Episode.12-D~いみあい~
前話:Episode.11-E
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小説を進めることにした。
選んだのは、最近話題になっている人気のミステリー小説。
重くも鋭くもないバランスのとれた文章が特徴で、初心者にも読みやすいタイプだ。
「わかった。読んでみる」
短く頷いた雪那は、そのまま圭の隣に座り、少しだけ体を寄せた。
距離にして数センチ。けれど、それは“偶然”とは言えない近さだった。
その様子を見ていた凛が、身を乗り出してくる。
「ねぇねぇ、私の本も選んでよ。せんぱ〜い?」
「……仕方ないな」
「やった!」
無邪気に喜ぶ凛に、苦笑がこぼれる。
それを眺めながら、結菜も小さく笑った。
「じゃあ、私も。圭くんのおすすめ、読んでみたいな」
気づけば三人の視線が圭に集中していた。
なんとなく、囲まれているような心地がする。
(……図書委員って、こんなに騒がしかったっけ)
けれど、悪い気はしなかった。
「じゃあみんなで一緒に帰ろうか」
圭の声に、三人とも小さく頷いた。
――――――
外に出ると、夕暮れが街を淡い朱色に染めていた。
歩道を並んで歩く中でも、雪那は圭の隣から離れようとしなかった。
むしろ自然な顔で、時折、圭の歩調に合わせるようにして歩幅を調整している。
「雪那って、甘いの苦手なんでしょ?」
「うん、だからあの日の飲み物はちょっと……でも圭くんがくれたから、嫌じゃなかった」
そんなやりとりを交わしながら、彼らは並んで歩いていた。
凛と結菜は、その後ろでひそひそと何かを話している。
「凛、よく高校受かったな」
「そりゃあもちろん。約束したからね?」
圭の言葉に、凛は胸を張る。
――中学の頃、一緒に高校に行こうと宣言された記憶が、圭の胸を掠めた。
「みんなで山でも登ろうよ。勉強も大事だけど、リフレッシュも必要だよね〜」
そんな無茶ぶりを凛が笑いながら口にすると、全員が一様に苦笑した。
やがて、帰り道の分かれ道に差し掛かる。
圭と雪那は右、凛と結菜は左。
互いに手を振り、軽く挨拶を交わして別れる。
その瞬間を見計らったように、凛が結菜に声をひそめて言った。
「……ねえ、連絡先、交換しよ?」
「え?」
「同盟、組も?」
その“意味”を、結菜は理解していた。
ただ少しだけ考えて、鞄からスマホを取り出す。
「……いいよ」
そして、二人は静かに画面をタップしあいながら、互いに笑みを浮かべた。
それは小さな火種を抱えた、新たな物語の始まりだった。
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