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Episode.12-D~いみあい~

前話:Episode.11-E

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/83/

 小説を進めることにした。

 選んだのは、最近話題になっている人気のミステリー小説。

 重くも鋭くもないバランスのとれた文章が特徴で、初心者にも読みやすいタイプだ。


「わかった。読んでみる」


 短く頷いた雪那は、そのまま圭の隣に座り、少しだけ体を寄せた。

 距離にして数センチ。けれど、それは“偶然”とは言えない近さだった。

 その様子を見ていた凛が、身を乗り出してくる。


「ねぇねぇ、私の本も選んでよ。せんぱ〜い?」

「……仕方ないな」

「やった!」


 無邪気に喜ぶ凛に、苦笑がこぼれる。

 それを眺めながら、結菜も小さく笑った。


「じゃあ、私も。圭くんのおすすめ、読んでみたいな」


 気づけば三人の視線が圭に集中していた。

 なんとなく、囲まれているような心地がする。

 (……図書委員って、こんなに騒がしかったっけ)

 けれど、悪い気はしなかった。


「じゃあみんなで一緒に帰ろうか」


 圭の声に、三人とも小さく頷いた。



――――――



 外に出ると、夕暮れが街を淡い朱色に染めていた。

 歩道を並んで歩く中でも、雪那は圭の隣から離れようとしなかった。

 むしろ自然な顔で、時折、圭の歩調に合わせるようにして歩幅を調整している。


「雪那って、甘いの苦手なんでしょ?」

「うん、だからあの日の飲み物はちょっと……でも圭くんがくれたから、嫌じゃなかった」


 そんなやりとりを交わしながら、彼らは並んで歩いていた。

 凛と結菜は、その後ろでひそひそと何かを話している。


「凛、よく高校受かったな」

「そりゃあもちろん。約束したからね?」


 圭の言葉に、凛は胸を張る。

 ――中学の頃、一緒に高校に行こうと宣言された記憶が、圭の胸を掠めた。


「みんなで山でも登ろうよ。勉強も大事だけど、リフレッシュも必要だよね〜」


 そんな無茶ぶりを凛が笑いながら口にすると、全員が一様に苦笑した。

 やがて、帰り道の分かれ道に差し掛かる。

 圭と雪那は右、凛と結菜は左。

 互いに手を振り、軽く挨拶を交わして別れる。

 その瞬間を見計らったように、凛が結菜に声をひそめて言った。


「……ねえ、連絡先、交換しよ?」

「え?」

「同盟、組も?」


 その“意味”を、結菜は理解していた。

 ただ少しだけ考えて、鞄からスマホを取り出す。


「……いいよ」


 そして、二人は静かに画面をタップしあいながら、互いに笑みを浮かべた。

 それは小さな火種を抱えた、新たな物語の始まりだった。

続き→13-Dへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/101/

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