Episode.12-G~懐古厨の血が騒ぐ~
前話:Episode.11-G
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「ごめん、今日は……テスト勉強に集中したくてさ」
結菜の誘いを、そう言って断った。
別に彼女と行きたくなかったわけじゃない。
けれど、今は気持ちが散りそうなほど、心が揺れていた。
少しでも一人で整理したかったのだ。
それを察したのか、結菜は一瞬だけ寂しそうな顔を浮かべたが、すぐに笑みを作った。
「……そっか。じゃあ、図書室で一緒に勉強しない?」
その提案には、素直に頷くことができた。
――――――
放課後の図書室は、いつも通り静かだった。
窓から差し込む夕方の光が、書架の隙間に縞模様を落としている。
圭と結菜はいつもの席に並んで座り、それぞれ教科書とノートを広げていた。
ページをめくる音と、ペンの滑る音。
特別な会話はない。それでも、居心地のいい沈黙がそこにあった。
(……落ち着くな)
誰かと一緒にいても、気を使わずにいられる時間。
それは、圭にとって貴重だった。
ふと、図書室の扉が開く音がして、圭は顔を上げた。
そこに立っていたのは――
「……あれ? センパイ?」
活発そうな声が図書室の静けさを破る。
「あれ……凛?」
驚きとともに声が漏れる。
制服姿の少女が、手をひらひらと振りながら近づいてきた。
圭にとっては見慣れた顔――だが、この世界線では“初めての再会”だった。
「わっ、やっぱりそうだ! 久しぶり〜! やっぱり図書室にいた!」
凛はにこにこと笑いながら、圭の向かいの席にストンと腰を下ろした。
圭は隣で展開についていけていない結菜に凛を紹介した。
「紹介するよ。有栖川凛。中学の時の知り合いなんだ」
「初めまして! センパイの”お友達”ですか?」
「えっと、初めまして。三枝結菜です……うーん、”まだ”友達かな。後輩ちゃん?」
二人は笑顔で挨拶を交わしている。仲良くなってくれそうで安心だ。
「それにしても、びっくりしたよ。この高校に来てたんだな」
「ふふん。宣言通り、ちゃんと勉強頑張ったんだから!」
誇らしげに胸を張る凛を見て、そういえばそんな約束もしたなと思い出す。
圭と同じ高校に行くと意気込んでいたが、ちゃんと勉強していたようだ。
「それで、今度のテストは大丈夫なのか?」
「う……」
圭の言葉に先ほどまでの威勢は萎んでいく。
どうやら高校に入って怠惰に戻ってしまったようだ。
元々勉強と机が大嫌いな彼女だ。高校受験で燃え尽き症候群になっていてもおかしくない。
「せっかくだし、今から一緒に勉強しないか?」
「え? いいの?」
「まぁ、結菜がよければだけど」
結菜の方を見ると、彼女は微笑んで頷いてくれた。
こうして、三人での静かな勉強会が始まった。
圭が教科書に目を落とし、凛がわからない問題を尋ねる。
結菜はその横で静かにノートをめくりながら、時折目線を上げて微笑む。
ときどき交わされる小さな声と笑い。
それでも図書室の空気を乱すことはない、穏やかなやり取りだった。
学ぶことに集中する時間。
そして、その合間に灯る小さな繋がり。
新しい季節のなかで、静かに芽吹いていくものがあった。
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