Episode.12-A~Youイママデドウヤッテシンキュウシテキタノ?~
前話:Episode.11-A
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梅雨の終わりを告げるように、蒸し暑さが日ごとに増していた。
校舎の窓から入り込む風はぬるく、扇風機の音が静かな教室の背景音になっている。周囲の生徒たちは制服の袖をまくり、ネクタイを緩め、どこか浮ついた雰囲気を身にまとっていた。
夏が、近づいていた。
だが、それに浮かれてばかりもいられない。
夏休み前――期末テストが目前に迫っていた。
「……高嶺さん、テスト勉強……どれくらいやってる?」
放課後の教室。机を並べて軽く課題を片付けていた時、不意にそう尋ねると、雪那はいつものように少しだけ首を傾げた。
「勉強は……苦手」
やっぱり、と思った。
圭は思い返す。授業中、雪那はたびたび圭の方へ視線を向けてくる。内容を尋ねる声はごく小さく、ほとんど囁きに近いが、その頻度は少なくない。
さらに小テストの最中、ふと横を見れば――雪那のペンは一度も動いていなかった。
「……今までどうしてたの?」
「……補修でいっぱい」
答えは静かで、けれど重かった。
彼女の表情に焦りはない。だがそれは、慣れのせいだ。苦手なことに対して、感じるべき焦燥すら鈍くなってしまっているのかもしれない。
「……じゃあさ、小テストの結果、見せてもらってもいい?」
雪那は黙って鞄の中からプリントを数枚取り出した。そこには、見事なまでに真っ赤な答案が並んでいた。
赤点どころか、白紙に近いものもある。
ため息混じりに圭はひとつ問題を口に出してみた。
「……“鎌倉幕府が成立した年号は?”」
雪那はほんの少し目を上げ、真剣な顔で言った。
「……せん……はっぴゃく……ごじゅう……いち?」
「惜しくもないよ」
冗談めかして言ったものの、内心では危機感が高まっていた。
(このままだと……)
圭の通う学校では、テストで赤点を取ると、基準点に達するまで補修が続く仕組みになっている。しかも、それが夏休み期間中にまで食い込む。補修の長さによっては、夏休みそのものが潰れてしまう生徒も少なくなかった。
(……まずいな)
雪那にとって、“選択”は常に圭に委ねられるものだった。
ならば、今この状況において彼女が補修漬けの夏を送るかどうかも――圭にかかっている。
「一緒に、勉強しよう」
そう提案すると、雪那は少しだけ首を傾けて、すぐに頷いた。
「……分かった」
だが――すぐに圭は悟る。
これは、一筋縄ではいかない。
数学の基礎問題を出しても答えは飛び抜けておかしいし、歴史の年代もぐちゃぐちゃ。英単語は読み方すら危うい。
(……これは、予想以上だ)
圭一人の力では、どうにもならないかもしれない。
だったら、選ぶべきは――
【選択肢1】:
クラスメイトの力を借りる→13-Aへ
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【選択肢2】:
見知った仲間(結菜や凛)と勉強する→13-Bへ
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