Episode.13-A~アウトプット=神~
前話:Episode.12-A
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放課後の教室は、いつもと少しだけ空気が違っていた。
机が自由な配置に組み直され、数人ずつのグループに分かれてそれぞれがノートを広げている。ホワイトボードの前では竹下がチョークを握り、数式の解法を説明していた。
「xを左辺に移して、aを代入すれば……ここが答えになるわけ」
「なるほど、マイナスが消えるのか」
そんなやり取りがあちこちで交わされていた。
――きっかけは、圭が放課後に竹下へ声をかけたことだった。
竹下は同じ学年でもトップクラスの成績を持つ少年で、普段からクラスメイトに勉強を教えている姿をよく見かけていた。人当たりがよく、知識も分かりやすく伝えるタイプの“教えるのが上手い人間”だ。
「高嶺さんの勉強、ちょっと見てくれないかな」
そう相談を持ちかけた時、竹下は快く頷いた。
「おっ、そういうことなら手伝うよ。俺も教える練習になるし」
その会話を聞いていた森川が、すぐさま身を乗り出してくる。
「え、なにそれ。じゃあ俺も混ぜて! てか、せっかくだしみんなでやらね?」
彼のその一言が、輪を広げた。
声の大きな彼が呼びかければ、クラスの空気もすぐに活気づく。結局、十人以上の生徒が参加する小さな“勉強会”が教室で始まることになったのだった。
――――――
「ここはさ、まず動詞を過去形に変えるんだよ。覚えてる?」
「う……goの過去形……went?」
「正解。じゃあ次は?」
雪那は竹下と女子二人に囲まれ、英語のプリントに取り組んでいた。教えられたことを必死に吸収しようとする姿勢は真剣で、だが、顔にはほとんど表情が浮かんでいない。
その様子を圭は斜め後ろから見守っていた。
(少しずつでも、前進してくれたらいい)
そう思っていると、近くのグループから「ジュース買ってこようぜ」という声が上がる。
「俺、喉乾いたから買ってくるわ」
「じゃあ私も〜」
数人が席を立ち、購買へと向かう。その流れに圭も続こうと腰を浮かしかける。
「……篠原君」
呼び止められた。
雪那だった。
「何か飲みたい?」
「……ううん。篠原君が、選んで」
圭は一瞬、肩の力が抜けるような気がした。
いつものパターン。だがそれはもう、嫌ではなかった。
「“何でもいい”っていうのが、一番困るんだけどな……」
ぼやきながら、ポケットに小銭を入れ、廊下に出る。
(とはいえ……何を買おうか)
雪那に渡す飲み物。本人は気にしないだろうが、自分が選んだ“何か”が、彼女の手に渡る。
それはつまり、些細だけど確かな「選択」の一つなのだ。
【選択肢1】:
甘いフルーツジュース→14-Aへ
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【選択肢2】:
ほろ苦いブラックコーヒー→14-Bへ
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