Episode.12-E~まとめて撃沈してくださいと言っているようなもの~
前話:Episode.11-E
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圭が選んだのは、哲学の入門書だった。
「これにするよ。ちょっと難しいかもしれないけど……面白いと思う」
差し出した本を受け取った雪那は、少しだけページをめくってから静かに頷いた。
「……わかった。読んでみる」
その声はいつもよりも柔らかく、何より距離が近い。
席の隣に座った雪那は、ほんの少しだけ圭の肩に寄りかかるような位置に身を置いていた。
その進軍を咎めると言わんばかりに、凛がすかさず身を乗り出してくる。
「じゃあさ、私の本も選んでよ。センパイって本読むの得意でしょ?」
「私もお願い。圭くんのおすすめ、読んでみたいな」
と、結菜もそっと声を重ねた。
圭を囲むように、三人の少女がそれぞれの距離で言葉を投げる。
「……じゃあ、君たちに合いそうなのを選ぶよ」
どこかため息混じりでそう言いながらも、圭は彼女たちの期待に応えるように、本棚へと向かった。
誰もが自分だけを見てほしいと願うように、それぞれの“らしさ”を保ちながら。
――――――
その後、みんなで一緒に帰ることになった。
外に出ると、夕暮れの光が街を優しく包んでいる。
歩道の端を歩きながら、何気ない雑談が自然に続いていった。
「高校でも勉強って大変だね」
「ねー、夏休みになったらまた遊びに行こうよ」
「……哲学って意外と面白そうだった」
そんな他愛のない会話が続いたあと、分かれ道に差し掛かる。
圭と雪那は右、凛と結菜は左。
軽く手を振り、挨拶を交わして、それぞれ別の道を歩き出した。
――が、二人の姿が見えなくなったその瞬間。
「……ねえ」
凛がスマホを取り出しながら、結菜に目配せをした。
「連絡先、交換しよ」
「……いいけど?」
少し怪訝そうな結菜に、凛はいたずらっぽく笑う。
「同盟、組も?」
その意味に気づいた結菜は、少し間を置いてから、静かに頷いた。
「……わかった。負けたくないし」
スマホの画面を向け合い、指を滑らせる。
誰にも知られないところで、火種が一つ灯された。
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