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せつな  作者: 666
春編
91/817

Episode.12-B~改めまして、貴方だけの後輩です~

前話:Episode.11-D

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/82/

 交差点に差しかかると、圭は自然と足を緩めた。

 結菜と凛、それぞれの帰り道が左右に分かれていく。

 どちらについていくべきか、圭が決めようとした、その瞬間だった。


「ね、圭センパイ。そっち、一緒に行こ?」


 軽やかに笑いながら、凛が右手の道を指さしてくる。

 その口調に選択の余地はなく、むしろ“当然”という響きすらあった。


「あ……うん」


 つい釣られるように返事をしてしまう。


「じゃあねー、三枝先輩!」


 凛が左手に手を振ると、結菜も静かに手を上げて応えた。

 その横顔は相変わらず淡々としていて、けれどどこか名残惜しさを含んでいたようにも見えた。

 そうして、二人は別々の道を歩き始めた。



――――――



「……てことで、改めまして。圭センパイと登校ルートが同じ、有栖川凛です!」


 歩き出してすぐ、凛がいつもの調子でぴょんと一歩跳ねるようにして自己紹介をし直す。


「……知ってるよ。中学の時から」

「ふふん、でも高校では初だからね。儀式、儀式」


 凛は登山が趣味の少女だった。

 幼い頃から山に親しみ、体を動かすのが好きで、学校行事よりも自然の中にいる時間を愛している。

 中学では陸上部にも顔を出していたが、本命はあくまで山登り。

 勉強は――というと、正直、からきし。

 圭との勉強会でも、プリントにペンを持ったまま止まっている姿を何度も見た。

 けれど、その分、努力家であることも知っていた。


「よく高校、受かったよね」


 圭が冗談交じりにそう言うと、凛はにっと笑って答えた。


「そりゃあもちろん、“約束した”からね」


 その言葉に、圭の記憶がふっと揺れた。

 ――中学の帰り道。

 制服の裾を風になびかせながら、「一緒に高校行こうね」と、まるで当たり前のように言っていた少女の姿。

 あれはきっと、冗談ではなかったのだ。

 (……本当に、頑張ったんだな)

 心のどこかで、そう思わずにはいられなかった。


「図書委員、偶然なの?」

「え? あー……ううん。センパイ、中学から図書委員だったでしょ?」

「うん」

「だから、“どうせ一緒かな”って思って」


 無邪気に言いながら、凛は歩幅を揃えるようにして隣に並んだ。

 圭はふと横目で彼女を見たが、凛の顔にはいつものように明るい光が差していた。

 それがまぶしくて、少しだけ目を細めた。



――――――



 気がつけば、住宅街に入り、凛の家が見えてきた。

 玄関先で立ち止まった彼女が、振り返ってにっこりと笑う。


「ね、連絡先、交換しよ!」

「え?」

「高校でも、よろしくね! センパイ!」


 スマホを取り出しながら、凛は当然のように画面を突きつけてくる。

 圭は少し呆れながらも、そのまま自分のスマホを取り出して、コードを読み取った。

 カチリと音がして、画面に新しい名前が追加される。

 その瞬間、何かが一歩、近づいた気がした。

続き→13-Cへ

https://ncode.syosetu.com/n6562kv/100/

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