女が男を惑わす相を持つと告げている。まさか、この娘はすでに操を失っているとでもいうのか。詩の後に『其の一』とあるからには、きっと続きがあるはずだ。もう一首を待つとしよう」

仙筆はしばし動きを止めたが、やがて再び紙の上を滑り、さらに四句を記した。

婦女の貞淫 挽きて差わず、

但だ須く男子の善く家を斉うるを。

門を閉ざし 青蠅をして入らしめずんば、

何れの処よりか飛来せん 玉上の瑕。

 右、其の二 回道人の題

未央生は「回道人」の三文字を見て、それがかの呂純陽の別号であると悟り、心から歓喜した。

「この仙人こそ、酒と色事にかけては最も通じておられるお方だ。その方が良いとおっしゃるのだから、間違いあろうはずがない。後の一首は、私の心の疑念を氷解させてくれた。要するに、私自身が心せよ、という戒めであろう。あの古風な老人が私の代わりに厳しく見張ってくれるのだから、何の心配もいらない。後の二句は、明らかに『堅固な門の内には、よこしまな者は決して忍び入れぬ』という意味だ。もはや疑う余地はない」

彼は虚空に向かって呂純陽への感謝の拝礼を捧げると、すぐに人をやって媒婆を呼び寄せた。

「仙人のお告げは上々であった。もはや顔を見る必要はない。すぐにこの縁談を進めてくれ」

媒婆は大いに喜び、鉄扉道人の屋敷へ赴き、未央生の意向をすべて伝えた。

道人は言った。「彼は最初、己の目で見たいと言った。それは色を重んじ徳を軽んじる者であり、その軽薄さは知れたものだ。私が求めるのは品行方正な婿殿であって、見目ばかりを気にする男は不要だ」

仲介料を手にしたい媒婆は、すぐさま巧みな言葉で言い返した。

「彼が見たいと申しましたのは、お嬢様の美しさのためではございません。その立ち居振る舞いが軽々しくないか、福相をお持ちかどうかを確かめ、将来、奥様、すなわち道人様の妻君たるにふさわしくない方を娶ることのないように、との配慮からでございます。しかし、奥様の家のしつけが大変厳しく、お嬢様の婦徳が並々ならぬものと聞き及び、心から安心して承知なされ、私を遣わして求婚に来られたのでございます」

道人はその言葉に筋が通っていると見て、ついにこの縁談を許し、吉日を選んで祝言を挙げることとなった。

媒婆の言葉と仙人の詩を信じたとはいえ、実際に顔を合わせていないため、未央生の胸にはまだ一抹の疑いが残っていた。

しかし、婚礼の夜、拝堂の儀を終え、二人きりで寝室に入り、目を凝らして新妻の顔を仔細に見た時、彼の心は歓喜に打ち震えた。

新婦の美しさは、まことに言葉では言い尽くしがたい。

その人はたおやかで、全身に美が満ち溢れている。愁いを帯びた表情は愛らしく、その顰める眉は誰にも真似できぬ。あまりの繊細さに、まだ新妻の務めが果たせようかと案ずるほどだ。その柳腰はあまりに細く、いかにして抱きしめればよいのか。骨なきがごとく柔らかく、触れることさえためらわれる。

星のごとき瞳が閉じられたかと思えば、すぐにまた開かれる。枕の上で、桃の花びらのような唇が睦言を紡ぐ。その香りを閉じ込めようとしても、巧みな舌の戯れに唇は綻んでしまう。愛らしい喘ぎが止む時、情は限りなく、柔らかな胸は愛の汗に濡れる。四つの目を開けて見つめ合えば、二人の心は赤々と燃える炉の炭のように熱い。

玉香の美しさは比類なきものであったが、閨での戯れについてはあまりに未熟で、夫の意に沿わぬ点がいくつかあった。

それは、彼女が日頃から厳格な父の教えと、謹厳な母の規範のもとで育ったためである。みだらな声を聞くことも、よこしまな色を見ることもなく、読んだ書物は『烈女伝』や『女孝経』ばかり。彼女の口から出る言葉は、ことごとく未央生の考えとは正反対のものであった。

その立ち居振る舞いには、どうしても父親の古風な気風が滲み出ており、未央生は彼女に「女道学先生」というあだ名をつけた。彼が少しでも戯れの言葉をかけると、彼女は顔を真っ赤にして逃げ出してしまうのだ。

未央生は日中の交わりを好み、女性の秘めやかな部分を愛でることで情を高めるのを常としていた。何度か彼女の衣を解こうとしたが、そのたびに彼女は陵辱されるかのごとく叫び声を上げるため、未央生も諦めざるを得なかった。

夜の交わりについては、しぶしぶ応じはするものの、常に義務であるかのような態度で、自ら悦びを見出す様子はない。交わりの体位も、型どおりのものしか受け入れず、新しい試みには決して応じようとしなかった。

山を隔てて火を取るがごとき、またがる姿勢を求めれば、「夫君に背を向ける不貞の罪」にあたると言い、燭台を逆さにするがごとき、倒立の姿勢を試みようとすれば、「一家の主を覆す無礼」だと訴えた。彼女の両足を肩に乗せることさえ、大変な骨が折れた。

まして、悦びの絶頂にあっても決して声を漏らさず、男の昂りを助けることはしなかった。たとえ夫が「愛しい人」「我が命」と呼びかけても、まるで言葉を失ったかのように、応じようとしなかった。

彼女にまったく生気と趣がないことに、未央生はひどく満たされない思いを抱いた。「今は時をかけ、この妻を育て、変えていくしかない」と彼は考えた。

彼はすぐに書画を商う店へ足を運び、極めて精巧な春画の画集を一冊手に入れた。それは大学者、趙子昂の筆によるもので、全部で三十六葉からなり、唐詩の「三十六宮、春ならざるはなし」という句にちなんだものであった。

これを持ち帰り、玉香と共に紐解き、「男女の交わりというものは、私が創り出したものではなく、古人もまた嗜んだものである。この趙文敏先生の墨跡がその証拠だ」ということを示そうと考えたのだ。

初め、玉香はその冊子が何であるか知らず、手に取った。開くと、最初の二頁には「漢宮遺照」の四文字が記されている。漢の宮中には賢妃や淑女が多くいたから、きっと彼女たちの肖像画であろうと思い、その顔立ちを確かめようと頁をめくった。

ところが三頁目を見ると、一人の男が女を抱きしめ、二人とも肌を露わにし、築山の上で事に及んでいる姿が描かれている。彼女は思わず顔を赤らめ、怒りを込めて言った。

「このような縁起でもないものを、どこからお持ちになったのです!閨が穢れます。早く下女に命じて燃やしてしまいなさい!」

未央生は彼女の手を取り、制した。

「これは骨董の品で、百金の値がつくものだ。友人に借りて見ているのだ。もしそなたが百金を出せるなら燃やしても構わぬが、出せぬのなら、私が一、二日楽しんでから返すまで、ここへ置いておけ」

玉香は言った。「こんな下品なものを見て、何になるというのです」

「もし下品なことであれば、絵師も描かず、好事家も大枚をはたいて求めはしまい」と未央生は言った。「これは天地開闢以来、第一の正当な営みであるからこそ、文人墨客が絵筆に描き、絹地に表装し、書画店で売られ、書斎に秘蔵されるのだ。これによって後世の人々がその手本を知るためにな。さもなくば、陰陽交合の理は次第に廃れ、やがては夫が妻を捨て、妻が夫に背き、子孫を残す道が絶え、ついにはこの世から人がいなくなってしまうだろう」

「私が今日これを借りてきたのは、自分が見るためだけでなく、そなたにもこの道理を知ってほしいからだ。そうすれば、間違いなく子を授かり、跡継ぎを成すことができる。そなたが、あのお堅い父親に道を誤らされ、夫婦の間に実りがなくなる、という事態を避けるためだ。どうして怒ることなどあろうか」

玉香は言った。「私には、この行いが正当なことだとは信じられません。もし正当なことならば、なぜ昔の人は、人目のある日中に、堂々と行うよう教えなかったのですか。なぜ夜更けに、人目を忍んで行うのでしょう。この一点から見ても、正当なことではないと分かります」

未央生は笑った。

「その言葉は、そなたを責めるべきではないな。そなたの父親の過ちだ。そなたを家に閉じ込め、経験豊かな女友達が色恋の話を教えてくれなかったから、見聞が狭く、世の機微を知らぬのだ」

「考えてもみよ。世の夫婦で、日中に交わらぬ者たちがどこにいよう。そして、その営みを公然と人に見せびらかす夫婦がどこにいようか。もし夫婦が日中に交わらなければ、あの絵師は、どうしてあのような体位の仕組みを知り、人を魅了するほどに描き得たというのだ」

玉香は言った。「それでは、私の父と母は、なぜ日中に交わらないのですか」

「そなたに問うが」と未央生は言った。「なぜ父君と母君が日中に交わらないと分かる」

「もしそうであれば、私は必ず出くわしているはずです。なぜ十六年間も生きてきて、一度も出くわしたことがないのですか。目にしたことがないどころか、耳にしたことすらありません」

未央生は声を上げて笑った。

「なんという無邪気なご婦人だ! この営みは、子供に見聞きさせてはならぬことなのだ。子供以外の者たちは、皆見て聞いて知っている。ご両親が事をなさる時は、そなたがそばにいないことを確かめ、戸を閉めてから始めるのだ。もしそなたに見られでもしたら、春の心が芽生え、男を想い、病にでもなろうかと案じ、そなたに隠れて行っていたのだよ」

玉香はしばらく考え、「両親は日中もよく戸を閉めて休んでいましたから、もしかしたらその事をしていたのかもしれません。ただ、恥ずかしくて顔を見合わせているのに、どうしてできるのでしょう」と言った。

「日中の交わりは、夜よりも快楽が十倍も増すものだ。その醍醐味は、まさに互いの顔を見合わせることで、興奮が高まることにある。世の中に、日中に交わるべきでない夫婦が二組だけいる」

玉香は尋ねた。「その二組とは?」

「醜い夫と美しい妻、これが一組。醜い妻と美しい夫、これがもう一組だ」

「なぜこの二組の夫婦は、日中に事ができないのですか」

「この営みはな」と未央生は説いた。「そなたが私を愛し、私がそなたを愛し、心と体が溶け合って初めて悦びを得られる。妻が雪のように白く、しなやかで、まるで美玉を削り出したように美しい場合、夫がその衣を解き、肌を愛でながら事を行えば、自然と興奮は十倍にも高まる。男の昂りは、知らず知らずのうちに硬く、太く、大きくなるものだ」

「だが、妻が夫を見れば、まるで鬼のようだとする。肌は黒く荒れている。服を着ていれば目立たぬが、脱げばその醜態を晒すことになる。しかも雪のように白い肌と比べられれば、八分の醜さが十二分にも感じられるだろう。妻がそれを見て嫌悪せぬわけがない。心に嫌悪があれば、それが表情や言葉に出る。夫はそれを見て、興奮で硬くなっていたものも萎え、太かったものも細くなってしまう。悦びを得るどころか、かえって興を削がれるだけだ。だから夜に交われば、互いの欠点を隠せる。これが美しい妻と醜い夫の場合だ」

「美しい夫と醜い妻の場合も、理屈は同じだ。だが、私とそなたのような夫婦は、白には白、紅には紅、柔らかさには柔らかさだ。日中に楽しみ、肌を確かめ合わなければ、暗闇の中で手探りするようなもので、一生を無駄に過ごすことになる。醜い夫婦と何ら変わりないではないか。そなた、信じられないなら、私と試してみようではないか。夜の味わいと比べてどう違うか」

これを聞いた玉香は、不覚にもいくらか得心するところがあった。口では承知しないと抵抗しながらも、心はすでに夫に従おうとしていた。彼女の両頬は微かに紅潮し、艶やかな表情が浮かんでいた。

未央生は内心、「彼女にその気が起こってきたな」と思った。すぐにでも事を始めようとしたが、この女は情欲が動き始めたばかりで、まだ渇望が深くない。もし今すぐ事を起こせば、腹を空かせた者が食事を味わうことなく飲み込むようなもので、深い悦びは得られまい。

「しばし焦らしてから、共に事を始めよう」

彼は太師椅子を引き寄せ、自らはそこに腰掛け、玉香を膝の上に乗せた。そして春画集を一枚一枚めくり、指し示しながら彼女に見せた。

この画集は通常の春画とは異なり、各図の前半は絵、後半はその解説文が記されていた。解説文は、まず画面の状況を説明し、次に画工の巧みさを讃えるものであった。

未央生は、玉香にその絵の中の情景を心に描かせ、将来それを模倣できるようにと、一句一句読み聞かせた。

第一図、蝶を放ちて芳を尋ぬるの勢い。

解説に曰く。女子、太湖石の上に座し、両の腿を開く。男、その昂りを秘所に入れ、左に右に探り、花の芯を求める。この時、男女ともに事の始まりにて、まだ佳境に達せざれば、その表情は穏やかで、普段とさほど変わらない。

第二図、蜂に蜜を醸すを教うるの勢い。

解説に曰く。女子、錦の布団に仰向けとなり、両手でしっかりと体を支え、両足を宙に浮かせて男の熱を迎え入れる。花の芯の在り処を知らせ、無駄な動きをさせぬためである。この時、女の表情は飢え渇きに近く、男の顔つきは焦燥しているように見える。見る者をして焦燥の念を抱かしめるは、これぞ画工の妙技である。

第三図、迷いし鳥の林に帰るの勢い。

解説に曰く。女子、寝台に身を寄せ、両足を天に向け、両手で男の両足を引きつけ、下へ突き刺させる。佳境に入りつつも、再び迷うことを恐れるかのよう。二人が力を尽くす最中であり、その気迫は生き生きとしている。真に筆が飛び、墨が舞う妙がある。

第四図、飢えたる馬の槽に奔るの勢い。

解説に曰く。女子、寝台に横たわり、両手で男を固く抱きしめる。男は肩で女の両足を支え、その証は陰中に深く入り、わずかな隙間もない。この時、男女ともに絶頂の直前にあり、瞳は半ば閉じ、舌は飲み込まれそうになる。二人の顔つきは同じ心境を映し出す。真に神技の筆である。

第五図、双龍の闘い疲るるの勢い。

解説に曰く。婦人の頭は枕に寄りかかり、両手は力なく体に沿って伏せられている。男子の頭も婦人の首元に寄りかかり、全身は体に密着し、同じく力を失っている。これぞ、すでに絶頂を迎えた後の姿。魂は抜け、夢が訪れようとする、動が極まって静に転じた状態である。だが、婦人の両足はいまだ下ろされず、男の肩と腕の間にあり、わずかに生きた動きを残している。さもなくば、まるで二つの亡骸を見るようで、見る者をして「同じ棺に納まり、同じ穴に埋められる」という妙境を悟らせる。

玉香はこれを見ているうちに、自分でも気づかぬうちに、淫らな思いが大きく込み上げてくるのを感じた。

未央生がさらに頁をめくり、次の図を指し示そうとした時、玉香は画集を押しやり、立ち上がって言った。

「なんていやらしい本なのでしょう。見ていて落ち着きません。あなたは一人で見ていてください。私はもう休みますから」

未央生は、彼女が焦がれていることを知り、その体を抱きしめて口づけをした。

普段、彼が舌を差し入れようとしても、彼女は歯を固く閉ざして開けず、舌を絡めてくることなど一度もなかった。夫婦となって一月経っても、互いの舌の長短さえ知らなかった。しかし今回は、朱い唇に触れた途端、彼女の舌はいつの間にか二重の歯の門を越えてきた。

未央生は言った。「愛しい人よ、もう床へ行く必要はない。この太師椅子を築山に見立てて、冊子の光景を真似てみてはどうかな?」

玉香はわざと怒ったふりをして言った。「そんなこと、人がすべきことではございません」

「そうだ、人がすることではない。神仙のなせる業だ。我らも一刻だけ、神仙の真似をしようではないか」

そう言うやいなや、彼女の帯を解いた。玉香は口では拒みながらも、手は許し、未央生の肩に腕を回した。彼が彼女の下衣を解くと、股の間がしっとりと濡れているのが見えた。画集を見ている間に、泉が湧き出ていたのである。

未央生も自らの衣を解き、彼女を椅子に座らせ、両の腿を開かせた。そして男の証を彼女の秘所へと差し入れてから、上半身の衣服を脱がせ始めた。

なぜ彼は先に衣服を脱がさなかったのか。未央生は経験豊かな男であった。先に上衣を脱がせれば、彼女は心では興奮していても、恥じらいから抵抗するだろう。だから、まず要害を占拠してしまえば、残りの場所は自然と抵抗しなくなる。これは「まず王を捕らえ、敵の拠点を突く」という兵法に通じる。

玉香は果たして抵抗せず、されるがままに肌を露わにされた。ただ、足元の褶褲だけは脱がなかった。纏足した女性の指先は、整えられてはいても、あまり美しいものではない。三寸の金蓮は、褶褲を被せてこそ趣が増す。そうでなければ、葉のない花のように、見ていて飽きてしまう。未央生はこの機微を知っていたので、その一枚だけは残しておいた。

彼女の服を脱がせ終えると、未央生も自らの衣をすべて脱ぎ捨て、昂りをたくましくし、彼女の小さな足を椅子の上に広げた。そして陰中へと深く差し入れ、左に右に探り、まさに春画の第一図、花の芯を探る光景を再現した。

しばらく探っていると、玉香は両手をまっすぐ伸ばして椅子を支え、自らの秘所を夫の熱に合わせるように動かし始めた。それが左へ動けば左で受け止め、右へ動けば右で受け止める。突然、ある一点に触れた。そこは、酸っぱいような、痒いような、たまらなく心地よい場所であった。

玉香は言った。「もうそれでようございます。あちこち探って、私を掻き乱さないでくださいまし」

未央生は花の芯を得たことを知り、彼女の言葉に従った。一箇所に力を集中し、浅くから深く、緩やかに、そして激しく、数百回突き上げた。

玉香はいつの間にか、両手を背に回し、自らの股を引き寄せて持ち上げ、期せずして春画の第二図の光景と一致していた。未央生は彼女の両足を肩に担ぎ上げ、両手で細い腰を抱き、男根を根元まで突き入れた。その昂りは一層太く感じられ、陰中を隙間なく満たした。

さらに数百回突き上げると、彼女の星のごとき瞳は潤み、髪は乱れ、まるで眠りに落ちる寸前のようであった。未央生は二度ほど突き上げて言った。「愛しい人よ、そろそろだと分かったよ。この椅子の上では大変だろう。床へ移って終わらせよう」

玉香はまさに佳境であったため、床へ移る際にそれが抜かれ、快楽が途切れるのを恐れた。しかもこの時、手足は痺れて動かせず、自力で移動することもできない。夫の言葉を聞くと、ただ目を閉じ、首を横に振るだけで応じなかった。

未央生は言った。「愛しい人、まさか動けないのか?」

玉香は小さく頷いた。

「私が抱き上げて行こう」

彼は彼女の両足を自らの腕に担ぎ上げ、玉香は両手で未央生に抱きつき、その舌を口に含んだ。未央生は彼女を抱き上げ、昂りを陰中から抜かぬまま、馬を走らせながら花を見るように、歩みながらも交わる戯れを行った。

彼は彼女を寝台の上に横たえると、再び両足を担ぎ上げ、初めからやり直した。さらに数百回突き上げると、玉香は突然叫んだ。

「あなた、私、もう駄目になりそう!」

彼女は両手で未央生を固く抱きしめ、口から「ふん、ふん」と呻き声を上げた。

未央生は、女としての悦びの極みが来たことを知り、その昂りを花の芯に押し当てて思い切り揉み込み、自分もまた彼女と共に果てた。

二人は抱き合ったまましばし眠り、やがて目覚めた玉香が言った。「私、今、死んでしまったの、ご存じでしたか?」

「どうして知らぬものか。だが、それは死んだのではない。『魂を解き放った』のだ」

玉香は尋ねた。「なぜ『解き放つ』というのですか」

「男には陽の精があり、女には陰の精がある。快楽が極限に達すると、その精が訪れる。その直前、全身の皮肉どころか骨までが痺れ、夢うつつの状態になり、そこで精が洩れるのだ。これが『魂の解放』だ。春画の第五図は、まさにこの様子を描いている」

「あなたの言う通りなら、その後はまた生き返るのですね。死ぬことはないのですね」

「男と女は、一度交わるたびに一度魂を解き放つ。中には、女の方が早く、男が一度果てる間に、数十回も解き放つことがある。これこそが快楽なのだ。どうして死ぬことなどあろうか」

玉香は言った。「それなら、これから私は毎日、毎晩、魂を解き放ちたい」

未央生は大笑いした。「どうだ、私の勧めは間違っていなかっただろう!この春画集は宝物だろう?」

「本当に宝物ですわ。買って家に置き、いつでも見られたらよいのに。ただ、あのご友人が取りに来てしまうかもしれません」

「あれはそなたをからかったのだ。実は私が自分で買ったのだよ」

玉香はこれを聞いて喜んだ。二人は話を終え、起き上がって服を着ると、再び春画集を見た。興奮が高まると、また一から事を始めた。

夫婦は、この日から格別に仲睦まじくなり、愛情を深めていった。

玉香は春画を見て以来、お堅い女学者が艶やかな女へと変わり、夜の交わりでは型どおりの作法にこだわらず、新しい試みを最も好むようになった。燭台を逆さにすることも厭わず、山を隔てて火を取ることも許すようになった。事の最中には、みだらな声を上げて夫の興奮を助ける狂態も、次第に板についてきた。

未央生は彼女の色情をさらに助長しようと、また書物屋へ行き、『繡榻野史』や『如意君伝』といった艶書を十数種買い求めた。それを机の上に置き、彼女が自由に読めるようにすると、以前読んでいた書物はすべて本棚の奥へとしまい込まれた。

夫婦の閨の楽しみは、三百六十葉の春画をもってしても、描き尽くせぬほどであった。まさにこう言われる通りである。

——琴や瑟の音色ではその調和を例えるに足らず、鐘や鼓の響きではその喜びを鳴らすことができない。

未央生は、ここに到りて極限の快楽を得たと言えるだろう。

ただ一つ、問題があった。夫婦仲は円満になったものの、婿と舅の関係が、どうにもうまくいかないのである。

というのも、鉄扉道人は古風で厳格な君子であり、質実剛健を好み、華美を嫌い、色恋沙汰を戒め、道を語ることを愛したからである。未央生が彼の家に婿入りした夜、その華美な衣服と軽薄な立ち居振る舞いを見て以来、道人は心の中で不満を感じていた。彼はため息をついて言った。

「この若者は華美なだけで実がない。きっと大成はすまい。娘は嫁ぎ先を間違えたかもしれぬ」

しかし、すでに結納を受け取り、祝言は済んでしまった以上、どうすることもできない。

「もはや過ちは正せぬ。ならば厳父としてこの若者を鍛え上げ、まっとうな士に仕立てるほかない」

道人はそう考えた。

だから、道人は一切の妥協を許さなかった。未央生が言葉を誤れば叱りつけ、行動に非があれば教訓を与えた。座る姿、立つ姿に少しでも品格が欠けていれば、ねちねちと小言を言った。

未央生は若くして両親を亡くし、誰にも束縛されたことがなかったため、この厳しい仕打ちに耐えられなかった。何度か舅と諍いを起こそうとしたが、妻との睦言が妨げられることを恐れ、仕方なく耐え忍んだ。

しかし、我慢にも限界があった。彼は心の中で考えた。

「私がこの家に婿入りしたのは、ただ彼の娘に惚れたからだ。娘を嫁がせぬというから婿になったものを、なぜ彼は泰山のように私にのしかかってくるのか。あの古臭い学者が、この私を変えようなどと。まして、私のような風流才子は、将来、花を折り、香を盗むような艶聞で世に名を残すつもりだ。まさか、彼の一人娘だけで一生を満足できるわけがない。このままでは、彼は私を縛り続け、一歩も外へ出さず、一言も余計なことを言わせぬだろう。もし私が道を外れたことをすれば、ただでは済ますまい」

「今、彼と事を構えることも、このまま耐え忍ぶこともできぬ。残された道は一つ。娘を彼に預け、『遊学の旅に出る』と偽り、しばしこの地を離れるしかない」

「今、天下第一の佳人を妻とした。もし第二の佳人に出会うことができたら、たとえ妻とすることはできなくとも、幾夜かの露の契りを結び、前世からの縁を果たしたいものだ」

考えを固めた彼は、まず玉香に話してから舅に暇を請おうとしたが、彼女が閨の楽しみに夢中で、旅立ちを渋ることを恐れた。もし先に妻に反対されれば、舅に話すことすらできなくなる。

そこで、玉香には内緒にし、舅にだけ進言した。

「小生は山深い田舎の出身ゆえ、見聞が狭く、学問がなかなか上達いたしません。これも、優れた師や益となる友が身近にいないためでございます。つきましては、岳父様にしばしのお暇をいただき、四方を旅して見聞を広め、見識を深めたいと存じます。もし良き師や友に出会えれば、そこに腰を落ち着けて勉学に励み、試験の時期が来れば都へ赴いて受験いたします。もし科挙の二榜の一つにでも名を連ねることができれば、岳父様が私を婿としてくださったご恩に報いることもできましょう。どうか、小生の旅立ちをお許しいただけませんでしょうか」

鉄扉道人は言った。「そなたが我が家に来て半年になるが、その言葉こそ初めて聞くに値する。家を離れて読書に励むとは、まことに結構なことだ。私が許さぬわけがあろうか」

「岳父様はお許しくださるでしょうが」と未央生は言った。「あなたの愛娘が、新婚早々に遠出する私を薄情だと思うのではないかと案じております。私の考えでは、すべては岳父様のご意向によるもので、私の望みではないと娘に伝えていただければ、彼女も私を恨まず、私も心置きなく旅立てます」

「うむ、承知した」

話がまとまると、道人は娘の前で、未央生に遊学に出るよう熱心に勧めた。未央生はわざと承知せぬふりをしたが、道人が真顔で厳しく説得すると、仕方なく従うふりをした。

玉香は、愛の悦びを知ったばかりであったため、夫が旅に出ると聞き、まるで乳離れできぬ子のように、激しく嘆き悲しんだ。出立後の未来の睦言まで、前借りしようとするほどであった。

未央生もまた、旅路は寂しく、すぐに新しい女性に出会えるわけではないと知っていたため、力を込めて彼女の求めに応じた。それはまるで酒宴を開くようなもので、客のために設けるとはいえ、自分もそれに付き合うのは楽しいことだ。連夜の情交は、他人には語り尽くせぬ、夫婦二人だけが知る喜びであった。

出発の日、未央生は舅と妻に別れを告げ、供の者一人だけを連れて旅立った。この後、彼にはさらなる奇遇が待ち受けている。続きは、また次のお話で。

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作者曰く

道理を説いて人を諭す言葉は、聞く者の肌が粟立つほどに厳しく、情欲を語って人を動かす言葉は、見る者の魂が揺れるほどに艶やかである。

物語の筋道に一貫性がないと作者を非難する者もいるかもしれぬ。しかし、人の心を曲げて動かす筆致にこそ、作者が心を込めて人を戒めようとする真意が隠されていることを知るべきである。

玉香が春画を見る前は、いかに貞淑であったか。そして、その解説文を読んだ後は、いかに淫蕩に変わったか。貞淑と淫蕩という貴賤は一瞬にして入れ替わったが、それはすべて男がみだらな道を教えた過ちである。夫たる者、これを慎まずにいられようか。

第三回の要約

この章は、主人公・未央生みおうせいの「理想の結婚」とその後の顛末を描いています。

1.理想の嫁探し: 僧侶の警告を「時代遅れの戯言」と一蹴した超エリートでイケメンの未央生は、「世界一の美女」を妻にすることを決意。あらゆるコネを使って嫁探しを始めます。

2.運命の女性、玉香: 彼は「鉄の扉の道人」とあだ名される超カタブツな学者の娘、玉香ぎょくこうの噂を耳にします。彼女は絶世の美女でありながら、箱入り娘として育てられ、一切俗世間に触れたことがありませんでした。

3.型破りな結婚: 父親が面会を頑なに拒否するため、未央生は占い(神降ろし)に頼ります。お告げは「彼女は間違いなく絶世の美女だが、その色っぽさが災いを招くかもしれない。夫の管理能力が問われる」というものでした。これを自分に都合よく解釈した未央生は、顔も見ずに結婚を決めます。

4.セックスレスならぬ「喜びレス」な新婚生活: 結婚してみると、玉香は噂通りの美女でしたが、厳格すぎる教育のせいで性的な知識や感情が皆無。夫との営みを義務としか捉えず、まったく喜びを示さない「お堅い女」でした。

5.驚きの性教育: この状況を打破するため、未央生は当時最高級の春画エロティックなアートブックを購入。巧みな弁舌と春画を教材に、「男女の交わりは自然で素晴らしいものだ」と玉香を「教育」します。

6.教育の成功と新たな野望: この教育は大成功。玉香は貞淑な女性から、情熱的で奔放な女性へと劇的に変貌し、夫婦仲は最高潮に達します。しかし、目的を達成した未央生は、今度は自分を厳しく管理しようとする舅(玉香の父)が我慢ならなくなります。そして、「世界一の美女を攻略したから、次は世界で二番目の美女と浮気してみたい」という新たな野望を抱き、「勉強の旅に出る」と嘘をついて家を出て行ってしまいます。


この物語は、単なる好色文学ではありません。作者はエンターテイメント性の高い物語の中に、当時の社会や道徳に対する鋭い批評と、仏教的な思想を織り込んでいます。


1. 偽善的な儒教道徳への痛烈な皮肉

「無知=貞淑」という価値観の否定: 玉香の父「鉄扉道人」は、厳格な儒教道徳の化身です。娘を外界から完全に遮断し、知識を与えないことで「貞淑」を守ろうとしました。しかし作者は、その結果生まれたのが「人間的な喜びに疎い、不完全な人間」であったことを描きます。これは、女性を抑圧し、無知な状態に置くことを美徳とする当時の社会通念に対する強烈なアンチテーゼです。本当の徳とは、無知ではなく、知った上で道を選ぶことではないか、と問いかけているのです。

理屈タテマエと本音: 未央生が玉香を「教育」する場面で、彼は性行為を「天地自然の理」や「子孫繁栄のため」といった、ももっともらしい理屈で正当化します。これは、人々が本音(欲望)を、高尚な建前(道徳や論理)で取り繕う社会の滑稽さを風刺しています。作者は「人間の本質は欲望であり、高尚な理屈など後付けに過ぎない」と冷ややかに見ているのです。

 

2. 人間の欲望への探求と仏教的「因果応報」

欲望は「技術」で開発できる: この物語の画期的な点は、性的な快楽を「罪」や「本能」としてだけでなく、学習と訓練によって高められる「技術」や「芸術」として描いていることです。未央生が春画というマニュアルを使って玉香を「開発」していくプロセスは、人間の欲望がいかに外部からの刺激や教育によって形作られるかを示しています。これは、人間の心や体を一種のメカニズムとして捉える、非常に近代的で分析的な視点です。

すべては「因果応報」の序章: しかし、最も重要なのは、この物語全体が仏教的な「因果応報」の枠組みの中にあるということです。冒頭で僧侶が「色事にふければ、いずれ自分の妻も同じことをする」と警告しました。未央生はこの警告を無視し、欲望の限りを尽くして成功したかのように見えます。しかし、読者はこの警告を覚えています。彼が妻に施した「教育」や、これから始まる「浮気の旅」は、すべてがブーメランのように自分に返ってくる壮大な「原因作り」なのです。

作者が示したかったのは、「人間は偽善的な道徳で欲望を抑えつけようとするが、欲望は理屈や教育でいくらでも形を変えて噴出する。しかし、その欲望の追求に身を任せる者は、必ずその行いの結果を刈り取ることになる」という、仏教的な世界観です。


この作品は、読者を刺激的で官能的な世界に引き込みながら、その根底では「諸行無常」と「自業自得」という冷徹な真理を突きつけている、非常に深く、計算され尽くした文学作品なのです。

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