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せつな  作者: 666
春編
96/1247

Episode.12-G~懐古厨の血が騒ぐ~

前話:Episode.11-G

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/84/

「ごめん、今日は……テスト勉強に集中したくてさ」


 結菜の誘いを、そう言って断った。

 別に彼女と行きたくなかったわけじゃない。

 けれど、今は気持ちが散りそうなほど、心が揺れていた。

 少しでも一人で整理したかったのだ。

 それを察したのか、結菜は一瞬だけ寂しそうな顔を浮かべたが、すぐに笑みを作った。


「……そっか。じゃあ、図書室で一緒に勉強しない?」


 その提案には、素直に頷くことができた。



――――――



 放課後の図書室は、いつも通り静かだった。

 窓から差し込む夕方の光が、書架の隙間に縞模様を落としている。

 圭と結菜はいつもの席に並んで座り、それぞれ教科書とノートを広げていた。

 ページをめくる音と、ペンの滑る音。

 特別な会話はない。それでも、居心地のいい沈黙がそこにあった。

 (……落ち着くな)

 誰かと一緒にいても、気を使わずにいられる時間。

 それは、圭にとって貴重だった。

 ふと、図書室の扉が開く音がして、圭は顔を上げた。

 そこに立っていたのは――


「……あれ? センパイ?」


 活発そうな声が図書室の静けさを破る。


「あれ……凛?」


 驚きとともに声が漏れる。

 制服姿の少女が、手をひらひらと振りながら近づいてきた。

 圭にとっては見慣れた顔――だが、この世界線では“初めての再会”だった。


「わっ、やっぱりそうだ! 久しぶり〜! やっぱり図書室にいた!」


 凛はにこにこと笑いながら、圭の向かいの席にストンと腰を下ろした。

 圭は隣で展開についていけていない結菜に凛を紹介した。


「紹介するよ。有栖川凛。中学の時の知り合いなんだ」

「初めまして! センパイの”お友達”ですか?」

「えっと、初めまして。三枝結菜です……うーん、”まだ”友達かな。後輩ちゃん?」


 二人は笑顔で挨拶を交わしている。仲良くなってくれそうで安心だ。


「それにしても、びっくりしたよ。この高校に来てたんだな」

「ふふん。宣言通り、ちゃんと勉強頑張ったんだから!」


 誇らしげに胸を張る凛を見て、そういえばそんな約束もしたなと思い出す。

 圭と同じ高校に行くと意気込んでいたが、ちゃんと勉強していたようだ。


「それで、今度のテストは大丈夫なのか?」

「う……」


 圭の言葉に先ほどまでの威勢は萎んでいく。

 どうやら高校に入って怠惰に戻ってしまったようだ。

 元々勉強と机が大嫌いな彼女だ。高校受験で燃え尽き症候群になっていてもおかしくない。


「せっかくだし、今から一緒に勉強しないか?」

「え? いいの?」

「まぁ、結菜がよければだけど」


 結菜の方を見ると、彼女は微笑んで頷いてくれた。

 こうして、三人での静かな勉強会が始まった。

 圭が教科書に目を落とし、凛がわからない問題を尋ねる。

 結菜はその横で静かにノートをめくりながら、時折目線を上げて微笑む。

 ときどき交わされる小さな声と笑い。

 それでも図書室の空気を乱すことはない、穏やかなやり取りだった。

 学ぶことに集中する時間。

 そして、その合間に灯る小さな繋がり。

 新しい季節のなかで、静かに芽吹いていくものがあった。

続き→13-Gへ

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