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Episode.12-E~まとめて撃沈してくださいと言っているようなもの~

前話:Episode.11-E

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/83/

 圭が選んだのは、哲学の入門書だった。


「これにするよ。ちょっと難しいかもしれないけど……面白いと思う」


 差し出した本を受け取った雪那は、少しだけページをめくってから静かに頷いた。


「……わかった。読んでみる」


 その声はいつもよりも柔らかく、何より距離が近い。

 席の隣に座った雪那は、ほんの少しだけ圭の肩に寄りかかるような位置に身を置いていた。

 その進軍を咎めると言わんばかりに、凛がすかさず身を乗り出してくる。


「じゃあさ、私の本も選んでよ。センパイって本読むの得意でしょ?」

「私もお願い。圭くんのおすすめ、読んでみたいな」


 と、結菜もそっと声を重ねた。

 圭を囲むように、三人の少女がそれぞれの距離で言葉を投げる。


「……じゃあ、君たちに合いそうなのを選ぶよ」


 どこかため息混じりでそう言いながらも、圭は彼女たちの期待に応えるように、本棚へと向かった。

 誰もが自分だけを見てほしいと願うように、それぞれの“らしさ”を保ちながら。



――――――



 その後、みんなで一緒に帰ることになった。

 外に出ると、夕暮れの光が街を優しく包んでいる。

 歩道の端を歩きながら、何気ない雑談が自然に続いていった。


「高校でも勉強って大変だね」

「ねー、夏休みになったらまた遊びに行こうよ」

「……哲学って意外と面白そうだった」


 そんな他愛のない会話が続いたあと、分かれ道に差し掛かる。

 圭と雪那は右、凛と結菜は左。

 軽く手を振り、挨拶を交わして、それぞれ別の道を歩き出した。

 ――が、二人の姿が見えなくなったその瞬間。


「……ねえ」


 凛がスマホを取り出しながら、結菜に目配せをした。


「連絡先、交換しよ」

「……いいけど?」


 少し怪訝そうな結菜に、凛はいたずらっぽく笑う。


「同盟、組も?」


 その意味に気づいた結菜は、少し間を置いてから、静かに頷いた。


「……わかった。負けたくないし」


 スマホの画面を向け合い、指を滑らせる。

 誰にも知られないところで、火種が一つ灯された。

続き→13-Dへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/101/

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